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オンラインゲームやSNSを通じて子どもたちに近づく「性的グルーミング」の手口とは?
ーーニュースなどで「性的グルーミング」という言葉を耳にすることも多いです。これはどのような行為を指すのでしょうか?
櫻井先生 性的グルーミングとは、子どもをわいせつ目的で手なずける行為です。SNSやオンラインゲーム、オープンチャットなど、子どもが日常的に利用する場所がきっかけになるケースも少なくありません。
ーー性的グルーミングはどのような手口で行われるのでしょうか。
櫻井先生 海外の研究によると、性的グルーミングのパターンは5段階といわれています。まずは「①被害者を見つけ出す」、そして「②孤立させる」ことです。つまり加害者はターゲットとなる子どもを見つけ、自分と2人だけの世界に持ち込みます。
それから「③信頼関係を築く」「④性的な内容を入れ込み、子どもを慣れさせる」。そして最後に「⑤被害の開示を防ぐ(口止めする)」という要素が入っていることがわかっています。この5つの要素は段階が前後したり、繰り返されたりすることもあります。

ーー子どもに警戒されないように近づいてくるのですね。
櫻井先生 そうですね。加害者は最初から性的な内容や暴力的な内容を送りつけてくるわけではなく、オープンチャットやオンラインゲームなどを通じて共通の話題を見つけ、「話しやすい」「優しい」と思わせながら距離を縮めていきます。その後、オープンな場から個別のメッセージやLINEなど、2人だけのやりとりに移行し、信頼関係を深めながら徐々に性的な内容に踏み込んでいきます。加害者は年齢や性別を偽っていることもあります。
ーー加害者はどのように標的となる子どもを探し出しているのでしょうか?
櫻井先生 一人の子どもを標的にして関係を深めるように思われがちですが、そういうわけではありません。加害者は特定の子どもだけを狙うのではなく、いろいろな子どもにメッセージを送って接触し、その中で反応(返信)した子どもとの関係を深めていくというパターンが多いといえます。

性的グルーミングから子どもを守るために、SNSの使い方を家庭でどう教える?
ーーSNSを通じて犯罪被害に遭う小学生が増えています。どのような背景があるのでしょうか。
櫻井先生 やはりスマホの利用年齢が下がっていることが大きいです。中学受験を機にスマホを持ち始める子が多いですが、危険を見分ける力はまだ十分ではないといえるでしょう。
子どもは優しくされたり褒められたりすると、相手を信頼してしまう傾向があります。メッセージや画像のやりとりを軽いものと捉えてしまい、「これくらいなら大丈夫」と考えてしまうこともあります。性的グルーミングとは異なる問題にはなりますが、子どもの方から性的な画像を売るという事件もあります。

ーー先ほど、性的グルーミングは加害者からのメッセージに子どもがリプライすることから関係が始まってしまうケースがあると伺いました。SNSでのやりとりについて、子どもにどのように教えるのがよいでしょうか。
櫻井先生 性的グルーミングの加害者は、「すごいね」「かわいいね」など子どもが言ってほしい言葉をかけることが多いです。でも、それ自体は一般的なコミュニケーションとしてもあることなので、見分けるのが難しいです。子どもに「優しく接してくる人は危ない」と教えるわけにもいかないと思います。
ただ、性的な内容がメッセージに入ってくるというのは、普通のことではないので、その段階ですぐにストップをかけることが一番大切です。
ーー家庭でSNSやスマホの使い方のルールを決めた方がよいでしょうか?
櫻井先生 もちろんです。小学生まではスマホを使う場所や時間などルールを決めておくことと、ペアレンタルコントロールを設定することは必須でしょう。
わが子が性的グルーミングされていると気づいたら…親はどんな対応をすればよい?
ーーもし、わが子が性的グルーミングされているかもしれないと気づいたときにはどのような対応をすればよいでしょうか?
櫻井先生 見知らぬ人に要求されて、自分の性的な画像を送ってしまったなどということであれば、すぐに警察に相談するのがよいでしょう。先ほどもお話したように、性的グルーミングには色々な段階があります。性的な内容をやりとりしていなかったとしても、「今度会おうよ」のようなメッセージがあるようなら、連絡を絶つ方向に進めていく方がよいと思います。その時点では犯罪とはいえなくても、子どもが見ず知らずの人と会うこと自体が危険だと考えた方がよいです。
万が一、性的な被害を受けた場合はメッセージのやりとりなどの証拠を消さず、すぐに事件の管轄の警察暑もしくは性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、児童相談所などに相談してください。
ーー子ども自身が相手のことを信じきってしまっている場合などは対応が難しくなりそうです。
櫻井先生 実は私もそこが事件に携わる中で難しいと感じる部分です。中には被疑者が逮捕されたにも関わらず、子どもが相手のことを信じているというケースもあるほどです。しかし、性的グルーミングは詐欺のようなもので、相手が子どものことを大切に思っているわけではありません。ですから、親御さんが誠実な思いを持って長い目で子どもと向き合っていくことで、その気持ちは通じていくと思います。
ーー子どもの話を聞く上でどのようなことに気をつければよいですか?
櫻井先生 責めないこと、怒らないことが大事です。「写真を送ってしまった」「騙された」という場合も、「なんでそんなことをしたの!?」と問い詰めるのはNGです。海外の研究でも、「ネットの性被害に遭う子と、遭わない子の唯一の違いはオンラインにつながっているかどうかだけ」といわれています。つまりネットにつながっていれば誰でも被害に遭う可能性があるのです。
それに、性的グルーミングの被害は後になって重大な話が出てくることもよくあります。親御さんがはじめに怒ってしまうと、子どもがそれ以上話せなくなってしまいます。まずは「教えてくれてありがとう」「一緒に考えよう」と受け止めていただきたいです。

「何かあったときに相談できる大人」を親以外に見つけておくことも大事
ーー普段から、親に相談しやすい環境をつくることも大切ですね。
櫻井先生 SNSでトラブルに遭ってしまう子どもの中には「家庭にいるのがつらい」「友達関係がうまくいってない」「学校がつまらない」という思いを抱えている子が一定数います。スマホやSNSのルールを決めることも必要ですが、子どもの心に何が起きていたのかを振り返ってみるのも大切だと思います。
オンラインの世界は、リアルの関係性が鍵を握っているといってもよいでしょう。何かあったとき、すぐに親に相談できる関係性をつくることに加え、親以外にも先生や親戚など相談しやすい大人の存在があると心強いです。
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お話を伺ったのは
公認心理師、臨床心理士
警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室、神奈川県警察本部警務部警務課被害者支援室及び生活安全部少年育成課少年相談・保護センターで常勤の心理職員として21年間勤務し、非行少年、犯罪被害者等への支援に従事した後、現職。
現在は、(公社)神奈川被害者支援センターの専門委員(心理)及び登録カウンセラーとして犯罪被害者等支援に携わり、横浜市学校課題解決支援事業専門家及び横浜思春期問題研究所副所長として思春期の問題に携わっている。また、性的虐待、性暴力などによる犯罪被害者等の心理鑑定、トラウマ研究に携わる。
日本トラウマティック・ストレス学会理事、法務省・こども家庭庁・警察庁の有識者委員。
著書に、『「だれにも言っちゃだめだよ」に従ってしまう子どもたち たくみに手なずける「ずるい言葉」』(WAVE出版)。共編著書に、『SNSと性被害 理解と効果的な支援のために』(誠信書房)、『性暴力被害者への支援 臨床実践の現場から』(誠信書房)がある。
この記事を書いたのは
音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。