【10歳の壁】親を下に見ている? 甘えたいけど指図されたくない! 読者の悩みに発達心理学の専門家・渡辺弥生先生が徹底回答!

10歳前後で生じる、学習面・環境面・そして心身の発達によって問題に直面すると言われる「10歳の壁」。これまで見られなかった子どもの様子に、悩みを抱える保護者の方も多いようです。そこで今回は「心身の発達」に関する悩みにフォーカス。発達心理学が専門で、『子どもの「10歳の壁」とは何か?』の著者でもある渡辺弥生先生(法政大学文学部心理学科教授)に、読者からのリアルな悩みに丁寧にお答えいただきました。

考える力がつき対人関係にも変化が。困り事が出てくることは発達の兆し

――まずは10歳前後(小学校中学年)の子どもについて、心理学ではどのような年齢と捉えられているのでしょうか? 精神的にはどのような成長が見られますか?

渡辺先生 まずは考える力の成長です。小学校低学年ぐらいまでは話し言葉が中心ですが、中学年以降になると、書き言葉を身につけます。日常では考えていないようなことも、作文等を書く場面では考えられるようになりますし、「友だちの〇〇ちゃんがね~」と事実だけを話していた子が、「友情って難しいよね」と抽象的なことを言うようになります。

考えるということは言葉を獲得しないとできませんから、考えるための言葉を生活の中で吸収している段階だとも言えます。高学年になると、言葉の獲得が進み「友情を優先すると、親との関係を壊すよね」というような難しいことも考えられるようになっていきます。

――ほかに特徴はありますか?

渡辺先生 対人関係ですね。低学年では、同級生が自分とは違った考えを持っていることを理解し始めますが、親しい人には興味を持つものの、知らない人を思いやることは難しいです。

相手が笑っていたらうれしいんだな、泣いていたら悲しいんだなという理解です。

――まだそのくらいの理解度なんですね。

渡辺先生 はい。それが中学年になると、心の声、マンガで言う“吹き出し”を考えられるようになります。「あの子は笑っているけど、さっき先生に怒られたから気持ちは沈んでいるな」とか、「さっき私は大丈夫って言ったけど、相手は心配しているかも」というところまで考えられる人もいます。

高学年では、親しくないクラスメイトを気にかけてあげられるようになり、さらに中学生になると情報が与えられれば、会ったことがない人、例えば「他の国の人は、どんな気持ちだろう?」「江戸時代の人は……」まで考えられる力を持ちます。これを専門用語では役割取得能力と言います。

――すべての子がそうなりますか?

渡辺先生 いえ、年齢だけで、皆が同じ発達の変化をするわけではなく、環境や個人差などいろいろなことが影響しますが、データをとるとそのような傾向があります。

――どんどん内面が発達していくことに、子ども自身のとまどいはありますか?

渡辺先生 「友だちはみんな大好き!」と思っていたのに、そうでもない子が出てくるなど、子ども自身が戸惑ったり困ったりすることは出てきます。

しかし、その困るときが一番発達するときです。困ること自体が発達の兆しだと、ポジティブに考えたらいいのではと思いますよ。

読者のお悩みに、渡辺先生が回答!

ここからは、2026年3月にHugKumが行った読者アンケートで、実際に読者の皆さんから寄せられた、10歳前後のお子さんにまつわるお悩みについて、渡辺弥生先生にお答えいただきます。同じような悩みを抱えた方はぜひ参考にしてくださいね。

調査期間:2026年3月12日~3月22日 回答者数:小学4年生以上の子どもがいる保護者344人

【お悩み】子どもの見守り方が難しい

Q.甘えたい気持ちがある一方で、指図されたくないという思いが強くなってきました。アドバイスのつもりがなかなか受け入れてくれません。親の声が雑音化しているのでしょうか?
(福島県 女性)

A.自分で決めたい、指図されたくない気持ちを尊重しましょう

渡辺先生 発達心理学的には、子どもには「自己決定感」を持たせたほうがいいと言われています。

人間が発達する中で、自分で決めたい、指図されたくないという気持ちは強いわけですから、そこを尊重してあげるのが大事です。今日は宿題を早くやろうと思って帰ったところに、親から「早く宿題やりなさい」などと押しつけがましく言われると抵抗感を持ちますよね。

親の言っていることが雑音になってきたわけではなく、ちゃんと聞いているうえで、自分で決めたい、なぜ決めさせてくれないのかなと思っているのだと思いますよ。

Q.口を出すより見守る方が大事になってくる頃ですが、言わないでいるといつまでも勉強や片付けなどをやりません。バランスの取り方を教えていただきたいです。
(千葉県 女性)

A. 上から目線でなく、問いかけて共感してあげましょう

渡辺先生 言わないでおこうと思って我慢し続けられる人はなかなかいないですよね。「これからは口を出さないぞ!」という白黒のスイッチではなく、パレットのように色の具合を変えてはいかがでしょうか

ああしなさい、こうしなさいという指示ではなく「お母さんはこう思ったけど、あなたはどういう感じなの?」など子どもの気持ちを尊重しながら聞いてみるといいでしょう。

指示ばかりでやり方を教えていない場合も多いので、「イライラするのはやめなさい」でなく、「お母さんはイライラしたときこうしているよ」など、どのようにすればよいかを教えてあげられると、子どもが共感できることも出てくると思います。

親はアドバイスをしているようで、「私の考えを聞きなさい!」という圧がかかってしまいがち。大人でも、自分の親や義理の親から圧のあるアドバイスをもらうと、イライラするじゃないですか(笑)

ですから、なにかを言うときは上からでなく問いかけて、共感してあげるのがおすすめです。

【お悩み】複雑になる友人関係

Q.4年生の娘が女子特有の嫌がらせに遭いました。息子は揉めるときは直接お友だちとぶつかり、わかりやすかった気がします。
また、娘がこのことを秘密にしていたことも気になります。今後も何かに巻き込まれたときに秘密にされそうな気がしています。
(神奈川県 4年生の女の子のママ)

A.秘密を持つのは当然のこと。まだ解決する力が弱いので親がサポートを

渡辺先生 まず男女については、ジェンダーが多様になっていますし、男と女で研究結果に明らかな差があるわけではないので、研究者は慎重な立場を取りますが、日本では同性と遊ぶ時間が長いので、男女で多少文化は違ってくると思います。

そのうえで、男の子はストレスがあったら行動で紛らわせたり、直接的な物の言い方をしたりすることが多いのに対し、女の子は、人間関係のあれこれを話をして共感し合うことが多く、トラブルがあった場合に仲間外れのような陰湿な攻撃が多いと言われてはいます。

また、秘密を持つようになることは当然のことです。皆さんも子どものときにすべてを親に話したかと言われれば、そんなことはないですよね。抽象的な思考ができるようになり、「お母さんが心配しすぎるかも」「弱い人間だと思われるかも」と、秘密にする力が身についたんです。

ただ、なにか問題があったとして、解決する力はまだ弱いです。今の子どもたちは援助要請の力が弱い(自分から助けを求めるスキルが未成熟)と言われていますので、「何か隠してるんじゃないの?」と言うのではなく、「困ったらいつでも言いに来てね」という空気を出して、それを子どもに伝えるとよいと思います。

【お悩み】これは反抗期?

Q.親を下に見るようになってきた気がします。これは成長の一部として捉えてよいものでしょうか?
(京都府 女性)

A.親子に上下はない。友だちにどう思われるか、言われるかも大事な時期

渡辺先生 これって実は、お母さんやお父さん自身が、親の方が上だと思っていたのではないでしょうか。最近の子どもたちは、尊敬する人として両親を挙げる子が多く、 親に感謝をしている子が多い傾向はあります。それでも「自分は下だ」と感じる言動は嫌うでしょう。この子のように自分というものを出そうともがいているのも成長しているからです。

さらに、この頃の子どもにとっては親も重要ですが、友だち関係も非常に重要。自分が気に入って買ってもらった洋服でも、友だちに否定されたらゴミ箱に捨てたくなるような気持ちになる時期です。

学術用語で言うと「Significant Others(重要な他者)」という概念がありますが、友だちにどう思われるかがすごく大事になってきて、親の考えだけを参考にしているわけではないんですね。

その分周りの影響も受けやすいので、よくないことに誘われたり、逆に誘っていたり、その点はちょっと注意する必要はあるかとは思います。

Q.親にされたり言われたりするのが不快に感じるのはどのようなことでしょうか?
(大阪府 女性)

A.あしらわず押し付けず。説明的なしつけがよいと思います

渡辺先生 客観的に物事を見るようになり、“親も一人の人間で、間違えることがある”と思うようになります。すると、今までは親が言うことは絶対だと思っていたのが、「勉強しなさいって言うけど、自分はどうなの?」というような、批判的な考えも出てきます。

ですから、子どもだからとあしらったり、押し付けたりしてはよくないですね。会話では経験を交えながら子どもに共感するなど、説明的なしつけがよいと考えています。

「渋谷に行っちゃだめ!」とだけ言うと、好奇心が強い時期なので行きたくなってしまいます。しかし「今朝ニュースで見たんだけど、渋谷の何丁目でドラッグを売ってる人がいるらしいよ。心配だから、そこには行かない方がいいね」など。

すると親が親身になってくれているとわかるし、自分が知らなかった具体的な情報を教えてくれてありがたいという気持ちになります。

「友だちとはケンカしないように!」や「仲直りするんだよ」と言ったって、本人はどうしたらいいかわからないことがあるので、子どもの実力を知っている親が、その子にできそうな方法を「お母さんだったらこうするかな」など具体的に伝えてみるとよいですね。

【お悩み】我慢ができない

Q.自分の中の我慢、自制が利いてくるのはいつ頃でしょうか?
(岐阜県 女性)

A.イライラの気持ちを言語化するための言葉を増やしましょう

渡辺先生 自分をマネジメントしていくのは大人でも難しいこと。そういった力は育てなければいけませんが、簡単には獲得できません。家庭でできるやり方としては、自分のイライラする、モヤモヤする、ムカムカしている気持ちを言語化すること。

これは大人も同じです。「イライラする」だけじゃなくて「仕事が上手くいかなかった苦しさがある」「家事をこなせない悔しさと、友人がうらやましい気持ちがまぜこぜになっているなぁ」などと表現できると、原因がわかり、感情が爆発することが減ってくると思います。

気持ちを言語化するためには言葉を増やすことが近道。子どもなら絵本でも本でも映画でも、”気持ち言葉”がたくさん出てくるものに触れるといいと思います。

まだ自発的に言えないようなら「イライラしてるのは、うまくいかない悔しい気持ちなんじゃない?」と代弁してあげると、これは悔しい気持ちなんだ、と思うかもしれないし、いや違う、こういう気持ちだよと言ってくれるかもしれません。そうやって自分の気持ちを理解する言葉を増やしてあげましょう。

子どもの話は語尾まで聞いて。小学生ならではの反応を楽しみましょう

渡辺先生 お子さんと会話をするときは、ぜひ語尾まで聞いてあげてください。日本語は語尾に気持ちが入りますから、「〇〇したかったのにー」「〇〇したかったけど」を聞いてあげれば、そこに込められた繊細な気持ちがわかります。

忙しいときなどは、話の途中で「わかった、わかった!」と遮ったりするものですが、発達心理学的には非常に残念なことをしてるんです。

小学生は、悩みが解決すると飛び上がって喜ぶなど、面白くも可愛いらしい反応をくれる時期。お子さんの会話をよく聞いてあげて、ときにはメモしたりすると、面白いと思いますよ。

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お話を聞いたのは

渡辺弥生先生 心理学者

大阪府生まれ。教育学博士。専門は発達心理学、教育心理学。1983年筑波大学卒業、同大学大学院博士課程で心理学を学んだあと、筑波大学、静岡大学を経て、現在、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長。途中、ハーバード大学教育学研究科、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で客員研究員。
主な単著に『子どもの「10歳の壁」とは何か?――乗りこえるための発達心理学』(光文社新書)、『感情の正体――発達心理学で気持ちをマネジメントする』(ちくま新書)、『怒っている子どもはほんとうは悲しい「感情リテラシー」をはぐくむ』(光文社新書)、監修に『よくわかる発達心理学』(ナツメ社)、編著に『ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)――非認知能力を育てる教育フレームワーク』(福村出版)、『中学生・高校生のためのソーシャルスキル・トレーニング』(明治図書出版)など多数。

この記事を書いたのは

長南真理恵 ライター

子育てや教育、エンタメにまつわる方々への人物インタビューを多く取材・執筆。大人はもちろん、子どもたちから話を聞くのも好きです。3兄弟を育てる母でもあり、同じように子育てに向き合っている方たちが共感できたり、悩みや困りごとに寄り添えるような記事を発信しています。

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