子どもと政治の話、していますか? 3児の父・TBSラジオ国会担当・澤田大樹記者に聞く「親子で政治を語るヒント」と「国会の楽しみ方」

「子どもと政治の話をしたいけれど、親の自分もよくわからない」……そう感じている人も多いのではないでしょうか。TBSラジオで国会を担当する澤田大樹記者は、TBS Podcast『セイジドウラク』や著書『永田町の人をウォッチしてみた よくわからない国会議員の仕事』(カンゼン)、共著『しくみがわかればガチでおもしろい!選挙・政治のふしぎ』(小学館)を通じて、政治の面白さを伝え続けてきました。3人のお子さんの父でもある澤田記者に、家庭で政治を話題にするヒントから国会中継の意外な楽しみ方までを伺いました。

テレビ番組がきっかけで政治に興味を持ち、「国会担当記者」に

――澤田記者は、普段どんなお仕事をされているのでしょうか。

澤田記者:毎日、国会議事堂に「出社」しています。国会が開いているときなら、その日の質疑をウォッチしたり、記者会見で質問したりして、それらの内容をラジオの夕方のニュースでお伝えします。

国会が閉じているときは、議員会館という議員の執務室のようなところに行って、議員の方に取材したり、各政党の会議に足を運んで発言の内容を聞いたりしています。そのときの状況によっては霞が関の省庁に取材に行くこともありますし、事件や災害の取材に行くこともあります。

――澤田記者が最初に政治に興味を持ったきっかけはどんなものだったのですか?

澤田記者:私は食卓で政治の話が出るタイプの家庭で育ちました。世の中で起きているニュースについて両親が意見を交わしている様子を見て、子どもながらにその話に混ざりたいと思っていました。それから親のすすめで新聞を読むようになったのですが、小学生が新聞を読んでも、あまり楽しくはないんですよね。

そんなときに、日本テレビ系列で放送していた情報番組『The・サンデー』で、1週間の永田町の様子を紹介するコーナーを見るようになりました。これは国会や政治について取り上げるもので、政治家にあだ名をつけて揶揄するような場面もありました。今考えれば問題のある表現もあったと思いますが、政治家のキャラクターや、今の政治がどうなっているかという構図がわかることがとても面白かった。そこから一気に政治が身近なものになっていきました。

「何で税金を上げるの?」身近なところに政治とつながる話はたくさんある

――澤田記者は3人のお子さんを育てていらっしゃいますが、ご家庭でどのように政治の話をしていますか?

澤田記者:まず長女の中学受験を考え始めた頃から、朝食時にNHKのニュースをつけるようになりました。最初は何も言わなかった子どもたちが、次第に「何で戦争をするの?」「何で税金を上げるの?」と疑問を持つようになり、そこから親子で話をすることが増えました。岸田文雄さんが総理のときには、「増税メガネ」という言葉が子どもの同級生の間でも話題になったようで、そこから増税について話したこともありました。

何か一つの政策について説明しようとすると、付随して話が広がっていきます。「増税」という1つのトピックをとっても、「消費税は高齢者の医療費などの社会保障に回している」という話から、「何で社会保障に回さなきゃいけないの?」という疑問になり、「日本は若い人たちがどんどん減ってきているからだよ」と話が展開します。子どもたちに関することでいえば「給食の無償化」も話しやすいテーマだと思います。

政治というとどこか遠くのことと捉えられがちですが、私たちに関わることは全てが政治とつながっているので、どこからでも話すことができます。

――生活の中にも話題はたくさんあるのですね。

澤田記者:そうですね。「何で税金がかかるの?」「何で最近このお菓子は値上がりしているの?」という疑問は、国や政治について考えるベースでもあります。

スーパーで売っているキウイを例に挙げると、まず「先月までは120円だったのに、今回170円になっているのは何で?」という風に値段をテーマにした話ができます。「何でニュージーランドからわざわざ買っているの? 日本じゃダメなの?」という疑問は、食料自給率や農作物を作るコストについての話になり、「じゃあ日本では作っているの?」といった地域や環境の話もできます。

――ただ、親自身が政治に詳しくないとなかなか説明が難しいところもあります。

澤田記者:そうですね。子どもと政治の話をしたいと思うのであれば、親のほうも関心をもって勉強する必要があります。政治の知識がないと、「あの議員はがんばってるからいいよね」と表面的なことしか言えなくなってしまうからです。本来は、その議員の発言におかしいと感じる部分があれば「いくらがんばっても、その考え方はダメだよね」と指摘できなければいけません。

ただ、全部わかっていないと政治の話ができないかというと、そんなことはありません。親が食について興味があるなら食の話をしてみてもいいだろうし、アニメが好きならアニメの話からも政治につなげることはできます。自分が生活している中でいちばん引っかかりがあるところから、子どもと話してみるのがよいのではないでしょうか。

――わからないことを聞かれたときは、一緒に学ぶというスタンスでもよいでしょうか。

澤田記者:「お母さん(お父さん)も、もうちょっと勉強して説明するよ」と言ってもいいですし、「こういうところに答えが書いてあるかもしれないから、それを読んでみたら?」という提案するのもありだと思います。

記者をやっていても、全てのことはわかりません。私は世界史選択だったので世界史はわかるけれど、日本の天皇の話となるとほとんど知識がない、というのは皇室典範の取材をしていて感じました。

――常に情報を収集することも大切ですね。

澤田記者:1日5分でいいから新聞やテレビのニュースに触れることがベストです。その中で気をつけてほしいのは、なるべくポータルサイトなどを使わずに、新聞社のサイトのように出どころが信頼できるニュースに触れることです。もしちゃんと政治に触れ続けるのであれば、月に1000円でもよいので新聞やメディアに対して課金をしてほしいとも思っています。

今は誰でも発信できる時代ですが、ちゃんとした情報はお金を払わないと手に入りません。我が家でも実践しているのですが、こども新聞や小学生新聞を購読して、子どもと一緒に読んでみるのも良いと思います。

知れば知るほど面白い! 国会を楽しむためのポイントとは?

――澤田記者のご著書『永田町の人をウォッチしてみた よくわからない国会議員の仕事』を読んで、国会議員の方が普段どのようなお仕事をされているのかがよくわかりました。

澤田記者:教科書的な説明ではなく、国会の見方や注目ポイント、議員の方々の働き方など、政治のことをよく知らない人にも興味を持ってもらえるような内容になっています。

例えば国会中継って、やりとりを見ていても何を話しているのかよくわからないと思うんです。本当はスポーツ中継のようにリアルタイムで解説できるとよいのですが、なかなかそういうことはできないので、少しでもガイドになるようなことをお伝えできるように意識しました。

――国会に対するイメージは何となくあるものの、知らないことばかりでした。

澤田記者:そうですね。国会は予算や外交といった大きな話だけでなく、実はみなさんにとってごく身近なことも話し合っているんです。

本の中でも書きましたが、例えば重度身体障がい者で参議院議員になった、れいわ新選組(現・いのちの党)の木村英子さんの質疑です。かつて新幹線の車いす用の座席は、事前予約しなければ乗ることができないという運用がありました。そこで、当事者である木村さんが質疑の中で「当日予約で乗れるようになりませんか」と提起したら、民間企業であるJR東海がすぐにシステムを変更しました。当時まだ議員が少なかった政党の質疑がきっかけで、全国の障がいのある人が助かることになったのです。

大きな経済政策は、確かに議員の数が多くないとできないところはありますが、「こういう困りごとがあるんだけど、どうにかなりませんか」ということは、実は野党でも変えられます。ただ、そこはあまりニュースにならないんですよね。

――お話を伺って、これから国会中継も見てみたいなと思いました。見る際に注目するポイントなどはありますか?

澤田記者:今は国会中継がYouTubeで無料配信されているので、「この人の質疑は面白い」という人を見つけるのもいいと思います。質疑が上手い人は与野党を問わずいらっしゃいます。例えば、共産党の山添拓さんや立憲民主党の石橋通宏さんのようにファクトで詰めていく人の質疑は見応えがありますね。自民党の稲田朋美さんや日本維新の会の串田誠一さんの質疑も興味深いです。

ほかに特徴的なことといえば、自民党の橘慶一郎さんは、必ず万葉集の一首を詠んでから質疑を始めますし、立憲民主党の村田きょうこさんは工場の始業のかけ声である「それでは皆さん、今日もご安全に」から始めて、周りの与野党議員から「ご安全に」と返ってきます。こちらもニュースではなかなか見られない光景です。

政治の話はタブーではない! まずは「世の中と自分は違う」と知ることが大切

――子どもはYouTubeやTikTokで目立つ政治家や主張に興味を持ちやすいです。そこから情報の見極め方をどう伝えればよいでしょうか。

澤田記者:目立つ政治家や主張に興味を持ったとしても、無関心よりはよいことだと思います。「興味の引っかかり」ができてしまえば、そこからいくらでも広げることができますから。私たちが『セイジドウラク』というポッドキャストをしたり、政治に関する本を出したりしているのも、その「引っかかり」を作るためです。

情報の見極め方については、トライアンドエラーを前提に考えておくべきではないでしょうか。親御さんも経験したことがあるかもしれませんが、選挙でも失敗することがあります。過去に私も「これで世の中が変わるかも」と思って投票したら、数年後によりひどい未来になっていた、という経験をしました。でも、投票するときにはそこまで見抜くことができませんでした。

子どもたちが、YouTubeやTikTokで「何か面白そう」と関心を持ったなら、それは一歩前進しているということ。そこから、「こういう政党もあるよ」「違う考え方もあるよ」と別の選択肢を示すことで、それぞれにいいところと悪いところがあることがわかり、物事が立体的に見えるようになるでしょう。それが、親にできる役割でもあると思います。

――そのためには、親自身も一方的な見方をしないように気をつけないといけませんね。

澤田記者:フィルターバブル(※1)で自分が欲しい情報だけが入ってくるという状態になっている人も多く、違う視点を持つのは難しい状況です。だからこそ、「世の中と自分が違う」という視点を持つことは大切だと思います。

※1 インターネット上でアルゴリズム機能がユーザーの検索履歴や行動履歴を学習し、その人が好みそうな情報や意見を優先的に表示し続けることで、情報の膜に包まれたように、自分と異なる視点や情報に触れにくくなる現象。

――「政治の話はタブー」と考える人も少なくありません。考えが違う人とでも政治について話すには、どんなことに気をつけたらよいでしょうか。

澤田記者:これも「世の中と自分は違うんだ」という前提に立つことではないでしょうか。例えば選挙結果が自分の考えとは違うものになったとき、「世の中の人はおかしい」と言ってしまいがちです。しかしそこで、「ほかの人は、自分とは違うどんな基準でこの結果を導き出したんだろう?」と考える機会を持てるのが、選挙だと思います。

相手との違いを理解した上で会話ができるのが理想であり、それができたら政治の話もタブーにはなりません。ただ、そういう会話ができる人は少ないですし、どうしても自分の考えや支持政党はあるので難しい部分もあります。繰り返しになりますが、だからこそ、「違う考えが世の中にはたくさんある」「答えは1つではない」と親が言い続けることが必要なのだと思います。

――ありがとうございました。お話を聞けば聞くほど政治が身近なものに感じられ、自分でもいろいろ勉強したくなりました。

生活と政治は切っても切れないもの。ぜひ興味のある分野をきっかけにお子さんと会話してみてください。

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お話を聞いたのは

澤田大樹 TBSラジオ記者

1983年福島県出身。

2009年TBSラジオに入社。2010年にラジオ記者となる。東日本大震災取材後、2013年にTBSテレビに出向し報道局政治部記者、ニュース番組ディレクターを務め、2016年に再びTBSラジオへ戻る。ニュース番組のディレクターを担当したのち、2018年からは国会担当記者となる。著書に『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』(亜紀書房)。人気ポッドキャスト『セイジドウラク』のパーソナリティー。

この記事を書いたのは

平丸真梨子 ライター

音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。

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