「最近なんだか反抗的…」9歳前後の《ギャングエイジ》は“脳の急成長サイン”だった! 脳科学者・西剛志さんが教える、親子で前向きに乗り越えるヒント

「急に口ごたえが増えた」「親より友だちの意見ばかり優先する」――9歳前後のわが子にそんな“困った変化”を感じているなら、それは子どもの脳が急成長しているサインかもしれません。こうした変化が見られる時期は「ギャングエイジ」とも呼ばれ、発達の節目にあたります。今回は、10歳息子のギャングエイジに直面するHugKumライターが、脳科学者で一児の父でもある西剛志(にし・たけゆき)さんに、その背景にある脳の変化と、親子がラクになる向き合い方を伺いました。

ギャングエイジは“脳がぐんと伸びる”成長サイン

――ギャングエイジは、9歳前後に心や行動が揺れやすくなる時期ですよね。脳科学的にどんな時期なのでしょうか。

西さん 9歳前後というのは、親御さんから見ると「急に扱いづらくなった」と感じやすい時期かと思います。実はその背景には、脳の発達における大きな節目が関係しています。 

――その節目とは、どのようなものでしょうか。

西さん 最新の研究では、人間の脳は一生のうちに4回、大きな変化の波を迎えることが分かっています。その節目が、9歳・32歳・66歳・83歳

このうち9歳は、人生最初の大きな転換点にあたります。

生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、神経細胞の数もネットワークの密度も一生のうちで最も高い状態にあります。そこから9歳ごろまでは「神経の刈り込み」と呼ばれる整理が進み、必要な回路だけが残されていきます。

つまり 9 歳というのは、脳の土台が一度整理され、ここから再び大きく組み替わっていくスタート地点でもあるのです。

さらに9歳から32歳ごろまでは「脳の思春期」とも呼ばれ、判断力や感情のコントロールを担う前頭前野(ぜんとうぜんや)は、20代後半まで発達が続くことが分かっています。つまり、「成人」と呼ばれる年齢になっても、脳はまだ発達の途中段階にあるということです。

そう考えると、9歳はまさに“まだまだ発達の途中”。揺れたり迷ったりするのは、むしろ自然な成長プロセスと言えます。

そしてこの時期の変化は、行動や気持ちの揺れとして表れやすく、それがいわゆる「ギャングエイジ」と呼ばれる状態につながっていきます。だからこそ、親御さんが戸惑うのも自然なことなんです。

――脳の急成長に伴って、心や行動面ではどんな変化が出てくるのでしょうか。

西さん 親御さんが戸惑いやすい変化としては、主に3つあります。

まず1つ目は「口ごたえや反論が増える」ことです。これまでは親の考え方がそのまま“基準”になっていた子どもでも、脳の前頭前野の働きが高まり、「思考の分散」と呼ばれる現象が起き始めます。 

前頭前野は“理性の部分”とも言われ、物事を判断したり自分の考えをまとめたりするときに使われる場所です。 

この働きが強まることで、親の意見だけでなく、友だちや周囲の考え方にも自然とアンテナが向くようになります。「友だちはこう言っていた」「ほかの家は違うらしい」と、複数の情報を照らし合わせながら自分で判断しようとする力が育っていくんですね。

その結果、「それって本当にそう?」「自分はこう思う」といった発言が増え、親には口ごたえのように映ることがあります。

2つ目が「言葉づかいが荒くなる」ことです。

前頭前野の働きが高まると言いましたが、9〜10歳ごろは、感情をつかさどる「扁桃体(へんとうたい)」もより活発になります。その感情にブレーキをかけるのが「前頭前野」なのですが、未成熟のため、気持ちが言葉より先に出てしまい、強い言い方になったり、つい荒い表現が出たりしやすくなります。 

そして3つ目は、「仲間意識の高まり」です。この時期は、友だちとの関係を強く意識するようになり、「あの子は自分のことをどう思っているんだろう」「仲間外れになっていないかな」といったことを気にするようになります。

そのため、持ち物や言葉づかい、行動まで周囲に合わせようとする姿も増えていきます。 

さらにこの時期は、性ホルモンの影響で情緒が揺れやすくなります。今までは何も考えず学校に通っていた子が、「なんで学校に行かなきゃいけないんだろう?」と、自分なりに理由を考え始めることもあります。その結果、学校に行きづらくなる子が出てくるのも、この時期の特徴です。 

――口ごたえも、言葉がきつくなることも、友だち優先の考え方も、親としては戸惑いますが、脳の発達としては自然なことなんですね。

西さん そうなんです。 こうした揺れは、全て“脳が成長している証拠”。自分の考えが芽生え、感情が大きく動き、仲間を意識し始める。まさに、大人へ向かうための健全な発達プロセスなんです。

暴発する子どもには、言い聞かせは届かない。まず「脳の火事」を消すことが大切

――ギャングエイジは発達の過程だと理解できましたが、実際に子どもが泣き叫んだり、物を投げたり、暴言が出たりすると、親としてどう関わればいいのか迷ってしまいます。

西さん 子どもが突然感情を爆発させると、親としてどう受け止めればいいのか迷ってしまいますよね。でも、まず知っておいてほしいのは、その裏には“強いストレス”があるということなんです。

ストレスが高まると、感情をつかさどる「扁桃体」が暴走し、脳内がまさに“大火事”のような状態になります。すると、理性をつかさどる「前頭前野」の機能がオフになり、親の言葉がそもそも届かなくなるんです。だから、どれだけ言葉で伝えようとしても響かず、手がつけられないように見えるのですね。 

その状態で「どうしてそんなことしたの!」などと強く問い詰めてしまうと、火に油を注ぐように扁桃体が反応し、ますます言葉が入りません。

だからこそ、まずは「大丈夫?」「どうしたの?」と寄り添うひと言を届けることが、第一のアプローチ。 その安心感が扁桃体を静め、前頭前野が再び働き始めるきっかけになります。

――言葉がまったく届かないほど感情が高ぶったときに、言葉以外で落ち着かせる方法があれば教えてください。

西さん 言葉が届かないときは、前頭前野以外の感覚に働きかけることが有効です。そこで役立つのが、「体感覚」へのアプローチです。

「大丈夫?」と声をかけながら、肩や背中にそっと手を添えるだけでも、触れられた安心がダイレクトに脳に届き、緊張がふっと緩みます。

言葉が入りにくいときほど、こうした“触れられる安心”が子どもを落ち着かせる大きな助けになります。ハグのように大げさでなくて大丈夫。そっと触れるだけで十分です。

――気持ちが落ち着いたあとは、どんな声かけが子どもに有効でしょうか。

西さん お子さんの気持ちが落ち着いたら、少し環境を変えて振り返る時間をつくるといいですね。「さっきはどんな気持ちだった?」「どう言えばよかったと思う?」といった問いかけで、気持ちは否定せず、行動には線を引く。この“落ち着いたあとに振り返る”という順番が、子どもが自分の気持ちや行動を整理しやすくなる手助けになります

暴言や強い言い方を「成長途中だから」と放置しないことも大切です。

というのも、脳には“ミラーニューロン”という仕組みがあり、攻撃的な言葉や行動に触れると、その刺激が自分の脳内にも再現されてしまいます。いわゆる“もらい泣き”と同じ仕組みです。

つまり、暴言を繰り返すほど、子ども自身もストレスを抱えやすくなるということ。だからこそ、気持ちが落ち着いたあとに「ほかの言い方もできたね」「次はどう伝えようか」と、言葉や行動をいっしょに整えていくことが、子どもの脳にもやさしい関わり方なんです。

褒めるだけでは育ちにくい「セルフコントロール力」。ギャングエイジは育て方を見直すとき 

――親の関わり方によって、ギャングエイジ期の揺れ方は変わるものなのでしょうか。 

西さん 実は、変わるんです。研究では、親の関わり方は大きく4つのタイプに分けられ、それぞれで子どもの考え方や行動の出方に違いが見られることが分かっています。 

①厳格型:叱ることが中心の厳しいタイプ
②迎合型:
褒めて受け入れるが、注意すべき場面でも叱らないタイプ
③支援型:
褒める・叱るを適切に使い分けるタイプ
④放任型:
子どもに無関心で、ほとんど関わらないタイプ

このなかでも、ギャングエイジ期の揺れを強めやすいのが、②の「迎合型」と④の「放任型」です。

ギャングエイジ期は、感情や人間関係が大きく揺れる時期です。だからこそ、気持ちを立て直す「前向きさ」と、自分で感情や行動を調整する「セルフコントロール力」がとても大切になります。

ただ、迎合型と放任型は、この2つの力が育ちにくい関わり方なんです。

迎合型は、要求を受け入れすぎることで、我慢したり感情をコントロールしたりする力が育ちにくくなります。その結果、思ったことをすぐ口にするなど、揺れが強く出やすくなるんです。 

一方、放任型は、親との関わりが少ないため安心感を得にくく、「前を向く力」が育ちにくくなります。特に男の子は影響を受けやすく、反発心やすねる行動が強くなることも分かっています。 

また、迎合型には男女差もあり、男の子は「うまくいかない経験」への耐性が育ちにくく、落ち込みやすい傾向があります。

―― では、前向きさやセルフコントロール力が育つ関わり方とは?

西さん 答えは、③の「支援型」です。

支援型の親は、子どもがテストで100点を取ったときに「頭がいいね」と結果だけを評価するのではなく、「頑張ったね」と努力や過程に目を向けます。そうやって努力したことを認めてもらえるから、子どもは“また頑張ろう”と思えるんです。

そして必要な場面では、きちんと線を引いて伝える。この「褒める」と「叱る」のバランスこそが、子どもの前向きさやセルフコントロール力を育てていきます。

親子関係を見直すと子どもが変わる。カギは「リフレクティブリスニング」 

―― 反発が増えて、気づけば親子の会話がギクシャクしてしまうことがあります。

西さん ギャングエイジ期は、反発が増えたり会話がかみ合わなくなったりと、親子の距離が少し遠のいたように感じることがあるかもしれません。でも、そんなときこそ親子関係を見直すことで、子どもの反応が驚くほど変わるタイミングなんです。

そのカギになるのが「リフレクティブリスニング」です。 

リフレクティブ=反射、リスニング=聞く。つまり、子どもの言葉を「そのまま返す」、いわゆるオウム返しの聞き方のことです。

例えば、子どもが「今日、公園に行って楽しかった」と言ったら、「公園に行って楽しかったんだね」と返す。これだけで、子どもの“脳のごほうび回路”が活性化し、「分かってもらえた!」という安心感が生まれます

認めるという言葉を直接使わなくても、子どもは「この人は自分を理解してくれる」と感じられるんです。

以前、講演会で「子どもが話を聞いてくれない」と悩んでいたお母さんがいました。お話を伺ううちに、そのお母さん自身がとても早口で、人の話をさえぎってしまう癖があることに気づいたんです。

そこで私は、「だまされたと思って、1日1分だけでいいので、子どもの言葉をそのまま返してみてください」 とお伝えしました。

すると1年後、「親子関係が驚くほど変わりました」と報告をいただきました。

小さな積み重ねですが、こうした“聞き方の変化”が、親子の信頼関係を良好にする大きな力になります。

―― ギャングエイジをネガティブにとらえがちでしたが、実は親子関係を見直すチャンスでもあるんですね。

西さん はい、まさにその通りだと思います。

子どもの反発の裏には、実は「分かってほしい」というサインが隠れています。だからこそ、この時期に聞き方を変えるだけで、親子の距離は大きく縮まります。

ギャングエイジは、親子の信頼関係を深め直す絶好のタイミングだと私は思っています。 

変えるべきは子どもじゃない。“親の心のゆとり”が毎日を変えていく 

―― ギャングエイジをラクに乗り切るために、親自身が工夫できることはありますか。

西さん 「今は成長の途中なんだな」と少し引いてみられるだけで、気持ちはぐっとラクになるはずです。 そのためにもまず大切なのは、親御さん自身が冷静でいられる環境をつくることなんですね。

子どもが揺れ動く時期だからこそ、親が落ち着ける余白を確保しておくことが、結果的に子どもへの関わり方にも余裕を生みます。 

―― 親が冷静でいられる環境とは、どんなものなんでしょうか。

西さん 私は、家の中に“ゆとりを取り戻す仕掛け”をいくつか置いています。例えば、子どもが小さかった頃の写真を飾る。イラッとした瞬間でも、プラスの刺激がマイナスの感情を打ち消す“打ち消し効果”で、気持ちがふっと和らぎます。

怒りやすい場所には、かわいい雑貨を置くのも効果的です。かわいいものを見るとドーパミンが出て、ストレスが下がりやすくなるんです。

観葉植物も効果的で、緑を見るだけで前頭前野の働きが整い、思考が柔軟になります。

音楽や香りも脳に作用します。楽しい音楽はネガティブな気分を相殺し、コーヒーの香りには人をやさしくする効果があることが研究でも分かっています。

夕方は前頭前野の働きが落ちて、セルフコントロール力が弱くなる時間帯。だからこそ、音楽・香り・緑・かわいいものなど、環境を工夫して「親の心の余裕」をつくることが、ギャングエイジをラクに乗り切る大きな助けになります。

――ギャングエイジのまっただ中で悩んでいる親御さんへ、メッセージをお願いします。 

西さん 今は共働きのご家庭も多く、毎日時間に追われながら子育てをしている親御さんがたくさんいます。余裕がなくて、ついイライラしてしまうのは、とても自然なことです。私自身にも小学4年生の息子がいるので、その大変さはよく分かります。

でも、子どもが揺れ動いているのは、それだけ脳が大きく成長している証でもあります。だからこそ、“困った時期”ではなく、親子でセルフコントロール力を育てていくチャンスとして見てもらえたらと思います

いつか「あの頃、大変だったよね」と笑って話せる日が必ず来ます。その日まで、どうかご自身のことも大切にしながら、無理のないペースで向き合ってください。

こちらの記事もおすすめ

小学校中学年頃から始まる《ギャングエイジ》とは? 本格的な反抗期前の「親の準備期間」として子どもと向き合うための心構え
ギャングエイジとは、小学校中学年に起きる“心の揺れ” ――ギャングエイジとは、どのような発達段階なのでしょうか? 鈴木先生:小...
【10歳の壁】親を下に見ている? 甘えたいけど指図されたくない! 読者の悩みに発達心理学の専門家・渡辺弥生先生が徹底回答!
考える力がつき対人関係にも変化が。困り事が出てくることは発達の兆し ――まずは10歳前後(小学校中学年)の子どもについて、心理学では...

お話を聞いたのは

西 剛志 脳科学者(工学博士)、分子生物学者

1975年生まれ。東工大大学院で博士号取得後、特許庁を経て2008年に独立し、「うまくいく人とそうでない人の違い」を研究。30代で難病を宣告されるが、脳の研究を通じてストレスを手放し、半年で完治した経験から研究を本格化。これまで4万人以上に講演を行い、企業向けから子育て関連まで幅広いテーマで登壇。テレビ出演も多数。一児の父として親の気持ちを深く理解し、寄り添いながら、子どもの行動や感情の変化を脳科学の知見でわかりやすく伝えている。
著書に、20万部のベストセラー『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)、『脳科学者が教える「やりたいこと」の見つけ方』(PHP研究所)、『脳科学的に正しい! 子どもの非認知能力を育てる17の習慣』(あさ出版)などがあり、累計45万部を突破している。


この記事を書いたのは

あゆーや ライター

息子とのおでかけや体験を言葉にして届けることを大切にしながら、教育や暮らし、食など身近なテーマも執筆しています。編集プロダクションで育児・美容・健康など多様なジャンルに携わり、育てた取材の目。現在はフリーライターとして活動し、“自分がすっと理解できる言葉”を選ぶことをモットーに、読者に寄り添う文章を心がけています。親子の体験記事を『マイナビ子育て』で連載、自サイト『アソンデミエータ』でも発信中。

編集部おすすめ

関連記事