目次
春先も脱水のリスクあり! 気づきにくいから厄介
脱水とは、からだから体液である「水」と塩分などの「電解質」が同時に失われた状態のこと。体液は体温調節のほか、必要な栄養素や酸素を送り届けたり、老廃物を排出したりする重要な役割を果たしています。その体液が不足するとさまざまな臓器に異常が起こりやすくなります。
春先は冬と違って日中に気温が高くなる日も多くなります。ですが、まだ汗を多くはかかないことから、水分摂取を怠ってしまいがちですが、からだは一年中、体温調整のために「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」と呼ばれる機能が働いており、目に見えない形で水分が奪われ続けています。そのため、冬、春先でも脱水のリスクはあるのです。
まだ肌寒いため、冷たい飲料を避ける傾向がありますし、あまり頻繁にトイレに行きたくない思いから、水分摂取を控えてしまうこともあります。その結果、水分摂取の頻度や一度に摂取する量が減ってしまう傾向があります。

子どもの春先の脱水リスク
特に子どもは大人に比べて、春先でも脱水のリスクが高いといえます。
子どものからだは、体重に対する水分の割合が高く、代謝も活発です。そして子どものからだの水分は大人よりもダイナミックに、かなりの部分が入れ替わるため、ちょっとしたことでも脱水状態になってしまいます。

また幼児や小学校低学年の子どもは喉の渇きを感じても発信できないので、自発的な水分摂取が減る傾向があります。
さらに、春先はまだ寒さが残るため暖房を使うことも多いですが、室内が乾燥しがちです。また厚着による発汗と皮膚や呼吸からの不感蒸泄も増えてきます。子どもは、大人に比べ、体重あたりの不感蒸泄が2~3倍にもなります。
子どもが脱水状態になるとどうなる?
子どもは体温調節機能が未熟で、発汗や発熱による水分喪失に対する適応力が弱いため、脱水による影響が大きく出やすいところがあります。
軽度の脱水でも、集中力の低下や倦怠感、頭痛、食欲不振などが表れ、学習や遊びのパフォーマンスに影響します。
また脱水症は、免疫能を低下させるので、感染症、例えば風邪や胃腸炎などにかかりやすくなります。重度になると、意識障害やけいれん、循環不全など命に関わる状態に進行することもあります。大人よりも症状の進行が速いため、早期の気づきと対応が重要です。
春先も注意! 子どもの注意したい脱水サイン
脱水が疑われる症状は数多くありますが、次のような症状が子どもに見られたら、脱水のサインであることがあります。
1.粘膜が乾く
脱水していると粘膜の粘液が減少します。口の中がネバついたり、寝起きで口の粘膜が乾いていたり、唇がカサカサしたり、喉がイガイガしたり、鼻の粘膜が乾いて鼻血が出たりします。
2.尿の色が濃い
尿が黄色や琥珀色に変化したり、排尿の回数が減ったりします。これは尿として排出される老廃物に対して水分量が少ないことが原因のことがあります。
3.集中力が低下する、気分が落ち込む
軽度の脱水により脳の働きが鈍くなることで、集中力の低下や気分の落ち込みが生じます。
その他、子ども特有のサインとして、次のものがあります。
・機嫌が悪くなる
・遊びに集中できない
・顔が赤くなる
・泣いても涙が出にくい
・こむら返りが起きる
・便秘になる
・食欲が低下する
・味覚が変化する
・どことなくからだの痛みを訴える
子どもは自分ではこれらのサインに気づきにくいので、大人が早期に気がついてあげることが大切です。

子どもにおすすめの栄養素とその理由
脱水を予防するために、子どもに特におすすめの栄養素は次の3つです。
1.ナトリウム
ナトリウムは子どもにとっても水分の体内保持に不可欠で、脱水時の電解質バランスを整える役割があります。
2.糖分(ブドウ糖)
ブドウ糖は脳のエネルギー源として重要で、集中力や元気の維持に役立ちます。
3.カリウム
カリウムは筋肉や神経の働きを助け、ナトリウムとのバランスで体液の調整にも関与します。
この3つの栄養素は水分と一緒に摂ることで吸収効率が高まります。
また「たんぱく質」も成長に欠かせない栄養素です。子どもが意識して摂るのは難しいので、保護者が食事に上手く取り込んでいく必要があります。
ただし、どれも摂りすぎは子どもには良くありません。大切なことは、おすすめの栄養素だけを摂るのではなく、子どもの場合は、さまざまな栄養素をまんべんなく、またバランスよく摂ることです。
脱水を防ぐ子どもにおすすめのメニュー
脱水を防ぐ栄養素を用いた食事メニューのうち、まだ肌寒い季節に子どもにおすすめなのは「具だくさんの味噌汁」や「魚介の鍋料理」です。
味噌汁にはナトリウムやカリウムが含まれ、野菜や豆腐を加えることで栄養バランスも整います。魚介類を使った鍋は、タウリンやミネラルが豊富で、汁ごと飲むことで水分と栄養を効率よく補給できます。
タウリンはイカ・タコ・貝類などの魚介類や栄養ドリンクから摂取できる栄養素で、筋肉疲労を回復する効果で知られますが、細胞内外の水分バランス(浸透圧)を調整する機能も持ちます。また、肝臓や心臓の機能をサポートすることで、血液循環をスムーズにするため、脱水時にからだの負担を軽減する可能性があります。
また、果物を使ったホットフルーツティーや、甘酒(ノンアルコール)もブドウ糖やクエン酸を含み、体を温めながら水分補給ができるので、利用してみましょう。
一年中、脱水のリスクはあります。いつも子どもの脱水に気をつけて、水分補給などをサポートしてあげてください。
お話を伺ったのは
麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理のエキスパート。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。2025年6月20日には新著『「現代バテ」即効回復マニュアル』を発売(評言社)。その他、『熱中症からいのちを守る』(評言社)、『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)など著書多数。2026年4月21日には同社から「いのちを守る飲水学」が発売予定。2023年から、医療従事者の生涯教育サイト『谷口ゼミ』を開塾。
こちらの記事もおすすめ
取材・文/石原亜香利
