英語習得には0~9歳の時期を逃さないで!坪谷ニュウエル郁子さんが語る「国際バカロレア」と英語教育の違いって ?

国際バカロレアには、英語教育というイメージの方も多いのでは。でも、実は英語の習得が目的のプログラムではないんです!国際バカロレアには、グローバルな時代を生き抜くために必要なスキルを身につける仕組みがたっぷり。そこで、国際バカロレア日本大使の坪谷ニュウエル郁子さんに、英語教育との違いと国際バカロレアについて、お話を伺いました。

国際バカロレアの教育を受ければ、英語が話せるようになるの?

今回は、東京インターナショナルスクール理事長で、国際バカロレア日本大使でもある坪谷ニュウエル郁子さんにお話を伺いました。やっぱり最も気になるのは、国際バカロレアの教育を受ければ、英語が話せるようになるのか、ということです。

―HugKum編集部 国際バカロレアの教育を受けると、英語を話せるようになるのでしょうか?

国際バカロレアと英語教育は全く別物

坪谷さん:英語が話せるようになる”魔法の粉”なんてないんです。大学や保護者の方も含めてですが、「国際バカロレア=英語ペラペラ」「英語ペラペラ=すごい、グローバル人材だ」みたいなイメージが主流になってしまっているんです。

確かに、英語が公用語の一つではありますが、英語をペラペラにするためのプログラムではありません。

英語の習得を目指すなら、0〜9歳くらいまでの時期を逃さないで

子どもの英語教育では、どんなことを意識したらよいのでしょうか。最も重要なポイントを3つ伺いました。

―HugKum編集部 では、まず英語教育についての考えを聞かせていただけますか?

【ポイント①】「神様の時期」を意識して

坪谷さん私は0〜9歳くらいまでの時期を「神様の時期」と呼んでいます。

その時期の子は、音を聞いた時に、なんの理論づけもなく、そのまま吸収して発音するということができます。いろんな発音を聞くことはもちろん、その時期を超えて臨界期が終わる(12歳程度)まで継続すると、それが知識となって定着するんですよ。

【ポイント②】日常会話レベルになるまでには、3000時間弱必要

坪谷さん:ただ日常会話レベルになるまでには、3000時間弱必要なのです。毎日毎日休まず、一日1時間英語に触れたとしても8年程度はかかります。こちらの表を見てください。

坪谷ニュウエルさんは「第二外国語の習得は、その言語と自分の母語がどれくらい似ているかとにって習得までの時間が変わります。その観点では、日本語と英語は本当に遠い言語なんですよね」と語ります。
坪谷さんは「外国語の習得は、その言語と自分の母語がどれくらい似ているかとにって習得までの時間が変わります。その観点では、日本語と英語は本当に遠い言語なんですよね」と語ります。

【ポイント③】明確なゴールの設定と時間の着実な積み重ねが必要

坪谷さん日本人が英語を話せないのは、「文法から学ぶからだ」「先生が英語を話せないからだ」などと世間ではいわれています。

でも一番は、英語に触れている時間が短いということ。日本の学校教育の場合は、小学校から始めたとしても1000時間程度しかないんです。

逆に、きちんと時間をかければ、ほとんどの人は聞いて話せるようになります。「何歳までにどのレベルまで獲得させたいのか」のゴールを決め、「1年間にどれくらい学習が必要か」を計算してやるといいと思います。

国際バカロレア(IB)ではどんな学びをするの?

では、坪谷さんが日本大使を務める国際バカロレアとは何なのでしょうか?この教育プログラムについて坪谷さんに伺いました。

国際バカロレアとは

国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)とは、国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムのこと。多様な文化を理解・尊重する心を育み、探究心や知識、思いやりを持った若者を育成しようというプログラムです。

テーマの中にトピックや問いがあり、どうやって自分たちなりの答えを見つけるのか、どうやってそれを人々に伝えるのかといったことを学びます。
テーマの中にトピックや問いがあり、どうやって自分たちなりの答えを見つけるのか、どうやってそれを人々に伝えるのかといったことを学びます。

現在では、国際バカロレアは世界159カ国・地域において約5600校の学校で導入されています。日本でも、認定校を増やす閣議決定がされ話題になっていた国際バカロレア。現在では、国内に207校の認定校・候補校があります(令和5年3月31日時点)。

参考:文部科学省

―HugKum編集部 では、次に国際バカロレアの教育の目的について教えてください。

国際バカロレアは、教育の語源とも言われる「引き出す」教育

坪谷さん:子ども達みんなが持っている素晴らしいものを発見して、それを引き出し花を開かせるのが教育っていう言葉の語源。100人いれば100通りの素晴らしいものを引き出していける教育がしたいと思っています。

だからこそ、自分で選択するということがとっても大切。誰かに言われてやるのだと、失敗した時やうまく行かなかった時に、人や社会のせいにしてしまう。

自分で選ぶには、自分の軸があることや、選ぶための考え方を身に着けることが重要で、国際バカロレアの教育では、自分がどの窓口からより社会を良く平和にしていきたいかを選択できる生徒が育っていくように思います。

―HugKum編集部 ご自身も2人の子育てを経験している坪谷さん。親としての立場でも、子育てで大事なことを教えてもらえますか。

坪谷さんよく先回りして手伝ったりしてしまっていたんですが、大きくなった娘に「失敗して学んでいくんだから、もっと失敗の経験をさせてほしかった」と言われて。なので、失敗しそうだなと思っても、あえて口出ししないこと。子どもは失敗を繰り返しながら学んでいくのです。

子どもはだんだん自分で選択もでき、自分で責任を追っていく力もついていきます。なので、子どもを信じる力をもっと強く持っていたかったですね。

―HugKum編集部 教育者として、親として、たくさんのお話をありがとうございました。

英語のスキルだけではなく、グローバル・スキルも必要

坪谷さんがインタビュー中、「幼少期は、自分の軸、考え方の軸を作る上で重要な時期。小さいうちから多様性に触れさせることが大事だと思っています。例えば、小学校で自分の家から近い公立校に通っても、経済的・社会的属性の多様性などからたくさんのことが学べます。人生において、外国語の習得よりも、はるかに重要なことだと私は思っています」というお話をされていたのも印象的でした。

この言葉を聞いて、これからの子育ては英語のスキルだけではなく、世界で活躍できるグローバルな人間へ育てることが大事だと感じました。

お話を伺ったのは…

坪谷・ニュウエル・郁子|東京インターナショナルスクール理事長
神奈川県茅ケ崎市出身。イリノイ州立西イリノイ大学修了、早稲田大学卒、東京大学公共政策大学院修士課程修了。
1994年東京インターナショナルスクールを設立。理事長に就任。同校は国際バカロレアの認定校。
その経験が評価され、2012年、国際バカロレア(IB) 日本大使に就任。文部科学省とともに、教育の国際化の切り札となる国際バカロレアの普及に取り組んでいる。
取材・文/吉田萌美

編集部おすすめ

関連記事