前編では苦手を克服するコツ、IQを伸ばす声かけを伺いました
目次
ロジックはすごくシンプルな、2桁のかけ算
――1桁のかけ算(九九)まではスムーズに言えるのに、2桁のかけ算(筆算)になると急にできなくなる子どもが多いのはなぜですか。
秋谷光輝さん(以下、同):子どもたちの頭の中で、処理のステップが急激に増えて混乱しているからです。
1桁のかけ算というのは、「ひとつの処理」で完結しますよね。でも、2桁になった途端に対象がいくつも出てくる。そうすると子どもは、「一気に答えを出さなきゃいけない」と身構えてしまうんです。
その怖さが、算数を嫌いにさせる原因なんですよ。
――パッと見て、「めんどくさいな」と。
でも、構造をロジックで分解してみれば、実はものすごくシンプルなんです。
2桁のかけ算なんて、結局は「1桁の九九を4回やるだけ」の作業なんですよ。頭の中だけで暗算しようとするから難しく感じるわけです。「57×69」は、分解すると「9×5=45」「9×7=63」。これなら簡単にできますよね。

これは3桁のかけ算になっても基本は全く同じです。全体を見て悩む必要は一切なくて、「2つある数字から1つを選ぶ」というシンプルな処理の連続でしかない。
「はじめに手を付けられるのはここしかない」と分かれば、一気にハードルは下がります。
2桁のかけ算は「九九を4回やるだけ」
――具体的にどのようにやるか、説明していただけますか。
たとえば、「57×69」では、学校の筆算だと、「しちくろくじゅうさん、3を書いて6を繰り上げて……」と頭の中で数字をキープしながら次の計算をしますよね。これが子どもを混乱させる原因なんです。
私のメソッドでは、そんな暗算は一切しません。ただ機械的に「九九を4回」やって、その答えをそのまま下に書いていくだけです。 上から順番に見ていってください。

① まず一の位どうしのかけ算: 7×9 = 63
② 次に上の十の位と下の一の位: 5×9 = 45
③ 今度は下の十の位と上の一の位: 6×7 = 42
④ 最後に十の位どうしのかけ算: 6×5 = 30
あとは、この縦に並んだ「63」「45」「42」「30」を足し算するだけ。答えは「3933」になります。これなら、途中で「繰り上がりの数字を忘れた!」とパニックになることがありません。
さらにスピードアップするには「クロスかけ算」

――他にもやり方はあるのですか。
慣れてきたらこの「クロスかけ算」を使うと、さらにスピードアップできます。
まず、十の位どうしのかけ算(5×6=30)と、一の位どうしのかけ算(7×9=63)を計算して、上の段に「30 63」と横並びにそのまま書いてしまいます。
――間の位を空けずに、ただ並べて書くだけですか?
そうです。単に並べて「3063」という数字を作っておくイメージです。
次に、内側と外側をクロスさせるように、斜めのかけ算をします。 「5×9=45」と「7×6=42」。この2つを足すと「87」になりますよね。実際の意味としては十の位の計算なので、この「87」にゼロをひとつつけた「870」を、さっきの「3063」の下に書いて足し算するんです。

どちらのやり方にも共通しているのは、やっぱり頭のなかでの「一時的な記憶(繰り上がりのメモ)」を完全に排除している点です。すべてを紙の上で見える化して、シンプルな九九と足し算の組み合わせに分解しています。
図形や面積が苦手な子は「単位を追いかける」
――「面積」などの図形問題でつまずいてしまう場合は、どうですか。
「単位を追いかける」ことを意識させてあげるのが大事です。
「縦3メートル×横4メートル=12平方メートル」という計算がありますよね。でも、長さなら「3メートル+4メートル=7メートル」。子どもがつまずくとき、この「メートル」という言葉がすべて同じものに見えてしまっていることが多いんです。
だって、縦という次元と、横という次元はまったく別物ですよね。横にどれだけ長く並んでいても、それだけでは面積は出せません。次元が違うからこそ、かけ算をしたときに「平方メートル」に単位が変わるわけです。
この「単位の変わり方(構造)」に注目させて、「縦メートル×横メートル」と次元を意識して考えるようになると、数の構造が直感的に理解できるようになります。

――他の単位の概念にも応用ができるのですか。
これだけで本が書けるくらい、応用がたくさんききます(笑)。
たとえば、多くの子どもたちが大嫌いな「時間・距離・速さ」の単元にもそのまま応用できます。「時速〇キロ×〇時間=〇キロメートル」というのも、単位がどう変化しているのかを追いかけていけば、公式を忘れても迷うことはなくなります。
算数を通じて育てる、これからの時代の「本当の思考力」
――どうしても公式を覚えることばかりに頭がいってしまいます……。
「仕組みはどうでもいいから公式を覚えなさい」「この通りに使って答えが出ればマルがもらえて、いい学校に行けるから」という教育では、限界があります。
どんなに複雑に見えるものだって、実は「シンプルな仕組みの連続」でしかないんです。それを扱いやすいようにまとめたものを、勝手に「因数分解」「微分積分」という名前でパッケージ化して呼んでいるだけにすぎません。
――「微分積分」も、つまずく人が多いですよね。
あれは、つねに変化している棒を、細かくして全部足し合わせただけ。中身はシンプルで、難しく見えているだけです。
大人になってからも、この力は生きていきます。全体で見るとすごく難しそうな問題でも、できることって意外と限られていて、ひとつずつやっていくしかないんです。

――子どもの算数について悩んでいる方々に向けて、メッセージをお願いします。
今の段階で遅れているからといって、悩んだり、自己肯定感を下げたりする必要は一切ありません。「今、この子の現在地はここ」と、いうだけのこと。
親は算数が苦手だったという過去や、「〇年生ならここまでできないと」という基準はさておき、まずはありのままを受け入れてあげてください。大切なのは「これからの取り組み」です。
だって、2桁のかけ算だって、これまではただ学校の教え方や仕組みが分かりづらかっただけですよね。いくらでも変わっていける。そう親が信じてあげることで、子どもは必ず変わっていきます。
前編では苦手を克服するコツ、IQを伸ばす声かけを伺いました
お話を伺ったのは
1974年生まれ、JAPANMENSA会員 IQトレーニング講座「ExpIQ」(エクスピーク)主催。ソニー株式会社にて16年間エンジニアとしてオーディオ設計に携わる。小学校4年生で受けた全国一斉知能テストが全国1位(180万人中)だったことを知り思考法が特異であることに気づく。数学の偏差値は104を記録。心身の不調をきっかけに「モノづくりからヒトづくり」へ転身。大手企業での研修実績、雑誌、新聞などでの掲載多数。Yahoo!ニュースで連載中。一般財団法人高IQ者支援機構にてIQ185(sd24)を認定される。
著書:「楽算メソッド」(合同フォレスト)、「今から伸ばす!IQトレーニング」(大創出版)、「記憶の出し入れがスムーズになる衰え知らずの脳トレ習慣」(日本実業出版社)
秋谷さんの書籍もチェック
5000人超が効果を実感した「楽算メソッド®︎」が待望の書籍化。人間関係、仕事、健康、恋愛、家族など、人生で繰り返し生まれる悩みには、実は共通する「法則」があります。本書では、その法則を数式や図式によってわかりやすく見える化し、悩みの根本原因と解決の仕組みを理解できるよう解説しています。
「人生が楽に楽しくなる算数」を意味する楽算メソッド®︎は、世の中の仕組みをシンプルに捉え、実生活に活用するための実践的なメソッド。単なる考え方や精神論ではなく、再現性のある法則として学べるため、日常のさまざまな場面で活かすことができます。
本書は、MENSA会員、IQテスト全国1位、元SONYエンジニア、第1種数学教諭免許取得という異色の経歴を持つ著者が考案したメソッドを初めて書籍化したもの。悩める会社員・ミクと秋畑先生の対話形式で進むため読みやすく、楽しみながら理解を深められます。人生をより楽に、より楽しく生きるためのヒントが詰まった一冊です。
この記事を書いたのは
三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。
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