癇癪には「待つ」「気持ちに名前をつける」が効果的。子どもの癇癪がラクになる対応を保育士が解説

スーパーのレジ前で泣き叫ぶ子、公園から帰れずに固まってしまう子……。子どもの癇癪に「またか」とため息をついても、どうしてあげたらいいかわからない。そんな経験、きっと一度はありますよね。癇癪に悩む親御さんへ、今日から使える声かけのコツを保育士資格を持つ筆者がお伝えします。

癇癪は「困った子」じゃなく「伝えられない子」のサイン

「なんでこんなに泣くの?」と途方に暮れてしまう子どもの癇癪。癇癪を起こしている子どもは、何かを強く感じているのに、それをうまく言葉にできない状態にあります。ただ、気持ちを外に出す方法が、泣く・叫ぶ・暴れるしかない、それだけのことです。

幼い子どもは感情をコントロールする場所である脳の前頭前野がまだ発達の途中です。癇癪が最も多く見られるのは1歳後半〜4歳ごろで、なかでも2〜3歳はピークの時期。5歳前後から少しずつ落ち着いてくるとはいわれますが、個人差も大きく、6歳ごろまで続く子もめずらしくありません。

この頃の子どもは気持ちのコントロールが難しく、嫌な気持ちが来たときにブレーキが間に合わない。つまり癇癪は、意地悪でも反抗でもなく、「助けて」のサインのひとつなのです。

声かけひとつで癇癪が変わる

保育現場では、声かけひとつで癇癪が少しずつおさまったり、繰り返すうちに頻度が減っていったりするのを何度も見てきました。

声かけには、気持ちに名前がついた安心感と、わかってもらえた信頼感の2 つの効果があり、この2つが子どもの感情の嵐を静める力になります。

癇癪中は「待つ」が正解

癇癪が始まったとき、「何とかしなければ」と言葉をかけ続けてしまう人も多いのですが、激しく泣き叫んでいる最中は、どんな言葉も子どもの耳に届きません。「なぜ泣いているの?」「落ち着きなさい」は癇癪中には逆効果です。

大事なのは、そばにいること。何も言わなくていいので、ただ「ここにいるよ」という存在を示すこと。背中に静かに手を当てる、隣に座るだけで十分です。

親御さんが待つことで、子ども自身が自分で気持ちを落ち着ける力を少しずつ育てていきます。その経験の積み重ねが、将来の感情コントロール能力の土台になります。

子どもが少し落ち着いてきたサインは、泣き声が変わること、こちらをちらりと見ること、ぐずぐず言いながらも言葉が出てくること。そのタイミングで初めて、「悲しかったね」と気持ちの言葉をかけます。

気持ちに名前をつけてあげる

感情の語彙が少ない子どもは、「なんかすごく嫌な感じ」を「泣く・叫ぶ・叩く」という行動でしか表現できません。大人が代わりに言葉をつけてあげることで、子どもは「ああ、これが悔しいということか」と自分を理解できるようになっていきます。これは将来、感情をコントロールする力の土台になります。

「悔しかったんだね」
「もっとやりたかったね。残念だったね」
「お友だちに取られて、嫌だったね」

まずこれだけでOK。

ポイントは疑問形にしないこと。「悔しかった?」と聞くと、子どもは「違う!」と反論したくなってしまいます。「〜だったね」と断定的に寄り添うことで、「そうだよ、わかってくれた」という気持ちが生まれやすくなります。

また、声をかける際は子どもの目線に合わせてしゃがむことを意識してください。上から声をかけられると圧迫感が増し、さらに激しくなることがあります。同じ高さで、柔らかい声で、シンプルな言葉を。それだけで、早く癇癪が収まるようになります。

落ち着いた後の「振り返り」が大切

癇癪の直後は禁物ですが、完全に落ち着いてから、短く振り返ることが子どもの成長につながります。お風呂の中や寝る前など、リラックスしているタイミングが最適です。責める口調ではなく、「一緒に考えよう」というスタンスで話しかけてください。

「さっきは悔しかったね。なんで悔しかったの?」
「次はどうしたらよかったと思う?」
「泣き止めたね、えらかったよ」


「なぜ怒ったの!」という強い口調はNGです。大切なのは最後に「落ち着けたこと」を必ずほめること。癇癪を起こしたことを責めるのではなく、泣き止めた自分、我慢できた瞬間を認めてあげてください。「さっき、自分で落ち着いたね」という一言が、自信の種になっていきます。

やってしまいがちなNG声かけ

保育現場でも親御さんからよく相談される「やりがちだけど逆効果」な声かけをまとめてみました。

× 「なんで泣いてるの?」(理由を問い詰める)
→ 泣いている最中は言語化できません。「わかってもらえない」という焦りで、さらに激しくなることも。

× 「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから」(比較・役割の強制)
→ 「年上だから我慢すべき」という論理は、子どもには理解できません。感情を抑圧するだけになります。

× 「もう知らない!」「置いていくよ!」(脅し・見捨て)
→ その場は動くかもしれませんが、子どもの不安を高め、親への信頼を損ねます。長期的には逆効果です。

× 泣き止むまでお菓子や動画で気をそらす
→ 一時的には有効でも、「泣けば何かもらえる」という学習につながることも。感情と向き合う機会を奪ってしまいます。

× 「落ち着きなさい!」(命令形)
→ 落ち着き方がわからないから癇癪になっています。「落ち着いて」という言葉は、子どもには指示として機能しません。

NGな声かけをしてしまったとき、親御さんが自分を責める必要はありません。大切なのは「あのときはそう言っちゃったね、ごめんね」と後で一言伝えること。子どもは、謝れる大人のことを信頼します。

子どもの安心感が癇癪を減らす

癇癪は「困った行動」ではなく、子どもが一生懸命気持ちを伝えようとしているサインです。声かけの基本は、まず感情を認めること、そしてあとから一緒に振り返ること。

小さな言葉の積み重ねは、必ず子どもの安心につながり、癇癪も減っていくでしょう。

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この記事を書いたのは

酒井千佳 フリーキャスター、気象予報士、保育士

京都大学 工学部建築学科卒業。
北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。
NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news it」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務める。
現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育に携わっている。

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