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日本の公立校なのに、少人数で深い探究学習と論文・体験主体の教育
――吉田さんは、東京都立国際高校(目黒区駒場)で国際バカロレア(IB)に入られました。この高校を目指した理由は?
吉田さん 父が見つけてきたんです。当時私たち家族はアメリカのヒューストンにいて、私は公立の現地校の中学生でした。このままアメリカの高校に進むのかどうしようかと考えていたときに、父が、都立国際高校の説明会に行き、「ここはうちの娘の進学先にいい」と思ったようで、すすめられました。
都立国際高校のIBコースは少人数クラスで、講師と生徒の比率が1対3くらいの授業もあったりして、主体性を持って学習していけるとのこと。個人的にひかれたのは、授業が、深く思考したり実際に体験をしたりして論文を書くのが主体なこと。高校生の間から実験を自分でデザインして論文を書くコースもあって、すごいなぁと。
私はアメリカ在住でしたけれど、もちろん日本在住で常時英語を使っている子でなくても入学に挑戦できます。公立校だから安い。といいますか、都立国際高校では一般の都立高校と授業料が同じ、東京都の授業料無償化制度によりIBでも原則的に無償です(教科書代等、教材費はかかります)。学校独自の積立金はIBのほうが少し高いですが、全体的に見ても私立高校やインターナショナルスクールよりグンと費用が抑えられます。
アメリカの学校では実験をからめて論文を書くなんて、そこまでの体験をしたことがなかったから、いいな、挑戦したいなって思いました。大学は海外なのか日本のなのかとか、将来のことはあまり考えていなくて、とにかく高校での学びが魅力的で、受験することにしました。
IBの日本の学校はアメリカの現地校よりも魅力的だった
――アメリカの高校に行くつもりはなかったのですか?
吉田さん アメリカの現地校と聞くと、ユニークな教育をしていそうですが、ひとクラスの人数がそれなりに多く、定期テストがあってその点数でいろいろと決まったりするなど、アメリカの現地校は公立校だと日本の普通の公立とあまり変わりがないと感じていました。高校ではもっと少人数で探究型の教育が受けられるところがいいな、と思っていたんです。

父の仕事の関係で、それまで我が家は日本に数年いては海外、という暮らしだったんです。生まれたのは日本ですが、3歳のときにペルーに転勤になり4年半、その後日本に転勤になり、小学校1年から3年まで名古屋で過ごしました。小学校4年で東京に住むことになり、小6の途中からヒューストンに転勤、現地校の中学に入学していた、というわけなんです。
父がまた日本に帰ることは決まっていたので、もし私が都立国際高校に受かれば、私だけ一足先に日本に戻り、祖母の家から通い、あとから父母と妹が帰国する、という予定でした。

日本語で高校入学の検査は受けられた。小中学校なら授業も日本語OKのところも
――では、英語は堪能、だから都立国際高校のIBの学校を目指したわけですね。
吉田さん いえ、英語にはコンプレックスだらけでした。中学に上がるとき、ようやくアルファベットが読めるくらいでアメリカに行ったんです。ペルーで使っていたスペイン語もすっかり忘れていました。現地校に留学生として通う場合、英語があまり話せないとニューカマーセンターという、英語が堪能でない人が行くクラスで授業を受けるんです。半年に1回くらい試験があって、合格した子は普通のクラスに行ける。私は1年くらいかかりました。
でも、普通のクラスに移ってから、友達をうまくつくれなくて。英語に自信がなく、「英語ができない」って思われるのが怖かったんです。話しかけられないから閉じこもってしまい、家でアニメばかり見ていました。2年目くらいから徐々に友達ができて、英語でプレゼンできるくらいになりたいなと思って、ディベートクラブにあえて入ったくらいです。だから現地の子みたいにしゃべれなくても堂々としていられるくらいの感じにはなれました(笑)。

都立国際高校の入試(検査)は、英語運用能力検査、数学活用能力検査、小論文、個人面接となっていますけれど、英語運用能力検査以外は日本語でも英語でもOKなんです。私は英語だと細かいニュアンスなどがわからないかも、と思って、数学も小論文も個人面接も日本語で受けました。日本語で受けても英語で受けてもハンデはありません。
それに、以下のように、小学校や中学では日本語で学ぶこともできるのです。英語が不安でも挑戦可能な学校もあります。

IBは世界共通の教育プログラム。そのスコアで世界の大学に入学!
――そもそも、国際バカロレアの教育とはどんな教育なんですか?
吉田さん ジュネーブに本部を持つ国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムです。「世界の複雑さを理解して対処できる生徒を育成し、未来に向かって責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付ける」というのが目標で、世界中のIBの学校で共通で採用されているプログラムです。
日本では、幼稚園から高校(PYP~CP、図参照)まで190校以上がIB校として認定されていて、今後認定されていくであろう候補校も含めると273校くらいにのぼります。世界でいうと163の国と地域において約6,200校もあります(令和8年6月時点)。
この中のディプロマ プログラム(略してDP)を履修して所定の要件を満たすと、国際的に認められている大学入学資格である「IBディプロマ」を取得できます。つまり、DPを採用している高校で学んでスコアを得ると、国際バカロレア資格で入学できる大学であれば、日本であろうと海外であろうとその資格やスコアを利用して、国内外の大学に出願できる! そこが特徴だし、最大のメリットなんですよね。
私は3つの大学に合格して、今は早稲田大学の4年生なのですが、IBのスコアで入学したので、共通テストも受けませんでした。
日本の公立校で授業料の心配なしにIB教育を受けることもできる
――インターナショナルスクールとは違うんですか?
吉田さん まずIBの意味ですが、「世界中で通用するグローバルな教育プログラム」のことです。
一方でインターナショナルスクールは「学校の形・タイプ」を指します。
そのため、インターナショナルスクールであってもIBプログラムを導入していないところもたくさんあります。
一方で、日本の一条校(学校教育法第1条に規定されている学校。小学校、中学校、高等学校、大学など)でもIBのプログラムを採用している場合もあります。令和8年6月30日時点で、一条校でIBを採用している学校は95校あります。私立の学校だけでなく、公立の学校でも採用しているところがあり、私が通っていた都立国際高校はこれにあたります。
ちなみに、私の妹は国立の東京学芸大学附属の高校でIBの教育を受けていました。こちらも費用は抑えられています。
――探究型の学習が中心だと聞きますが。
吉田さん 日本の学校でも「探究学習」が取り入れられていますが、IBの場合はもっと深いというか、「平和な世界を築くことに貢献する若者を育成すること」 を目指し、「探究する人」 「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念をもつ人」「心を開く人」「思いやりのある人」 「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」の属性をすべて兼ね備えた人材教育を徹底しています。
「問いを立て、探究し、自分の言葉で伝える力」を徹底的に育てますし、ディスカッションが多く、レポートもたくさん書きます。英語もしっかりと学びますので、これからのAI時代、ボーダレスな時代には最適な学習だと私は思います。
都立国際高校への受験はドリルで独学だけ、塾は利用しなかった
――IBに入学するために、どんな勉強をしたのですか?
吉田さん 塾などには行かず、ドリルを取り寄せて独学で受験勉強をしました。よく言われることですが、数学は日本のほうがアメリカよりずっと進んでいるんです。だから、日本の数学のドリルをけっこうがんばってやりましたね。小論文については、こちらでは作文を日本語で書く機会がないから、やはり作文のドリルとか参考書で自分なりにやっていました。
当時、ヒューストンにハリケーンが来て、建てて間もない私たちの家は水没しちゃったんですよ。だから、家の修理を家族全員でやりながら、避難所で勉強をしていました。合格倍率は4~5倍、「こんな状態で受かるのかな」と心配でした。検査に合わせて私だけが帰国し、祖母の家から受けたのも少し緊張しました。だから、受かったときはうれしかったですね。

――思わぬアクシデントの中での勉強、受験。15歳だと考えると試練でした。ようやく受かってホッとしたと思います。後編は日本に戻ってからの高校生活、そして大学受験、大学生活について伺います。なんと名門大学に3校も受かったのだそうです! 国際バカロレアのすごさ、そして大変だったことなどをたっぷりお話いただきます。
後編はこちら
お話を聞いたのは
株式会社Linksenpai代表。南米のペルーやアメリカのヒューストンで暮らした経験があり、高校受験で日本に戻り、東京都立国際高等学校で国際バカロレア(IB)を履修。卒業後はトロント大学、北海道大学工学部、早稲田大学に合格。大学3年生のときに株式会社Linksenpaiを立ち上げてオンライン家庭教師塾を起業。現在はIB専門のオンライン学習塾「IBアカデミー」を運営。2027年3月に早稲田大学を卒業し、事業に専念する。23歳。
この記事を書いたのは
インタビューを中心に教育、子育て、医療、介護、食などのテーマで WEB・雑誌・書籍などの記事を執筆。お話を伺う方にたくさんの学びをいただいています。社会福祉士、法定成年後見人、中学校・高等学校教諭一種免許状、生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)