7,000近くある世界の言語の中には似ているものも!
世界にはおよそ7,000近くもの言語が存在すると言われています。これだけの多様性の中で、「まるで兄弟のようだ」と感じるほど非常に似ている言語のペアは確かに存在します。
特に類似性が高く、話者間で相互理解が可能なケースもある言語の組み合わせについて、その背景と共に見ていきましょう。
類似性が高い言語ペアの代表格
非常に似ている言語の代表例は、同じ語族に属し、特に地理的に近い地域で話されている言語たちです。これらの言語は共通の祖先から分化した、いわば姉妹のような関係にあります。
一方の言語しか知らなくてもかなり理解できる、スペイン語・ポルトガル語

まず、国際的にも広く知られているのがスペイン語とポルトガル語のペアです。これらの言語はともにインド・ヨーロッパ語族のロマンス語派に属し、古代ローマ帝国の公用語であったラテン語を共通の祖先に持ちます。
語彙の多くを共有しており、文法構造も非常によく似ています。特に、文章で書かれたものやゆっくり話された会話であれば、一方の言語しか学んでいない人でもかなりの部分を理解できるという高い相互理解性を持っています。
主な違いは発音にあり、ポルトガル語はスペイン語にはない鼻母音(鼻に響かせる母音)や、特有の「シ」「シュ」といった音を持ちます。この発音の違いが、二つの言語を聞き分ける際の大きな特徴となります。
元はひとつの国だったチェコ語・スロバキア語

次に、中央ヨーロッパにおける極めて類似性の高いペアとして、チェコ語とスロバキア語が挙げられます。これらも同じくインド・ヨーロッパ語族のスラブ語派に属し、西スラブ語群に分類されます。
歴史的・地理的関係が深く、かつてはチェコスロバキアという一つの国を形成していました。そのため、チェコ人とスロバキア人は95%程度相互に理解できるとの見方もあり、発音や語彙に多少の違いはあるものの、事実上の姉妹語として認識されています。
ゲルマン語派で近い系統のオランダ語・ドイツ語

また、西ヨーロッパではオランダ語とドイツ語も非常に近い関係にあります。これらはインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派に属し、系統的には近いグループです。文法的な仕組みや基本的な語彙に共通点が多く見られます。
ただし、スペイン語とポルトガル語ほど相互理解性が高いわけではありません。ドイツ語話者がオランダ語の文章を読んだり、その逆を試みたりすると、想像以上に多くの単語やフレーズが理解できるものの、流暢な会話の相互理解は限定的です。
言語が似る理由は?
言語が互いに類似するのには、主に3つの理由があります。
理由1:もともと同じ言語だったから
1つ目は、共通の祖先を持つという理由、すなわち語族・語派の存在です。前述したペアのほとんどがこれに該当します。もともと1つの言語だったものが、人々の移動や交流の断絶によって時間とともに分化していった結果、語彙や文法の基本構造に共通性が残るのです。
理由2:近い国同士で単語が行き交うから
2つ目は、地理的な近さによる借用語の共有です。国境を接している国々では、歴史的に人々の交流が盛んであり、一方の言語からもう一方の言語へと単語(借用語)や表現が流入します。この影響は、たとえ語族が異なっていても見られます。例えば、英語がフランス語から大量の語彙を取り入れたように、異なる言語間でも単語レベルでの類似性は生まれます。
理由3:戦争などにより影響を与えたから
3つ目は、歴史的な支配や影響です。過去の戦争や植民地支配などにより、ある言語が別の地域の言語に大きな影響を与えることがあります。この結果、支配地域の言語には、支配した側の言語由来の語彙や表現が多く取り込まれることになります。
これらの類似性は、1つの言語を学ぶことが他の似た言語の学習にも役立つという大きなメリットをもたらします。もしあなたが外国語学習を始めるなら、似ている言語をセットで学ぶのは効率的な戦略と言えるでしょう。
こちらの記事も合わせて読みたい
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。