トランプ政権がICCの赤根所長に制裁を科したのはなぜ? 小学生にもわかるように解説【親子で語る国際政治】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、アメリカのトランプ政権がICCの赤根所長に制裁を科したことについて、小学生にもわかるように解説します。

トランプ政権がICCの赤根所長に制裁

2026年8月、アメリカのトランプ政権が、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長に制裁を科しました。赤根氏は日本人で、2024年からICCの所長を務めています。

赤根 智子所長 出典: 法務省 法務総合研究所 国際協力部(原出典: 国際刑事裁判所)

アメリカの言い分では、アメリカやイスラエルといったICCに加盟していない国の関係者に対して、ICCが捜査や逮捕状発行を進めていることなどを問題視しています。

一方、ICC側は、そうしたアメリカの行動は、裁判所の独立した仕事を妨げるものだと反発しています。

では、そもそもICCとは、どのような機関なのでしょうか。

ICCは国際的な犯罪を犯した「個人」を裁く裁判所

ICCは「国際刑事裁判所」の略称です。戦争や大規模な人権侵害などが起きたとき、その責任を負う個人を裁くための国際的な裁判所です。本部はオランダのハーグにあります。

ICCの大きな特徴は、「国」ではなく「人」を裁くことです。対象となるのは、国際社会で特に重大と考えられている犯罪で、具体的には、ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する犯罪、戦争犯罪、そして侵略犯罪などです。

たとえば、戦争中に民間人を意図的に攻撃したり、特定の民族などを組織的に殺害したりした場合、その責任を負う個人がICCが裁く対象となることがあります。

オランダのハーグにある国際刑事裁判所 Hypergio – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0,

ただし、ICCは「世界中で起きた犯罪を何でも裁く裁判所」ではありません。基本的には、「ローマ規程」という条約に加盟している国で重大犯罪が起きた場合など、決められた条件の下で活動します。

また、まずは各国の裁判所が自分たちで捜査・裁判することが原則です。自国で本当に捜査や裁判ができない、あるいは行おうとしていない場合にICCが補完するという仕組みです。

ICCの設立を定めた「ローマ規程」は1998年に採択され、2002年7月1日に発効しました。これを受けてICCは2002年に正式に活動を始めました。つまり、第二次世界大戦後の歴史を考えると、比較的新しい国際裁判所です。日本は2007年にローマ規程に加入しています。

似ている名前のICJは「国と国」の争いを扱う裁判所

ここで、よく似た名前の「ICJ」との違いを知っておくことも大切です。ICJは「国際司法裁判所」で、国連の主要な司法機関です。こちらもオランダのハーグにありますが、ICCとは役割がまったく違います。

簡単にいえば、ICJは「国と国」の争いを扱う裁判所です。たとえば、国境や条約の解釈をめぐって国同士が争った場合、その問題を国際法に基づいて判断します。

つまり、「国と国の法律上の争い」を扱うのがICJ、「戦争犯罪などを行った個人の刑事責任」を問うのがICCです。名前は似ていますが、目的も裁判の相手も異なります。

ICCをめぐるアメリカとの対立は、国際社会にとって難しい問題を投げかけています。国際犯罪の責任を問う仕組みを強くする必要がある一方、国際裁判所がどこまでの権限を持つべきなのか、加盟していない国にどのように関わるのかという問題もあります。

ICCとアメリカの対立を理解することは、単なる一つの外交ニュースを理解することではありません。「国際社会で重大な犯罪を犯した人を、誰が、どのように裁くのか」という、国際社会のルールそのものを考えることにつながるのです。

この記事を書いたのは

国際政治先生 国際政治学者

国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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