【医師監修】睡眠不足が子どもの五月病や登園渋りにつながる? ぐっすり眠れる夕食とおやつをご紹介!

この春、子どもが新しい環境に入った後、五月病や登園渋りの兆候が出てきて不安になっていませんか? メンタル面の対処を行うことが多いですが、実は「睡眠不足」や「腸内環境」が関係していることもあるようです。
そこで今回は、薬を使わない栄養療法を得意とする梶の木内科医院 院長の梶尚志先生にお話を伺いました。

睡眠不足が五月病や登園渋りを助長させる理由

睡眠不足は、次の3つの理由から子どもの五月病や登園渋りを助長させます。

1.自律神経の乱れ

睡眠が足りないと、体を休める副交感神経がうまく働かず、緊張モードの交感神経が優位になりやすくなります。すると、朝からだるい、頭痛や腹痛が出る、気持ちが落ち着かない、といった不調が起こりやすくなります。

2.セロトニン不足

セロトニンは、気分の安定、意欲、朝の目覚め、心の落ち着きに関わる神経伝達物質です。睡眠不足や生活リズムの乱れが続くと、朝の光を浴びる機会が減り、体内時計も乱れやすくなります。その結果、セロトニン系の働きが低下し、やる気が出ない、不安が強い、イライラしやすい、といった「五月病っぽい状態」が起こりやすくなります。

3.脳のストレス耐性低下

睡眠不足になると、感情のブレーキ役である前頭前野の働きが落ち、逆に不安や恐怖に反応する扁桃体が過敏になりやすくなります。普段なら乗り越えられる、園での刺激や対人ストレスがより強く感じられ、朝になると「怖い」「行きたくない」となってしまうのです。

睡眠不足ケアは腸から対策するのもおすすめ

子どもの睡眠不足は、生活リズムを正す工夫が重要ですが、並行して食事の工夫によって、「腸」から対策することもおすすめです。

なぜなら、睡眠と腸内環境は、かなり密接に影響し合っているからです。「睡眠が乱れると腸が乱れ、腸が乱れるとまた睡眠が悪くなる」という、いわゆる「腸脳相関」の関係があります。

“幸せホルモン”と呼ばれる「セロトニン」は、気分の安定だけでなく、朝の目覚め、日中の意欲、夜の睡眠ホルモン(メラトニン)への流れにも関わる重要な神経伝達物質です。体内のセロトニンの多くは腸に存在し、腸内細菌はトリプトファン代謝や腸内でのセロトニン産生環境に影響します。

つまり、腸内環境が悪化すると、セロトニン系の働きが乱れやすくなり、結果として寝つきが悪い、眠りが浅い、朝すっきり起きられないといった問題につながりやすくなります。

また夜更かし、朝寝坊、休日の寝だめ、食事時間のズレなどが続くと、脳の時計と腸の時計がずれてしまい、腸内細菌叢のバランスも崩れやすくなります。この「ズレ」が起こると、消化吸収、腸の動き、血糖コントロール、ホルモン分泌が不安定になり、眠りの質もさらに低下しやすくなります。

腸からの対策のポイント

腸から睡眠不足を対策するポイントをご紹介します。

1.腸内善玉菌のエサを増やす

腸内善玉菌のエサを増やしましょう。発酵食品だけでなく食物繊維をしっかり入れることがポイントです。腸内善玉菌は、野菜、きのこ、海藻、豆類、オートミール、雑穀などに含まれる食物繊維をエサにして、短鎖脂肪酸を作ります。短鎖脂肪酸は腸のバリア機能や炎症コントロールに関わり、腸脳相関を通じて睡眠の質にも関与すると考えられています。

一方、発酵食品は「善玉菌を足す」役割、食物繊維は「その菌を育てる」役割です。どちらか片方ではなく、組み合わせるのが効果的です。

2.セロトニン・メラトニンの材料を取り入れる

トリプトファン、マグネシウム、ビタミンB群などの睡眠関連ホルモンや神経伝達物質の材料を取り入れましょう。トリプトファンはセロトニンの材料になり、その流れでメラトニンにもつながります。マグネシウムは神経の興奮を鎮める方向に働き、ビタミンB群は代謝の補助役です。これらは、卵、魚、大豆製品、ナッツ、種実類、豆類、全粒穀物、葉物野菜などから摂りやすいとされています。

特に子どもでは、朝と昼にたんぱく質をしっかり入れることが重要です。夜だけ頑張っても、日中の神経伝達物質の土台が弱いままだと、夕方以降の気持ちの不安定さや寝つきの悪さにつながりやすくなります。朝は、卵、納豆、豆腐、魚などを少量でも入れて、パンや麺だけで済ませないことが大切です。

3.夕食は「何を食べるか」より「いつ・どのくらい」を重視する

遅い時間の夕食や、寝る直前の食事は、腸が夜間も働き続けることになり、睡眠の質を下げやすくなります。食事のタイミングが睡眠と体内時計、さらに腸内細菌叢に影響するといわれています。夜は高糖質・高脂肪・大盛り・甘いものを避け、軽めで消化しやすい食事を心がけましょう。

4.甘い物とカフェインは「腸と睡眠」の両方を乱しやすい

夕方以降の甘いおやつ・甘い飲み物・カフェインを避けましょう。甘いものは血糖の波を大きくしやすく、腸内環境にも不利になりやすく、カフェインは睡眠を直接、邪魔します。紅茶、緑茶、エナジードリンク、チョコレートの摂り方にも注意が必要です。夜に「ごほうび」で甘い物を足すより、昼に回すほうが睡眠には有利です。

子どもがぐっすり眠るためにおすすめの夕食とおやつ

子どもがぐっすり眠るための夕食は、「消化に負担をかけない」「血糖値を乱しにくい」「セロトニンやメラトニンの材料になる栄養素を含む」この3つがポイントです。また、おやつは寝る直前に重くならないことが大切です。

ぐっすり眠るのにおすすめの夕食3選

1.鮭の塩焼き+ごはん少量+豆腐とわかめの味噌汁

鮭にはたんぱく質と、気分や睡眠リズムを整える材料になる栄養素が含まれます。豆腐や味噌汁は胃腸にやさしく、夜でも比較的消化しやすい組み合わせです。ごはんを少量添えることで、空腹感を防ぎつつ、寝る前の血糖の乱れも起こしにくくなります。

2.鶏むね肉と野菜のスープ煮+やわらかい雑炊

温かいスープは体を内側から温め、リラックスしやすくなります。鶏むね肉は脂っこすぎず、たんぱく質をしっかり補えます。野菜をやわらかく煮ることで胃腸への負担が軽くなり、雑炊にすると夜遅めでも食べやすい夕食になります。

3.さば缶と野菜の味噌煮+小鉢の納豆+ごはん少量

さばには良質な脂質が含まれ、納豆は発酵食品として腸内環境を整える助けになります。腸の状態が安定すると、睡眠の質にも良い影響が出やすくなります。味噌や納豆のような和の発酵食品は、夜の食事にも取り入れやすいです。

ぐっすり眠るのにおすすめのおやつ3選

1.バナナ

バナナは手軽で、エネルギー補給が穏やかです。食べすぎなければ胃が重くなりにくく、夜に少し小腹が空いたときにも向いています。甘いお菓子より血糖の波が大きくなりにくいのも利点です。

2.無糖豆乳ヨーグルト(少量)

無糖の豆乳ヨーグルトは、夜のおやつとして使いやすい食材です。たんぱく質が補え、腸内環境のサポートにもつながります。冷たすぎるとお腹が冷える子もいるので、その場合は少量にするか常温に少し置いてから食べてみてください。

3.素焼きナッツ(少量)

ナッツにはマグネシウムなど、神経の興奮を落ち着かせる方向に働く栄養素が含まれます。ただし、食べすぎると脂質が多くなり、胃に残りやすいのでひとつかみより少ない量が目安です。甘いスナックの代わりに向いています。

夜遅い時間の揚げ物、カップ麺、チョコやアイス、ジュースやカフェイン入り飲料は、睡眠を浅くしたり、腸に負担をかけたりしやすいので注意しましょう。

五月病や登園渋りなどに悩んでいるなら、睡眠不足を疑い、まずは生活リズムを正してみるのがおすすめです。その際、食事にも気を使うことで、良い睡眠をサポートしてくれるはずです。

お話を伺ったのは

梶 尚志先生 総合内科専門医、家庭医、日本抗加齢医学会専門医、医学博士

岐阜県可児市にて「梶の木内科医院」院長を務め、一般内科・腎臓内科をベースに、分子整合栄養医学(オーソモレキュラー療法)を用いた診療を行っている。薬だけに頼らず、食事と栄養から体調を立て直すアプローチを得意とし、2025年7月名古屋駅前に薬を使わない栄養療法クリニック「七夕医院名古屋院」を開院

こちらの記事もおすすめ

「もしかして五月病?」と思ったら。【漢方の五行】不調別レシピを、親子で取り入れてみたい!〈薬剤師に聞いた〉
見過ごしがちな「五月病」(ごがつびょう) 「五月病」(ごがつびょう)は医学用語ではありません。4月に進学や進級、生活の変化など大きな...

取材・文/石原亜香利

編集部おすすめ

関連記事