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EXITのりんたろー。さんが絵本作家デビュー!絵を学ぶため絵画教室にも
人気お笑いコンビ・EXITのりんたろー。さんは、私生活では2歳の男の子のパパ。そんなパパとなったりんたろー。さんが絵本デビュー作で主人公に選んだのは、切れても生えてこない、短いしっぽを持つ、普通とは違うように見えるとかげくんです。
――『しっぽのみじかいとかげくん』執筆のきっかけを教えてください。
りんたろー。さん 子どもが生まれてから「絵本を描きませんか」というお話は結構いただいていたんですが、絵を描いたことがないし、ストーリーもどう考えればいいんだろうとお断りしていました。
でも、その後自分のなかで感じることが生まれてきて、それをうまい形で届けられないかなと考えるようになったんです。そのタイミングで、今回のお話をいただいて、やってみるかって。
――絵を描いたことがないとのことですが、すごく上手でびっくりしました。
りんたろー。さん 文章はネタも書いていますし、いろんなところで書いていましたが、絵は全く描けなくて。最初、いけるかな? と描いてみたら、とかげくんがひわいな形になってしまい、やべぇなって(笑)。だから本を出すにあたって絵画教室に2~3か月通いました。
――そうだったんですね! 絵本の絵はどうやって描いたのですか?
りんたろー。さん 基本はiPadのアプリで描いています。周りの太い線は、絵画教室で習った黒炭で描いたものをスキャンして取り込み、アプリで色をつけています。そういった画材のことも知らなかったので、「柔らかい感じにするにはどうしたらいいか」など相談しながら進めました。

生きづらさを感じている人も、寄り添うことで変わるのでは? 楽観的希望をメッセージに
――先ほど、自分のなかで感じることが生まれたとおっしゃっていましたが、絵本に込めたメッセージはどんなことですか?
りんたろー。さん この歳になり、親になったからか、世の中には生きづらさを感じている人が結構いることに気づき始めて。
途切れた心をもう1回繋ぎ止めたり、周囲の人の心の揺らぎを感じ取ったり、僕たちが当たり前にやってることをできない人もなかにはいて。でも、それは心の傷や、きっかけがあってのことなんじゃないかと。糸がぐるぐる絡まってしまうイメージですかね。
でも、それは誰かが寄り添うことでほどけていくんじゃないかという、楽観的希望みたいなのがあって。
言葉で発信するのは無責任かなという思いもあったんですが、絵本なら感じ取ってもらえる人にだけ届く気がして。無責任だと悩んでいるよりは、届けたい人に届ける方が優先なんじゃないかなと思って書きました。
――実際にとかげくんを描く際、イメージしたり、思い描いたりした人はいましたか?
りんたろー。さん 相方だったり、僕の妹もそうです。
あとは子どもの頃、学校でいつも先生に怒られていた子がいて。その子はだらしないというか、劣等生みたいなイメージだったんです。僕自身はわりとなんでもできてクラスの中心っぽい感じだったんで、なんで毎日そんなにプリントが出せないのか、なんで体操服が汚れているのか…なんでできないんだろうなってずっと思ってたんですね。
でも、今となってみると、その子も悩みを抱えてたり、家庭の事情があったんじゃないかなと考えるようになって。そんな人に誰かが寄り添うことで、ぐちゃぐちゃした感情がほどけていくんじゃないかなと思っているので、絵本を読んだ人が周りを見たり、気づいたりするきっかけになったらいいなって。
――そういった想いがあったんですね。相方とおっしゃいましたが、とかげくんがピンクなのは兼近さんに関係がありますか?
りんたろー。さん 兼近くんとは間接的に関係しています。僕らのメンバーカラーは相方はピンク、僕は緑で、僕の家にはこの2色のオフィシャルグッズがたくさんあるんですが、うちの子はなぜかピンクのかねちー人形の方を可愛がるんです。だから主人公は絶対ピンクにしようと決めていました。ちなみにくまくんは緑のスカーフをしています。
――そういうことだったんですね。では、どんな方たちに読んでもらいたいですか?
りんたろー。さん 絵を可愛らしくして、音もオノマトペを入れて心地よい語呂感にしたので、ちっちゃいお子さんから、保護者の方、生きづらさを感じている方、老若男女、誰がどう受け取ってもいいようにメッセージを込めました。たくさんの方に手に取ってもらって、読んだあとはちょっと周りを見回して、なにか感じ取ってもらえたらうれしいです。

子どもはママべったり期。もっとできることないかなと思っています
――普段の子育てについても教えてください。お子さんは2歳になったそうですがちょうどイヤイヤ期でしょうか?
りんたろー。さん イヤイヤ期というかママにべったり期に入ってきました。本当は僕がもっと抱っこしたりしてママの負担を減らしたいんですけど、「ママじゃなきゃ嫌っ!」ってなっちゃってるんです。それが心苦しいというか、ごめん…というか、もっとできることないかなと思っています。
――(取材陣一同)やさしいーーーー!!!
りんたろー。さん パパはみんなそう思ってますよ。ママから「なんで代わってくれないの?」ってめっちゃ言われますが、代わりたいけど代われないっていう……。どうにもならないジレンマを抱えています。
――強引に代わったら余計に泣いちゃいそうですよね。
りんたろー。さん そういう無力感をパパは抱えてると思います。
やっぱり家で過ごす時間が短いのも原因かなと思いますね。僕が休みで長い時間一緒にいられる日は、昼ぐらいからだんだん慣れてくるんです。あと、ママがいないシーンだとめっちゃ甘えてくるのでそれもうれしくて。今は保育園に送っていく道のりで幸せを感じています。時間的に行けるときはマジでうれしいです。
育児番組の情報はすぐ実践! 寝かしつけの仕方を知ったときは本当に救われた
――番組で育児の情報を学ぶ機会が多いと思いますが、その中で実践してることはありますか?
りんたろー。さん 育児番組はめっちゃ勉強になります、えぐいっすよ。だから、ほぼ実践してますね。例えば、靴選びは股関節がちゃんと動き始めてからこういうものにするとか、知らないじゃないですか。
寝かしつけでは、泣いたらしばらく抱っこして寝かせて、背中スイッチを押さないようにベッドに置いて…ってやっていましたが、これがそもそも間違いだとも知りました。抱っこして寝かしつけをしていると、そのうち抱っこしないと寝ない子になっちゃうらしくて。近くにいて、そばにいるよと思わせるだけでいいと聞いて実践したら、パタンと寝るようになりました。今までは、抱っこでしか寝ないトレーニングをしちゃってたんですね。
これまでめっちゃしんどくてきつかったんですけど、知ったことで本当に救われて。寝かしつけが超楽になって、助かりました。
――そういうことって、奥様に伝えて一緒にやるんですか?
りんたろー。さん この伝え方が大事なんですよね。番組は丸山桂里奈さんとやってるんですけど、ママからパパに伝える場合でもぶつかることがあるみたいですが、パパからママなんて超大変。一度、「こうらしいよ~」って伝えたら、「現場でやってるんだよ、こっちは!」って踊る大捜査線みたいになっちゃって(笑)。確かにそうですよね。だから今は番組を録画したものをさりげなく流すようにしています。
――知っていることは古い情報だったりするかもしれないから、最新の情報を学べるのはいいですね。
りんたろー。さん そうですね。必要な情報がたくさんあるので助かっています。
芸人仲間からのアドバイスはどれもユニーク! 子どもが夜寝ないときは”チャラ男マインド”、ママへの返事は”はい”か”イエス”のみ
――芸人仲間にも子育ての先輩が多いのかなと思います。そういう方たちと普段子育てトークってする機会はありますか?
りんたろー。さん 結構子育てトークは多いですね。先輩と後輩がパパ友、ママ友になってったっていう。芸人の現場で頼りないやつが、パパとしてこんなに頼れるやつなんだ、子育てやママへの対応でそういうアドバイスくれるんだって見直すこともあります。
――よくお話しされるのはどなたで、どんなアドバイスをもらいましたか?
りんたろー。さん ネルソンズの岸とかぺこぱの松陰寺さん、ハナコの岡部とかですね。みんなめっちゃいいパパな感じがします。
例えば夜遅くまで働いて、翌朝は『ラヴィット!』の収録があって5時間しか寝られない、みたいなときがあるんですよ。で、そういうときに限って、子どもが寝てくれなかったりするんですよね。先が見えなくて“これどうなっちゃうの?”ってモヤモヤしてたんすけど、相談したら「子どもには、親の焦りも伝わるんだよ」「もうこのまま朝寝ないで行っちゃってもなんとかなるっしょ!」みたいな“チャラ男マインド”でいたほうが寝てくれるんだよって教えてくれて。
――早く寝てほしいと思えば思うほど寝ないことはよくありますね。そういうときはチャラ男マインドが大事ですね(笑)。
りんたろー。さん はい、そのマインドで乗り切りましたね。
――ママへの対応のアドバイスとはどんなことでしょうか?
りんたろー。さん ママへの返事は“はい”と“イエス”しかない(笑)。
――(笑)。”ノー”はないんですね。
りんたろー。さん 僕らの辞書に”ノー”はないです。あるなら消せっていう風に言われて実践しています。朝起きた瞬間から「起きてきちゃってごめんね」って謝りからスタートして(笑)。
あとは、今まで仕事上の付き合いをすごく大事にしていたんで、毎日ワンオペで頑張ってるママの間でどっちを優先させるかめっちゃジレンマがあったんですけど、”ポイント制なんだよ”とも教わりました。
奥さんに仕事の付き合いに気持ちよく送り出してもらうために、日々ちょっとずつ家事や子育てでいろんなポイントを貯めて、ここぞというときにポイントを使う。送り出してもらえないということは、普段ポイントを貯めてないってことなんだよって。しっかり貯めて、どこで使うのか考えなさいっていうのを教えてもらいました。
――おもしろいアドバイス(笑)。日々ポイントを貯めているんですね。
りんたろー。さん そろそろ貯まったと思ったら「すみません、ちょっと番組の打ち上げがあるんですけど、顔出しても大丈夫ですかね」ってお伺いをたてる。「いいよ」って言ってもらえたら”ポイントたまってたーーーー!”って(笑)。
――いろんなアドバイスをもらってるんですね。
りんたろー。さん みんな、おもしろおかしく届けてくれます。
そもそも、とんでもない幸せをいただいてるわけですから。俺、子どもを産むとか、絶対、絶対無理っすもん。それを目の前で見てて思いましたね。命を産み落とすって本当にすごいことだから、まずはありがとうって思ってます。それを忘れて喧嘩しちゃったりもするんすけどね。
――感謝の気持ちが伝わります。楽しいお話をありがとうございました!

りんたろー。さんご自身の優しい想いやあったかさが心に響く一冊
ほっこり可愛らしいキャラクターと、思わす声に出して読みたくなる会話のリズムに子どもが夢中になりそうな1冊。そしてなにより今回のインタビューでも感じたりんたろー。さんご自身の優しい想いやあったかさが心に響き、読み聞かせながら大人もグッときます。気になった方はぜひチェックしてくださいね。
物語の主人公「とかげくん」のしっぽは、切れても生えてこず、短いまま。とかげのしっぽが短いのはおかしいと、みんなは遠巻きに笑いますが、「くまくん」はただひとり寄り添います。しかしくまくんは、みんなが怒っているより笑っている方がいいという、とかげくんの気持ちはよくわかりません。そして「ふつうってなに?」とばかり聞くとかげくんに、くまくんは次第に嫌気がさして…。ふたりはどのように心を通わせていくのでしょうか。
取材・文/長南真理恵 写真/田中麻以(小学館)