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「もっと言うことを聞いてくれれば、うまくいくのに」
子どもが浅はかだったり要領を得なかったりするとき、私は半ば反射的に、このように考えていました。誰もが一度は、そのようなストレスを感じたことがあるのではないでしょうか。
私には2人の子どもがいて、上の子には知的障がいがあります。上の子が小学生で下の子が保育園児だった頃、日曜日は私1人で子どもたちをみていました。
目次
ワンオペ日曜日に「言うことが聞けない」子どもたちとの間に起きたこと

日曜日の朝、子どもたちは当然のように遊びに連れて行ってほしいと口にします。
ところがワンオペで子どもたちのお世話をしながら、平日にはできない掃除などの家事をして、2人の子どもを連れて遊びに出るのは、なかなかハードです。ましてや、上の子の理解力は同年代の子どもに比べて十分ではありません。
遊びに出かけるために、家事をしながら宿題や学校・保育園の準備などをさせようとするのですが、子どもたちは言うことを聞いてくれません。その結果、休日にもストレスが溜まり、時に大声をあげてしまい、そのことに罪悪感を感じることもあり、1日が終わる頃にはクタクタになっていました。
当初は、子どもたちが親の忙しさや大変さをわかってくれないことに、腹を立てていました。しかし少し冷静になって考えてみると、子どもが親の事情をわからないのは、子どもの努力不足や優しさの欠落ではなく、単なる発達や経験不足の問題だと気づきました。
幼い子どもが相手の状況や気持ちを察するのは、現実的には無理な話です。ましてや、親の苦労は子どもにとって未知の領域です。とうてい理解することはできないでしょう。
そのことに気づいた後、3人で過ごす日曜日の朝には「日曜会議」を開くことにしました。
ワンオペ日曜日に、子どもたちと「会議」をして変わったこと
会議ではまず、子どもたちに、その日1日に「やらないといけないこと」と「やりたいこと」を言ってもらい、大きな紙に書き出していき、私の家事のことも書き足します。その紙を見ながら、3人でその日のスケジュールを相談するようにしました。家事も含めて3人のタスクを子どもたちと共有するためです。
すると、まずはそれぞれが「やらないといけないこと」を済ませた後、「やりたいこと」に取り組むという流れに誘導しやすくなりました。
子どもたちの「やりたいこと」は決まって「どこかに遊びに出かける」ことでした。家を出る目安となる時間を決め、それぞれが自分のことに取り組むのですが、子どもの用事の方が先に終わります。
すると子どもたちは、まだ終わらない風呂掃除などの家事を手伝ってくれるようになりました。こうして、日曜日は皆で家事を終わらせた後に、外に遊びに出かけるというルーティンが出来上がっていきました。

休日が来るたびに、皆がそれぞれの仕事に取り組み、その後公園でピクニックシートを広げてお昼ごはんを食べて、子どもたちとサッカーをしたりフライングディスクをしたりしました。
青空の下で子どもたちと体を動かすことは、普段の仕事で疲れていた私のリフレッシュになりましたし、かけがえのない思い出になりました。
怒りやストレスから、子どもの行動へ誤った意味付けをしてしまう

子どもが言うことを聞いてくれない状況だと、怒りやストレスによって、反射的に子どもの行動に誤った意味づけをしてしまいます。それは結果的に、子どもに対して誤った認識を持つことになり、その後の意思疎通がはかりにくくなったり、関係性が悪くなったりする原因になります。
子どもが言うことを聞いてくれないとき、反射的に意味づけしやすいのは以下の3つです。
- ①親の言うことを聞く子どもの方が良い。
- ②私のことを親として認めていないから、言うことを聞かない。(→親として認めていれば言うことを聞くはずだ)
- ③言うことを聞いてくれないのは、自己中心的な考え方をしているからで、わがままだ。
①「親の言うことを聞く子どもの方が良い」の落とし穴

親の言うことをそのまま受け入れることは、自分で考えて判断するのを避けることでもあります。親から怒られることもなく、考えなくてもよいので、短期的には安楽でいられます。一方で長期的には、自分で判断することが怖くなったり、自信が持てなくなったりすることにつながります。
社会において、自分よりも上のポジションの人が言うことを無条件に受け入れる人は、都合よく利用されたり搾取されたりする対象になりやすい傾向にあります。また、自分の身を守るために、周りと異なる判断が必要になることもあるでしょう。
大切なことは、親の言うことを聞く・聞かないということではなく、自分自身で考え、判断できることです。それを繰り返す中でしか得られない経験が、子どもの判断力を育てるのです。
②言うことを聞かないのは、親として認められていないから?

子どもが言うことを聞かないのは、単に「やりたくない」「やる必要性を感じない」と判断しているからに過ぎません。たとえ言うことを聞かなくても、子どもは親のことをかけがえのない存在だと思っているし、愛情を求めています。
「言うことを聞かない」ことを「認められていない」と受け取ってしまうと、やがては「認めさせるために、言うことを聞かせる」ための圧力のかけ方を考えるようになります。それは子どもを大声で威圧したり、言うことを聞かないときにペナルティを科したりすることです。親の愛情を求めている子どもからすると、それは相当にショックなことです。
「子どもに認められていない」と感じたときは、子どもに承認を求めている親自身の気持ちに目を向ける必要があります。
③わがままに見える態度の裏にある、子どもの気持ち

対人能力が未熟な子どもは、親の気持ちを読み取ることはできませんし、自分の言動が他者をどのような気持ちにさせるのかもわかりません。わからないから配慮できないのですが、それがわがままな態度に見えることがあります。
他者の気持ちを察したり、自分の言動を客観的に見られたりするようになるのは、だいぶん後の話です。一方で、子どもの成長を待つことなく、いますぐ親にできることもあります。それは、親の気持ちを言葉にして伝えたり、子どもの気持ちを尋ねてみたりすることです。
親の気持ちを言葉にして伝えることは、人の気持ちを知るための学びになりますし、子どもの気持ちを尋ねることは、自身の気持ちの気づきにつながります。そして、このようなやりとりを通して、子どもとのボタンのかけ違いを少なくできます。
うれしいときには「うれしい」と、悲しいときは「悲しい」と、まずは親の気持ちを素直に伝えてみるところから、親子の対話を始めることはいつでもできるのです。
子どもが言うことを聞かないときに大切なこと
子どもの態度を考える上で大切になることは、子どもの言動に対して、ひとつだけの視点ではなく、いくつかの視点を持っておく習慣をつけることです。
子どもの態度に腹を立てているとき、大抵は一つの視点しか持てていないことが多いです。いくつかの視点を持てていると、安易にネガティブな意味づけをしなくて済むので、親の気持ちは落ち着きやすく、子どものことを誤解してしまうリスクを減らすことにつながります。
子育てにおいては、そのような視点を持つことができる、心のゆとりが大切になるのです。
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記事執筆
医療の分野で20年以上のキャリアを持つ作業療法士。広汎性発達遅滞がある子どもを成人まで育てた2児の父。著書『障がいのある子どもを育てながらどう生きる? 親の生き方を考えるための具体的な52の提案』(WAVE出版) はAmazon売れ筋ランキング 【学習障害】で1位 (2025.6.6)。
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