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少人数クラスで実験や体験中心に学び、課題論文を出して卒業
――吉田さんは東京都立国際高等学校国際バカロレアコースに入学し、IB教育を受けてきました。その教育は深い探究や体験、そして研究や論文と、とても色濃いものだったのですよね。
吉田さん 生物、物理、化学の理科3科目は探究学習で実験が週1回あるんです。テーマに対してどういう実験が必要でどういう器具が必要か、自分で考えてスタートするので、まるで研究者みたいなことを高校生のうちからできるんです。理系科目が好きな生徒には本当にうれしいんですよ。また、哲学の授業もあって、「1+1を2だと知識として認識しているのはなぜか」というような本当に根源的な問題をとことん考えます。日本の探究授業とは、その深さや時間のかけかたがぜんぜん違うかなと思います。
それに、日本の中学受験にしても大学受験にしても、与えられた宿題や課題、模試をこなすことがメインになりますが、自分が学び方を学ばないと、主体的に学べません。IBでは年齢を問わず、すべての児童生徒が、自己管理できる学習者になれるように仕向けています。ここも、AI時代を生き抜くこれからの若い世代は必要なことかなと思っています。
「一条校」のIBなら日本の高卒認定とIB卒業資格の両方を取得できる

吉田さん また、一条校(学校教育法第1条に定められている学校)のIBコースの場合、学習指導要領に沿った勉強とIBの勉強、両方をやるので、学習時間はぎっしり詰まっている感じではあります。そのかわり、一条校は日本の高卒認定とIB卒業資格の両方を取得できるのがメリットです。
IB教育には日本語ディプロマ プログラム(略してDP、主に高校で学ぶ)という授業が英語以外すべて日本語で行われる場合もあるので、英語が話せないと受けられないわけではありません。後に海外大学に行こうと思うなら英語力は必須だけれど、IBスコアで受けられる日本の大学もあるので、英語が苦手ならそういう進学のしかたもあります。現在、以下の大学などが国際バカロレアを活用した入試を実施している大学です(学部などは限定の場合が多い)。こういう大学を、共通テストも二次試験も受けずに合格できるのは、IBの強みだと思います。
【国立大学】東京大学、京都大学、筑波大学、東京外国語大学、大阪大学、等
【公立大学】国際教養大学、横浜市立大学
【私立大学】慶応義塾大学、上智大学、早稲田大学、等
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高校最後のIBの試験で上位成績で受かることが大学受験に最重要
――教育理念がすばらしいですね。では、その教育を受けていれば大学に受かるということでしょうか。
吉田さん そこは気をつけないといけないんです。IBのDPでは、最後に最終試験(Final Examination)という試験があるんです。この試験のスコアによって、受験できそうな大学の目安がつきます。DP教育の最終学年では、5月または11月のどちらかに1度、世界中のIB生がこの最終試験を受けます。45点満点の試験で世界平均の30点以上のスコアだと高スコアとされ、さまざまな大学の受験の可能性があります。大学入学後も、スコアがいいと取得単位を少し省略できたり、奨学金を受けられる対象になったりします。
逆に、24点を下回ってしまうとディプロマ取得ができません。人によっては浪人のような形で最終試験を再受験する人もいます。Final Examに向けてしっかり勉強することが、世界中の行きたい大学に行く最大のポイントかな、と思います。
トロント大学に受かったのに奨学金の手続きができずあきらめた……
――吉田さんは優秀な成績を修めて、IBでトロント大学、北海道大学工学部、早稲田大学に合格されました。トロント大学はTimes Higher Education(THE)世界大学ランキング2026で21位です。なぜ早稲田大学を選んだのでしょうか。
吉田さん 実は、IBの大学受験がよくわかっていなかったことが原因でした。トロント大学は授業料がものすごく高くて、受かっても通えないと思ったんです。本来は奨学金を申請し、奨学金をもらって行くのですが、その奨学金の申請手続きにとても時間がかかるんです。もっと早く申請の準備をしておけばよかったのですが、スケジュールの把握ができておらず、Final Examの勉強と奨学金の申請の時期が一緒になってしまい、勉強を優先したために、奨学金がもらえなかったんです。それで、合格したのに行けませんでした。

早稲田大学も、私の失態があったんです。早稲田大学の理工は3つの学部に分かれていて、私は創造理工学部に行きたかった。創造理工学部をIBで受けるには物理が必須ですが、私は物理にちょっと自信がなくて授業自体を簡単なほうを選んでいたんですね。難易度が2種類あったんです。でも、創造理工学部は難しいほうの授業を選んでFinal Examに臨むことが条件でした。それを確認していなくて、受けたものの、条件を満たしていないということで落ちてしまいました
――細かい決まりがいろいろとあるのですね。
吉田さん そうなんです。そうしたきまりやスケジュールをしっかり把握して受験しないと、私のようなことが起こります。結局、最終的には北海道大学をIBスコアで受験して合格、最初は北大に行き、もう一度早稲田の基幹理工学部を受験し直して合格、東京に戻りました。
北大も旧帝大ですばらしい大学ですが、私は大学生のうちに起業したかったんです。起業するなら、東京を拠点にしたほうがいいと思いました。早稲田は学生起業家を応援する風土があります。私は大学生のビジネスコンテストで優勝したので、早稲田の先輩たちにさまざまな場面でサポートをしてもらい、起業するに至ったんです。

煩雑なIBの受験ルールや学びの充実をサポートする家庭教師塾を起業
――どのような分野で起業したのですか?
吉田さん IBを含め、日本人の子どもたちが世界で活躍することを応援したいと思っています。そこで、Linksenpaiという会社を立ちあげ、小学生から高校生向けのグローバル教育に特化したオンライン家庭教師塾を開きました。
私はIBの仕組みをよくわかっていなかったことで、大学受験がうまくいかなかった。自分のその経験を踏まえて、IBの仕組みをしっかり伝え、年代に応じた学習のサポートや、大学受験のサポートに特化した国際バカロレア専門家庭教師、「IBアカデミー」に力を入れています。
IB自体、とってもすばらしい教育です。IBを活用することで、大学進学の選択肢が広がる場合もあります。アイビーリーグだって挑戦できるし、国内大学だって共通テストを受けずに合格できる。もしIBスコアでうまくいかなくても、一般の学校推薦型選抜にIBスコアを強みにして出願し、合格を狙うこともできます。
我々、経験者だからこそのサポートで、IB生はもっと羽ばたけます。

――それにしても吉田さんはタフですね。失敗を生かして起業し、たくさんの仲間とIBを通じて社会貢献しようとしています。
吉田さん IBでは、人格形成もしてくれます。世界平和に向けて貢献する人たちを育てる教育ですから。Risk Taker、Open Mind。自分の事業で営業をするときも、1回くらい断られてもひるみません。最初は断られるのが当たり前、いかに最初のNOをYESにするかにワクワクします。
自分なりに考えて持ち帰り、仲間と相談します。うちの会社にはIBで学んだ仲間がたくさんいます。彼らとは深い絆で結ばれていますし、みんながタフです。社外にもグローバルコネクションがあります。仲間と模索しながら前に前に進んでいく。それがIB出身者らしさかな、と思います。
これからの時代は、指示待ち人間はAIが代替していきます。自分で考えて自分の人生をどうしたいのか 世界のため社会のために何ができるかっていう視座が、AI時代には相性がいいです。そんな時代を作っていくために、幼い世代の人たちにも、ぜひIB教育に触れてほしいと思いますね。
――「英語を学ぶ」のではなくて、「英語で学ぶ」、世界を視野に活躍する。まさに吉田さん自身の有り様を映しています。国際バカロレアの教育、今後も注視していきたいですね。
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お話を聞いたのは
株式会社Linksenpai代表。南米のペルーやアメリカのヒューストンで暮らした経験があり、高校受験で日本に戻り、東京都立国際高等学校で国際バカロレア(IB)を履修。卒業後はトロント大学、北海道大学工学部、早稲田大学に合格。大学3年生のときに株式会社Linksenpaiを立ち上げてオンライン家庭教師塾を起業。現在はIB専門のオンライン学習塾「IBアカデミー」を運営。2027年3月に早稲田大学を卒業し、事業に専念する。23歳。
この記事を書いたのは
インタビューを中心に教育、子育て、医療、介護、食などのテーマで WEB・雑誌・書籍などの記事を執筆。お話を伺う方にたくさんの学びをいただいています。社会福祉士、法定成年後見人、中学校・高等学校教諭一種免許状、生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)