産声のない出産を経験して、空に旅立つ赤ちゃんのための「産着」を作り始めた夫婦。悲しみに寄り添い、届けた手のひらサイズの「天使のお洋服」は年間900着以上になりました

お空に旅立った子どもたちに贈るメモリアルショップ「soramusubi」(そらむすび)を運営する田中淳さん・梓さんご夫婦。日本では年間約1.6万件の死産、20万件の流産が起こっており、多くのご家族が深い悲しみに直面しています。田中さんは、2020年に第一子を死産されています。ご自身の経験から、亡くなってしまった赤ちゃんに着せる「天使のお洋服の寄付活動」を展開。年間900着以上の小さな産着を寄付しています。田中さんご夫婦に、「天使のお洋服の寄付活動」に至るまでの道のりと、活動への思いについてうかがいました。

おなかの赤ちゃんに、重度の心疾患など5つの病気が判明

――妊娠がわかったときのことを教えてください。

梓さん:夫と私は同じ歳ですが、28歳で妊娠がわかりました。初めての妊娠で、とてもうれしかったです。何の疑いもなく、元気な赤ちゃんが産まれてくると思っていました。

しかし妊娠10週の妊婦健診で、おなかの赤ちゃんにむくみがあると言われてしまい…。

――それは、不安になりますね。その後は、どのような対応になったのでしょうか。

梓さん:エコー検査でむくみが広がっていることがわかり、妊娠20週頃に重度の心疾患など5つの病気が判明しました。医師からは「生きていくのは難しいと思う」「残念だけど、看取るようになると思う」と言われました。その言葉を聞いたときは、本当にショックで…。今でも思い出すと涙がこみ上げてきます。

当時はコロナ禍で、夫も私も自宅でリモートワークをしていたので、夫婦で話し合う時間がたくさんありました。「どうして私たちの子が…」と葛とうしながらも、夫婦で対話を重ねて、少しずつつらい現実を受け入れていきました。

妊娠6カ月で、陣痛に耐えながら産声のない出産を

まおちゃんのお棺には、田中さん夫妻の写真や手紙、出産に関わったみんなで折った折り鶴を入れて、お見送りをしました

――田中さんご夫婦は、2020年に死産を経験されています。

梓さん:そして、妊娠6カ月のときに死産となり、おなかの中の娘(まおちゃん)を産むことになりました。

コロナ禍でしたが、産院の配慮で夫は立ち合いを許可してもらい、陣痛に耐えながら産声のない出産をしました。

本格的な陣痛が始まるまでは、小さな棺に入れる折り鶴を夫と一緒に折っていました。助産師さんも折り紙に娘へのメッセージを書いて、一緒に鶴を折ってくれました。

淳さん:小さな棺には、夫婦でそれぞれ娘に手紙を書いて入れることにしました。私は「まおちゃんを授かったとわかったときは本当にうれしかったよ」「帰ってきてほしい」という思いを綴りました。

梓さん:私も「ママ・パパのところに来てくれてありがとう!」という感謝の気持ちと、戻ってくるおうちがわかるように、私たちの写真を添えました。

医者や助産師から「おめでとう」と言われて、胸が熱く

――産科クリニックでは、どのようなケアを受けましたか。

梓さん:医療機関によって死産の対応はさまざまなようですが、私が出産した産科クリニックは、元気に産まれた赤ちゃんと同じように手形、足形をプレゼントしてくれました。

まおちゃんが取り上げられたとき、産声は聞こえなかったけれど、医師や助産師さんが初めての出産を祝うという意味で「おめでとう」と言ってくれたのです。母としての役目を果たせたようで胸が熱くなりました。まおちゃんのお顔を見ると「私に似ている」と思いました。

淳さん:自宅に戻ってからは、お見送りまでは家族でゆっくり過ごしました。夜は、小さな棺をはさんで親子で川の字で寝ました。

まおちゃんの小さな体に合う、かわいい産着を着せてあげたい

梓さんが入院中に作った産着

――まおちゃんは、梓さんが作った産着を着ていたそうですね。

梓さん:小さな赤ちゃんが亡くなってしまうと、市販の産着では大きすぎて着せることができません。なので、ガーゼをかけてあげるのが一般的なようです。

でも、まおちゃんには、かわいい産着を着せてあげたいなと思って……。私は裁縫が好きなので夫と布やリボンを買いに行き、まおちゃんに着せる産着を手縫いで作りました。手のひらに収まるぐらいの小さな産着になりました。

その後2人の子どもに恵まれ、家族の輪の中にいつもまおちゃんがいる

産院で渡された、まおちゃんの手形と足形

――田中さんご夫婦には、5歳の女の子、1歳の男の子がいらっしゃいますが、子どもたちには、まおちゃんのことをどのように伝えていますか。

淳さん:特に話してはいないのですが、家族で毎月、お寺へお参りに行ったり、毎日お線香をあげて話しかけたりしています。なので、5歳の娘は、姉の存在がなんとなくわかっているようです。

梓さん:まおちゃんのメモリアルグッズを飾っているスペースに、5歳の娘が自分のおやつを分けて置いたり、保育園で作った折り紙の作品を飾ったりしているのを見ると、心がほっこりします。

田中さんご夫婦が取り組む、小さな産着を届けるボランティア活動

――田中さんご夫婦は自身の経験から、お別れのときに着せる小さな産着を寄付する「天使のお洋服の寄付活動」をしていらっしゃるのですね。

梓さん:私たち夫婦は死産の経験から、お空に旅立った子どものためのメモリアルグッズショップ「soramusubi」を立ち上げました。その活動の一環として「天使のお洋服の寄付活動」を行っています。

先ほどもお話ししたように小さな赤ちゃんが亡くなると、市販の産着では大きすぎるので、ガーゼをかけてあげるのが一般的なようですが、SNSで娘の産着のことを発信したら、同じ経験をされた方から、自分たちもそうやって我が子を送ってあげたかったと、たくさんの共感が寄せられました。それが、寄付活動のきっかけになりました。

――寄付活動ということは、無償なのですか?

淳さん:はい。赤ちゃんのサイズに合わせたお洋服(天使のお洋服)をお仕立てし、無償でお届けしています。送料を含め、ご家族から費用をいただくことは一切ありません。メモリアル品の売り上げを使用したボランティアとしてお届けしています。ご希望がある医療機関やご家族に産着を届けていますが、これまで年間900着以上、全国32の医療機関に寄付しています(2026年6月現在)。

赤ちゃんを亡くした悲しみや苦しさに寄り添い続けたい

――利用された方の声を教えてください。

淳さん:赤ちゃんの産着は、10名ほどのボランティアで作っています。なかには、赤ちゃんを亡くした経験がある方もいます。

利用された方からは「お空に旅立った赤ちゃんのことを思ってくれる人がいると思うと、心が救われた」「つらいのは私1人ではないと勇気づけられた」などの声をいただいています。

――天使のお洋服の寄付活動の今後の目標を教えてください。

梓さん:活動を継続していくことが一番の目標です。私自身も、まおちゃんを亡くしたときは、苦しくて、自分を責めたりしましたが、あのときの私と同じ思いを抱えているご家族が、今日もどこかにいると思うと、その方たちに少しでも寄り添えるように活動を継続していくことが大切だと考えています。

写真提供/田中淳さん・梓さん

お話をうかがったのは

田中淳さん・梓さん soramusubi

2020年に第一子を死産で亡くした経験から、子どもへの思いをカタチにしたメモリアルグッズを販売する「soramusubi」を設立。夫婦で共同代表を務める。5歳、1歳の子どものママ・パパ。

サイト「soramusubi」では、ママとパパが後悔のないお見送りができるよう、当事者のリアルな声やお見送りにまつわる情報も発信しています。

soramusubi | お空へ旅立った子どもたちに贈るメモリアル品

この記事を書いたのは

麻生珠恵 ライター

子育てや子どもの病気、事故を中心に取材・執筆を行う。情報発信によって、病気の予防・早期発見、事故予防につながる記事作りを心がけています。2 人の子どもがいます。

編集部おすすめ

関連記事