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「算数が苦手」の正体は「親と、一般の基準」
――「私は算数が苦手だから」と子どもが思い込んでしまう心理的なメカニズムはどこにあるのですか。
秋谷光輝さん(以下、同):「親の私が苦手だから、きっと子どもも苦手なんだろう」という親側の思い込みが、実は一番の引き金になっています。
思い込みというのは現実を作ってしまいますから、親が頭の中で「うちの子は算数ができない」「この先大丈夫かしら」と不安に思っているイメージが、そのまま子どもに表れてしまうんです。
「この子は将来立派な大人になれるかしら」と心配するのではなく、親が「きっと素敵な子になる」とわが子を信じてあげることが何より大事なんですよ。
――とはいえ、テストで悪い点を取ってこられると、どうしても不安になります。
「〇年生ならこれくらいできて当然」という世間の基準に焦ってしまう親も多いです。
そうやって一般基準(学年)にわが子を無理やり当てはめようとすると、目の前にいる子どもの「現在地」が見えなくなってしまう。「今のこの子の現在地はここ」と、まずはありのままを認めてあげてほしいですね。
そもそも、今の学校教育や世間の「頭がいい子」の基準って、国語、算数、理科、社会がバランスよくできることなんです。でも、褒めてあげることは、それだけじゃない。他の科目はすごくできているかもしれないじゃないですか。
今できていないからといって、これから先もずっとできないわけじゃないですし。
――低学年で算数が苦手だった子が、高学年で開花することはあるのですか。
はい。子どもの頭の成長スピードって、身長と同じで本当に人によって違うんです。10歳で頭打ちになる子もいれば、15歳を過ぎてからグッと伸びていく子もいる。
「能力の器」の大きさの問題で、たとえば高校野球ですぐに活躍したからといって、プロ野球でも同じように活躍できるとは限らないですよね。逆に、大器晩成型の子は、器が大きいからこそ、最初はゆっくり成長するんです。
あのイチロー選手だって、高校野球の段階ではまだ全国的な超スターではありませんでした。器が大きい子ほど、ゆっくりゆっくり育つものなんです。だから、現在の一般基準と比べて焦る必要は一切ありません。
つまずいたら「プライドを捨てて小1~小2に戻る」
――焦る必要はないとわかっていても、親としてはドリルを何回も解かせて追いつかせようとしてしまいます。
算数という教科において知っておいてほしいのは、国語・理科・社会とはその性質が全く違うという点です。
国語や理科、社会という教科は、極端な話、小学校の3年生や4年生からでも、その単元をパッと勉強すればなんとかなる部分があります。過去の遅れが致命傷になりにくいんです。
でも、算数だけはそうはいかない。小学1、2年生の基礎(足し算やかけ算など)をきちんとやっておかないと、上の学年の問題は構造的に絶対にわかり得ないようになっているんです。つまり、今小学3年生や4年生の授業でつまずいているのだとしたら、原因は今の教科書ではなく、もっと前にあります。

――具体的には、何をやるべきなのでしょうか。
もし小学3・4年生でつまずいているのだとしたら、プライドを捨てて小学1・2年生の問題をやる。
たとえ学年が低くても、まずは「ちゃんと解ける状態」にしておくこと。焦る気持ちをグッとこらえて、子どもの今の現在地までしっかり巻き戻してあげることが、実は一番の近道なんですよ。
「算数のセンス」は、遺伝がすべてじゃない
――「算数のセンス」に遺伝はどの程度関係ありますか。
生まれたときに差があるのは事実です。ゲームでいうと「所持金1万円からスタートするのか、5千円か」という初期値の差はあります。でも、生まれたときから変わらないというわけじゃない。
私の講座(ExpIQ)では、もともとIQ100前後の受講生のみなさんにやってもらうと、130〜140に上がります。1年で73人が受けて、JAPAN MENSA(全人口の上位2%のIQを持つ集団)に48人が合格しました。頭の使い方をこれまで知らなかっただけなんです。
――そもそも、IQとは、どういう能力を指すのでしょうか。
世間では「記憶力」と混同されがちですが、そこには明確な違いがあります。
「10を聞いて10を覚える」のが記憶力です。一方「10を聞いて、教わっていない20を作り出す」のがIQです。その中にある規則性を見つけたり、未来を予測したりと、自分のアタマで考える力をいいます。

――日常のなかではどういう瞬間に表れるものですか。
たとえば仕事なら、コンビニで売り上げの変化を見たときに、「あ、数字が増えたね、減ったね」と大小を追いかけるだけなのが普通の見方です。でも、IQが高いと、「来た人の人数」で割り算をしてみて、ひとりあたりの単価、といった新たな構造が見えてくる。
映画を観たときも、ただ「楽しかった」で終わる人と、「あそこの伏線が、後半のあそこに表れていたよね!」と構造を見抜ける人がいますよね。
サッカーなら、敵と味方の場所がつねに変化する中で、「ここにパスを出すと、こう展開する」と未来を推測できる。これがスポーツIQです。
お笑い芸人さんでも、ひな壇で予想外の振りにその場でパッと完璧な受け答えができる人は、現状の変化のパターンを見抜いて未来を推測している。つまり、もの凄くIQが高いんです。
子どもが間違えたら「どうしてこの数字にしたの?」と聞く
――子どものIQを育てるにはどうすればいいでしょうか。
間違えたらダメという「正解至上主義」を今すぐやめることです。
知らないことができないのは当たり前です。なのに、子どもが出した答えに対して、「何それ?」「そんなものもわからないの」と失笑したり、大人の基準で裁いたりするのはNG。
「俺が子どもの頃はこれくらいできた」と親が怒るのも、子どもは攻撃的になってしまいます。私は、わが子にそれをやっちゃってたんですけどね(苦笑)。

――もし子どもが間違った答えを出したときは、どう声をかければいいですか。
「どうしてこの数字にしたの? 教えて〜!」と、興味を持って聞いてみてください。すると、子どもは「だって、ここはこうだと思ったから……」と、自分なりのロジックを話し始めます。
そうやって自分なりに考えたこと、推測したこと自体を、まずはしっかり褒めてあげるんです。そのあとに「なるほどね!じゃあ、ここはこう考えてみたらどうなる?」と、軌道修正をしてあげればいい。
子どもは「自分なりに考えたプロセスを認めてもらえた」とうれしくなり、どんどん自分で考えるようになります。
日常で「なんでだろうね」を問い続ける
――日常の会話のなかで、おすすめの習慣はありますか。
頭を使うのにいちばん役立つのは、「なんでだろうね」という問いかけです。
そういうときに、スマホにまず聞かないこと。もちろん最終的に調べるのはいいですが、まずは自分なりの仮説や回答を出させましょう。親がすぐに答えを教えてしまうのも、スマホに聞くのと同じです。
大人もIQは伸ばせるので、もったいないですよ。
――『今から伸ばす!IQトレーニング』は15万部と反響を呼んでいましたね。
読者の方から「学歴コンプレックスがある」「周囲から賢いと思われてこなかった」といった、リアルな悩みがたくさん届きました。
でも、「今から伸びるんだったら、頭のいい人たちと同じ基準になれるかもしれない!」と、みなさん希望を持って取り組んでくださっています。
まずは、お子さんに「これ、なんでだろうね?」と問いかけることから、始めてみませんか。
後編では秋谷さんが開発した“楽算メソッド”で「2桁のかけ算」を簡単に解く方法を伺いました
お話を伺ったのは
1974年生まれ、JAPANMENSA会員 IQトレーニング講座「ExpIQ」(エクスピーク)主催。ソニー株式会社にて16年間エンジニアとしてオーディオ設計に携わる。小学校4年生で受けた全国一斉知能テストが全国1位(180万人中)だったことを知り思考法が特異であることに気づく。数学の偏差値は104を記録。心身の不調をきっかけに「モノづくりからヒトづくり」へ転身。大手企業での研修実績、雑誌、新聞などでの掲載多数。Yahoo!ニュースで連載中。一般財団法人高IQ者支援機構にてIQ185(sd24)を認定される。
著書:「楽算メソッド」(合同フォレスト)、「今から伸ばす!IQトレーニング」(大創出版)、「記憶の出し入れがスムーズになる衰え知らずの脳トレ習慣」(日本実業出版社)
秋谷さんの書籍もチェック
この記事を書いたのは
三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。
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