その使い方、依存?それとも成長途中?「子どものネット・ゲーム依存」の見極め、付き合い方を専門家に聞いた

スマートフォンやタブレットが当たり前の時代。子どもにとってインターネットやゲームは、遊びだけでなく学びのツールにもなっています。一方で、使いすぎが気になるという保護者の声も少なくありません。日本の調査では、中学生・高校生の1〜2割程度にインターネット依存の傾向が見られると報告されています(国立成育医療研究センター調査、久里浜医療センター調査*など)。思春期にかけて利用時間が増える中で、「好き」と「依存」の境界が分かりにくいと感じる保護者も多いのではないでしょうか。今回、ネット・ゲーム依存症専門の予防・回復支援サービスMIRA-i(ミライ)所長で、『専門家が親に教える 子どものネット・ゲーム依存問題解決ガイド』(Gakken)の著者、森山沙耶さんに、子どものインターネット・ゲームとの向き合い方について伺いました。

「好き」と「依存」はどう違う?見極めるための6つのサイン

―「楽しいからゲームをする」と「ゲームをやめるとつらいからやる」は、似ているようで違いますね。

森山さん:「好き」と「依存」の境界線は、「ゲームを楽しんでいる」のか、「ゲームをやめたくてもやめられない」のかです。ゲームが好きでそれに熱中していて、自信や成長につながっている場合もあります。タイピングの練習をしてローマ字が読めるようになったり、英語への苦手意識が減ったり。そうした形で本人にとってプラスになっているのであれば、必ずしも悪いことではありません。

―では、依存の可能性があるときには、どんなサインが見られるのでしょうか。

森山さん:依存の傾向を見るときの考え方として、よく知られている6つのサインがあります。すべてが当てはまる必要があるわけではありませんが、いくつかが重なり、生活への影響が大きくなっていないかを見ることが大切です。

(1)とらわれ
頭の中がゲームや動画のことでいっぱいになり、他のことをしているときも気になってしまう状態。

(2)気分修正
嫌な気持ちやストレスをやわらげるためにゲームや動画を見る状態。気分を立て直すための手段として使う。

(3)耐性
同じ満足感を得るために、必要な時間が少しずつ長くなっていく状態。

(4)離脱症状
やめるとイライラしたり、不機嫌になったり、落ち着かなくなったりする状態。

(5)葛藤
「食事をする、学校に行くなど、本当はやらなければいけないことがあるのにゲームが止められない」というように、頭ではわかっているのに行動が変えられない状態。

(6)再発
一度ゲーム時間を減らせても、新しいゲームが出たりストレスが増えたりすると、元の状態に戻ってしまう。

森山さん:これらのサインは、使い方のバランスが崩れてないかを見る視点として役立ちます。6つのサインを手がかりに、お子さんの日常生活のバランスに変化が出ていないか、ひとつの目安として振り返ってみてください。

「取り上げる」は逆効果

―ゲームばかりしている子どもが心配で、つい「もうやめなさい!」と親がゲーム機やタブレットを取り上げてしまうこともあります。

森山さん:気持ちはとてもよくわかります。ただ、ゲームを取り上げても、子どもが隠れて使うようになったり、制限を回避しようとしたりと、別の問題行動につながってしまう可能性が高いです。子どもにとってゲームが、楽しみだけでなく、安心できる時間や自信を感じられる場になっているとき、そうした心の支えが急になくなると、パニックになったり強い反発が出たりすることもあります。

また、親子の信頼関係が傷ついてしまうこともあります。カウンセリングに来られたお子さんが、「ゲーム機を親に隠された」「親が遠隔で急に時間を制限した」と話すこともあります。

―話し合いにも応じられないくらいになってしまった場合は、専門家に相談することも考えた方がいいのでしょうか。

森山さん:親子だけで解決しようとして苦しくなっているときが、専門家を頼るタイミングですね。日本では、専門家に相談するのは最後の手段というイメージを持たれる方も多いのですが、むしろ早めに私たちに相談していただきたい。依存の背景には、友達関係や園・学校でうまくいかないことがあり、ゲームの中では役割や自信を感じられるからやめられないというメンタルヘルスの問題が関係していることもあります。その場合、単純にゲーム使用のルールを厳しくするだけでは解決しません。専門家であれば、子どもの特性や背景にある要因を整理しながら、どんな関わり方がよいかを一緒に考えることができます。

―専門家が入ることで、子どもが話しやすくなることもありそうですね。

森山さん:カウンセリングでは、普段は親に言えない気持ちを話してくれることも多いです。実は、「ゲーム時間を減らした方がいいと思っているけれど、どうしたらいいかわからない」という葛藤や罪悪感を抱えているお子さんは少なくありません。表面上は反発しているように見えても、内心では悩んでいることもあるのです。親御さんも心配な気持ちが強くなると、どうしても視野が狭くなってしまうことがありませんか。第三者が入ることで状況を整理できたり、親子それぞれが少し落ち着いて向き合えるようになることもあります。大切なのは、「問題をなくすこと」だけを目標にするのではなく、子どもが安心できる居場所や、自分で調整していく力をどう育てていくかを一緒に考えていくことだと思います。

ルールは「親子で一緒に考える」

―依存とまではいかないけれど、ちょっとやりすぎかもしれない、と感じた段階で「少しルールを見直してみようか」と声をかけるのはどうでしょうか。

森山さん:その提案はとても良いと思います。親が一方的に決めるよりも、子ども自身が納得して決めたルールの方が守りやすいことが多いんですね。なぜそれをやりたいのか、どんな楽しさがあるのかを理解するところから始めてみてください。もちろん子どもに「1日6時間ゲームをやりたい」と言われたら、「OK!」とはならないですが、「なぜあなたはそう思うのか」を聞いてみてください。お互い納得できる落としどころが見つかることもあります。守れないルールを作ってしまうと、結局守れなくなり、ルールそのものが意味を持たなくなってしまいます。生活に支障が出ない範囲で現実的な約束を作ることが大切です。

―なぜゲームを6時間やりたいのかを子どもに聞いてみることも大事なんですね。

森山さん:そうですね。例えば、それまで1日30分しかできなかった反動で「もっとやりたい」と感じていることもありますし、新しいゲームが出て、今は少し集中して楽しみたいというタイミングなのかもしれません。背景にある子どもの気持ちを聞くことで、子ども自身も「そこまで長くなくてもいいかも」と落ち着いて考えられることがあります。

―子どもの成長の中でICTやインターネットを使わないのは、現実として難しいですよね

森山さん:そうですね。今は学校でもプログラミングやタブレット学習が取り入れられていて、子どもたちのほうが使い方に詳しいことも多いです。勉強のツールとして使うこともあれば、楽しみとしてゲームをすることもある。完全になくすというのは難しい時代だと思います。だからこそ、「使わせない」と考えるのではなく、どう付き合っていくかを考えることが大切なのです。子どもが上手にゲームやインターネットを活用できている場面を見つけたら「こんな使い方もできるんだね」と声をかけ、使いすぎが心配な場合は家庭の中で環境を整えたり、無理のないルールを作ったりして、バランスを取っていくことが必要だと思います。

総務省がまとめているインターネットの使いすぎによって起こり得るトラブルの事例などを、親子で一緒に読んでみるのもよいと思います。外の情報をきっかけに話すことで、頭ごなしに注意するよりも、子ども自身が考えるきっかけになることがあります。

―森山さんも小学生のお子さんと約束事をされているそうですね。

森山さん:「8時になったら終わりにしようね」といったシンプルなルールを決めています。時間になると知らせてくれる機能も使っているので、それを子どもが見て、「あと5分だから、ゲームを1回やって終わりにしよう」と自分で調整しています。もちろん、できないときもありますが、できたときは「自分でやめられたね」「約束を守れたね」と私も声をかけています。そうした経験の積み重ねが、自分でゲーム時間をコントロールする力につながっていくのではないでしょうか。

「親自身」のスマホとの向き合い方も見直すきっかけに

―親自身のデジタルアイテムの使い方を見直すことも大切でしょうか。

森山さん:とても大切だと思います。子どもは親の使い方もよく見ていますし、家庭の中での関わり方が土台になっていきます。食事中はスマホを見ない、寝る前の10分は一緒に絵本を読むなど、小さな時間でも「向き合う時間」を作ることができます。ずっとスマホを使わない生活は現実的ではありませんが、短い時間でも子どもとの関わりを大切にすることで、安心感につながります。

―最後に、メッセージをお願いします。

森山さん:幼い頃から、使いすぎるとどうなる可能性があるのかを少しずつ伝えながら、自分で調整する経験を重ねていくことが大切です。小さいうちは一緒に考え、成長とともに少しずつ自分でコントロールできるようになるのが理想ですね。そうした積み重ねが、将来、自分で使い方を調整する力につながっていくと思います。

*出典:

・国立成育医療研究センター
 思春期の約17〜20%にインターネット依存傾向
https://www.ncchd.go.jp/press/2024/0729.html
・独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター
 中学生12.4%、高校生16.0%に依存傾向
https://www.crs.or.jp/backno/No787/7871.htm

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お話を聞いたのは

森山沙耶さん MIRA-i(ミライ)所長、公認心理師、臨床心理士、社会福祉士

2012年東京学芸大学大学院教育学研究科を修了後、家庭裁判所調査官として勤務。少年事件・家事事件の調査を行う中で、非行少年の更生や離婚調停など家庭紛争の調整に関わる。その後、大学病院や福祉施設にて心理臨床を経験。2019年8月、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにてインターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)を修了後、MIRA-iの設立に携わる。現在はネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングだけでなく講演活動も行う。二児の母としても奮闘中。

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近年、学習用iPadの利用が拡大。学校だけでなく家庭で利用する機会が増え、「勉強のために使っているはずが、動画やゲームの時間が増えてしまう」「家庭でどのようにルールを決めればよいか分からない」という声も。「SCHOOL FIT」は、学習に必要な機能を備えたiPadケースに加え、『インターネット安心ルール作りガイドブック』を付属している点が特長。ネット・ゲーム依存予防の現場で支援を行ってきた MIRA-iの公認心理師・森山沙耶が制作・監修を担当。管理や一方的な制限ではなく、親子で話し合い、納得して使い方を決めることを大切にした内容となっています。

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取材・文/黒澤真紀

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