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オンラインには危険がいっぱい! 小学生も狙われるグルーミングの手口とは?
――子どものネット上の性被害というと、中高生の問題というイメージがありますが…。
永守さん いえ、小学生でもネット上の性犯罪に巻き込まれる危険性がないとは言えません。特定非営利活動法人チャイルド・ファンド・ジャパンが2024年に15~24歳を対象に行ったグルーミングに関する調査で、知らない人からチャットをもらった経験や、その時期について尋ねています。15~17歳の層で「経験がある」と回答した人のうち、その時期が小学校高学年だった人は、男女ともに17%超えというデータがあります。
もちろん、チャットが届いただけで即、被害が発生するわけではありません。でもネット上で見知らぬ人から接触を試みられた経験がある小学生がすでに一定数存在するというデータは看過できないと思います。
――どのような経緯で小学生が見知らぬ人と親しくなり、性犯罪へと発展してしまうおそれがあるのでしょうか?
永守さん 最初から性的なことを言ってくるとは限らないんです。むしろ、共通の趣味とか、好きなゲーム、好きなアーティストなど、子どもが興味を持っているところから入ってくることがあります。「私もそれ好きだよ」と話を合わせたり、同年代の子どもや少し年上の先輩のように振る舞ったりして、少しずつ距離を縮めていくんですね。
例えば、中学校に進学することに不安を感じている子に対して、「自分も中学生だから大丈夫だよ」と、先輩を装って近づくようなことも考えられます。こうやって信頼関係を作っていくのが、いわゆる「グルーミング」と呼ばれる手口です。
男子を狙った性的脅迫も。「画像を送って」「ビデオ通話しよう」は要注意!
――信頼関係を作ったあと、どのように被害につながっていくのでしょうか?
永守さん いろいろなパターンがありますが、例えば、女児を相手に同性の同級生を装って、「私の胸の形、なんか変じゃないかな」などと悩み相談のていでネットで拾ってきた画像を送りつけ、「自分も送ったんだから、あなたも見せて」と要求したというケースが実際にありました。その時点で、もうかなり親密になっているので、「送ってくれないなら、もう話さない」などと迫られると、「関係性を壊したくないし、相手は同性の友だちだし」と正常な判断ができなくなっても不思議ではありません。

――女の子だけでなく、男の子も被害に遭うことはありますか?
永守さん はい。小学校5年生の男の子で、若い女性とのビデオ通話で性的好奇心をあおられて誘いにのってしまい、自慰のビデオ映像を撮られたケースがありました。画像や動画が悪意のある人間の手に渡ってしまうと、拡散されたり脅迫されたりするおそれもあるので、相手の要求に応じて画像を送ったり、見知らぬ相手とビデオ通話したりするのは非常に危険です。
――知らない人なのに、子どもがそこまで信頼してしまうのはなぜなのでしょうか?
永守さん SNSは、子どもにとって悩みや不満を吐き出せる場所にもなっていますよね。例えば「親と喧嘩した」「学校でハブられてつらい」といったことを書いている子に、「大丈夫?」「話を聞くよ」「自分も同じ経験をしたことがあるよ」と近づいてくる。そうすると、「この人ならわかってくれる」と思ってしまうことがあります。
もちろん、ネットがリアルのガス抜きの役割を果たしていること自体は悪いことではないですし、親が子どもの書き込みを全て管理することはできません。だからこそ、単に「自分の悩みは書いちゃだめ」と禁止するのではなく、「こういうことを書いたときに、悪い人が利用する場合があるんだよ」と伝えておくことが大切だと思います。
親子で最低限、約束しておきたいのは、“見知らぬ人から何かを要求されたら即、親に相談すること”。「写真を送って」「電話しよう」「ビデオ通話しよう」「会おう」など要求があったり、「どこに住んでいるの?」「学校はどこ?」など個人情報を探られたりした場合には、行動を起こす前に必ず親に相談するように伝えましょう。
SNSだけじゃない! 学習アプリが被害の入り口に!?
――SNS以外にも、子どもがよく使うオンラインサービスから被害につながる可能性はあるのでしょうか?
永守さん あります。例えば、オンラインゲームでは、初心者の子にゲームのアドバイスをしたり、アイテムをあげたりして、信頼を得る。そして、「これだけしてあげたんだから」と子どもに心理的な負い目を感じさせてグルーミングの手段にする事例があります。
あとは、学習アプリでも安心できません。アプリの中だけでは簡単なやり取りしかできないけれど、「もっと話したいからLINEで話そう」と外部のサービスに誘導されるケースなどが報告されています。

――まさか学習アプリがそんなふうに悪用されるとは盲点ですね。
永守さん そうなんです。基本的に知らない人と通信・コミュニケーションできる機能がある限り、そのアプリやサービスがどんなに健全なものであっても、危険性はゼロではないという点はぜひ押さえておいてほしいです。
親切を装った「プリ代行」で友だちとの写真が悪用される可能性
――ほかに、親が見落としやすいものはありますか?
永守さん 「プリ代行」などは、大人が危険性に気づきにくいもののひとつかもしれません。運営会社は禁止している行為ですが、プリントシール機の有料会員が無料会員に代わって、撮影した写真のデータをダウンロードすることです。
――「プリ代行」から、どのような手口に?
永守さん プリントシール機のシールIDを専用のアプリに入力すると、無料会員の場合、スマートフォンに画像データを1枚だけダウンロードできるのですが、有料会員は枚数の制限がないため「シールIDを教えてくれたら代わりにダウンロードしてあげます」というサービスを謳って、画像データを取得する手口があるのです。しかも、「本当にあなたの画像か確認したいから、自撮りを送って」と要求するようなケースもあります。
さらに注意したいのが、そうした「プリ代行」のサイトやアカウントが、いかにも怪しい雰囲気とは限らないことです。女の子向けの雑誌の表紙のような、かわいらしい色づかいで女の子が運営しているように見せたり、「すぐに対応してもらいました、ありがとうございます」といった利用者の声を載せていたりするケースもあります。
――一見すると、普通のサービスのように見えてしまうんですね。
永守さん 大人をだます詐欺と似たような手口で、「安心して利用できそう」と思わせるように作られているので、子どもは余計に引っかかりやすいんじゃないかなと思います。
たとえ性的な画像ではなくても、自分や友だちが写っている画像を他人に安易に提供するのは非常に危険です。どのように悪用されるかわかりませんし、最近では、ディープフェイクの技術が高度化しているので、顔写真から性的画像が作られて、それが出回ってしまうおそれもあります。そもそも「プリ代行」自体がルール違反であるということは、お子さんにしっかりと伝えてほしいです。
親がSNSに投稿した子どもの「何気ない動画」が悪用されることも
――ディープフェイクの素材にされるという点では、親のSNS投稿も注意が必要なのでしょうか?

永守さん 各家庭の方針があると思いますが、「親目線では他愛ない写真でも他人からはどう見られるかわからない」ということは、知っておいてほしいです。
以前、私がネット上をパトロールしていた際、ごく普通の保護者の方がInstagramに投稿していた子どもの動画が、ポルノ画像のコミュニティで共有されているのを見付けたことがあります。その動画とは、子どもが公園で鉄棒で逆上がりの練習をしているのを撮影したもの。一瞬、下着が見えるか見えないかという場面があり、それが“お宝動画”として、マニアの間で出回ってしまっていたのです。
また、身近な人にだけ共有するつもりの非公開のアカウントであっても、フォロワーの誰かが別の人に見せたり、画像を保存したりする可能性も否めません。一度、他人の手に渡った画像を完全にコントロールすることは難しいので、やはり子どもの写真の投稿は慎重に慎重を期す必要があると思います。
フィルタリングは万能じゃない! 子どもをデジタル犯罪から守るために親ができることは?
――子どもを狙ったデジタル犯罪から子どもを守るために、保護者がまずやるべきことは何でしょうか?
永守さん 多くの家庭では、子どもにスマホを持たせるタイミングでルールを決めたり、フィルタリングをかけたり何らかの対策をとっていることでしょう。ただ、慎重なのは最初だけで、その後のアップデートが十分に行われていない傾向にあるのが気になります。フィルタリングはたしかに必須ですが、それだけでは万全ではありません。スマートフォンやアプリは日々変化しますし、先ほどの学習アプリのように抜け道はいくらでもあります。
フィルタリングは、車通りの少ないところで自転車を練習させるようなもの。でも車通りが少ない場所だからといって、いきなり補助輪なしで子どもを自転車に乗らせることはしませんよね。最初は補助輪をつけたり、親が後ろを持ったりして、子どもがひとりで安全に乗れるようになるまでに、様々なサポートをすると思います。
子どものスマホ利用もそれと同じです。子どもが成長して信頼できるようになるまでは、最低でも年に1回は使い方や家庭のルールを見直してほしいです。ルールやフィルタリングの設定を最初だけでおしまいにするのではなく、その子の発達や状況に合わせて更新していくことが大切です。

――子どものスマホについて、親はどこまでチェックすればいいのでしょうか?
永守さん これは一律に「全部親が見るべき」とも「絶対に見てはいけない」とも言えません。子ども同士のやり取りやチャットをどこまで見るかは、それぞれの家庭や子どもの状況によって違います。ただ、最低限、子どもがどんなアプリを使っているのかは把握しておいたほうがいいと思います。
また、デジタル機器を使ううえでの基本的なルールとして、“見知らぬ人から何かを要求されたら即、親に相談すること”に加えて、個人情報を投稿しないこと、友だちが写っている写真や動画を勝手に投稿しないこと、友だちの顔が写っているなら、スタンプなどで隠すことという点は徹底するように伝えてほしいです。
なんでも相談できる親子関係が理想だけど…いざというときに心強い「プランBの大人」
――子どもとの普段のコミュニケーションについて、保護者に伝えたいことはありますか?
永守さん まず、デジタル犯罪に限らず、学校での人間関係のトラブルにも通じますが、子どもには「何かあったらすぐ相談してね」ということを、繰り返し伝えてほしいです。こうした基本的なルールは、一回伝えただけでは子どもに染みわたりません。日々の生活のなかで何度も何度も伝えて、「いざというときには親は自分の味方をしてくれる」という安心感を醸成することが大切です。
ただ、私自身もそうでしたが、子どもの頃に何でも親に相談できたかというと、なかなか難しいですよね。なので、私は「プランBの大人をつないでおく」ということも大切だと思っています。親がプランA、第1選択肢だとしたら、親には言いづらいときに相談できる親戚のおじさん、おばさん、いとこのお兄さん、お姉さん、習い事の先生などです。
「親には言えないけど、この人なら話せる」という大人がいると、子どもがひとりで悩みを抱え込まず、相談できる選択肢が広がります。そういう大人とのつながりを作ってあげることも、親の重要な役割なのではないかなと思います。

性被害のニュースを見たときに親が子どもにかけるべき言葉とは?
――普段の家庭で、ほかに意識しておいたほうがいいことはありますか?
永守さん 性暴力のニュースなどを見たときの親の反応も大切だと思います。ニュースを見て、「こんな格好をしているから」「そんなところに行くから」と、被害に遭った側を責めるようなことを言ってしまう人もいますよね。
でも、それを子どもが聞いていると、「もし被害に遭ったら自分が悪いと言われるかもしれない」と思って、相談できなくなってしまう可能性があります。だから、そういうニュースを見たときには、むしろ「こういうことをする人が悪いよね」「もしあなたの周りでこういうことがあったらすぐに相談してね」と伝えてほしいです。性暴力が報じられるのは非常に残念なことですが、せめて親子でそうした問題について話し合うきっかけにしていただければと思います。
――性の話題はセンシティブなので、大事なことなのに家庭で切り出すのはハードルが高いのが実情です。性被害のニュースがあったとき以外に、何かよいきっかけやタイミングはありますか?
永守さん 私は、学校で性教育やリテラシー教育があったタイミングを、家庭で話すきっかけにするといいと思います。子どもが学校から帰ってきたら、「今日、そういう授業があったんでしょ? 昔はそんな授業なかったから、何を習ったのか教えて」と聞いてみるんです。
そうすると、子どもにとっては学校で習ったことをもう一度振り返ることになりますし、親に話すことで知識も定着しやすくなります。それに、親自身も「今は学校でこんなことを教えているんだ」と、新しい知識を得ることができますよね。親も一緒にアップデートしていけばいいと思います。
――「親が教える」だけではなく、「子どもに教えてもらう」というスタンスなんですね。
永守さん そうですね。何か特別に時間を作って、「さあ、性教育について話しましょう」と改まる必要はないと思います。「今日、学校で何を習ったの?」と聞いてみる。そこから「それってどういうこと?」「もし困ったことがあったら言ってね」と話を広げていけばいいんです。そうやって、性について普段から話せる関係を作っておくことが、いざというときに子どもが相談しやすい環境にもつながると思います。
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お話をうかがって、デジタル犯罪から子どもを守るために必要なのは、「危ないからスマホを持たせない」といった単純な対策だけではないのだと感じました。
子どもたちを取り巻くデジタル環境は、これからも変化していきます。だからこそ、完璧なルールを最初から作ろうとするのではなく、子どもと一緒に学びながら、その時々に合った守り方を考えていくことが、いちばんの備えなのかもしれません。
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お話を聞いたのは
ネットパトロールボランティア団体「ひいらぎネット」代表。1989年東京都生まれ。二児の母。2020年よりインターネット上のデジタル性暴力や盗撮などの被害画像・動画の通報・削除要請活動をボランティアで開始。現在は団体代表として活動する傍ら、自治体のセミナー講師などを務め、子どもをデジタル性暴力から守るための啓発活動を精力的に行っている。NHKの調査報道に協力し、放送文化基金賞 調査報道賞を受賞。
この記事を書いたのは
成人までの人生を受験勉強にささげた結果、東京大学文学部卒業。その後なぜか弁護士になりたくて司法試験に挑戦するも、合格に至らないまま撤退。紆余曲折の末、2010年よりフリーライターの看板を掲げています。