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小学生で起業した、その後。中学2年生の頃に訪れた親子のつらい時期
――元素カルタをはじめ、様々なプロジェクトや会社の設立まで、本当に二人三脚ですよね。親子というより、親友のような雰囲気も感じます。
ポラムさん:たぶん、似ている部分が多いんだと思います。上のお兄ちゃんはレウォンとはまったく違うタイプで、同じ親子でも関係性は少し異なります。
レウォンとは、似ているからこそ、阿吽の呼吸が当たり前になっている部分があって。だから気持ちがずれると、「なんでわからないの?」となることもあります。そうなったときは、とことん話します。でも、二人一緒に気分が落ちてしまうと、もう最悪です(笑)。
――ここまで順調に歩んでこられたように見えますが、大きなピンチもあったのでしょうか?
レウォンさん:中学2年生の頃、いろいろなことが重なり、二人とも一気に動けなくなった時期がありました。活動する環境や周りの人との関係が大きく変わり、気持ちを整理できないまま、時間だけが進んでいくような感覚でした。僕自身も、少し走りすぎていたのかもしれません。
ポラムさん:私たちのことをずっと支え、会社の取締役も務めてくださっていた恩師である福岡大学の阿比留先生が亡くなられたことも、大きなできごとでした。何かひとつが原因というより、いくつもの戸惑いが重なっていったのだと思います。

――親子関係にも変化がありましたか?
レウォンさん:今の自分たちからは想像できないほど、かなり悪くなりました。活動もできないし、「もう終わった」と思っていました。
ポラムさん:一緒にいる時間が長い分、距離を置くこともできませんでした。二人とも、心も体も動かないような状態で、決まっていた講演や大きな仕事も、次々にキャンセルすることになり…。周囲の方にも、たくさん迷惑をかけてしまいました。
――その状況を変えるために、まずどのような行動をとったのでしょうか?
ポラムさん:時間がたてば自然に解決するような状態ではなかったので、まずはこれまでの環境から離れようと考えました。ちょうど福岡県糸島市にご縁があり、「療養も兼ねて来たら」と声をかけていただいたんです。
東京を離れて糸島へ。できることから始めた半年間
――糸島では、どのように過ごしていたのでしょうか?
ポラムさん:「しばらくいて、何かできそうなことがあれば一緒にやればいいよ」と言っていただいて。それなら今は、その言葉に思い切って甘えようと思いました。
最初から「糸島で何かをしよう」と決めていたわけではありません。まずは今までの環境から離れて、二人で過ごす。それが目的でした。
――何もするつもりがなかったところから、再び動き始めるきっかけはあったのでしょうか?
レウォンさん:最初は本当に、何かをするつもりはなかったんです。でも、現地でまちづくりに取り組んでいる方たちを見ているうちに、「まちづくりって、何をやっているんだろう」と気になり始めました。
お話を聞いて、資料をいただいて。まずは自分たちが理解するために徹底的に読み込んでみました。それを、polarewonのプレゼンテーションにまとめてみることにしたんです。

――プレゼンテーションは、それまでの活動でも作っていたのですか?
レウォンさん:最初に作ったのは、元素カルタのクラウドファンディングを始めるときです。5,000円ほどするカルタを手に取ってもらうのは難しい。どんなカルタなのか、なぜ作ったのか、カルタに詰まった価値や想いをきちんと伝えようと、プレゼンテーションを作りました。
聞いてくださった方が「わかりやすかった」と言ってくれて、興味を持ってもらって、カルタも買ってもらえて。「伝わるってうれしいな」と思いました。ちょうどその頃、小中学生のプレゼンテーション大会があると聞いて、「じゃあ、やってみようか」と参加しました。
ポラムさん:「漢字mission」で「スタートアップJr.アワード2020」の小学生部門大賞を受賞して、「プレゼンテーションアワード2021」でもグランプリをいただきました。最初からプレゼンテーションを得意にしようと思っていたわけではなく、伝えたいことがあって作り続けるうちに、少しずつ得意なものになっていったんです。
――そうして身につけたプレゼンテーションの力が、糸島でも役に立ったのですね。
ポラムさん:作ったプレゼンテーションを市役所で流していただいたり、まちづくりのイベントで発表する機会をいただいたりして。
何か大きなことを成し遂げなければ、と気負っていたわけではありません。そのときの自分たちにできることをやってみたら、少しずつ役割が生まれていった。「私たちにも、ここでできることがあるんだ」と思えたのは、うれしかったです。二人でまた何かに取り組めるようになったことも、私たちにとっては大きな変化でした。
わからないからこそ、わかりやすく伝えられる。得意が仕事につながった今
――糸島での経験を経て、現在はどのような仕事をしているのでしょうか?
レウォンさん:企業から依頼を受けて、専門的な内容を、初めて知る人にも伝わるプレゼンテーションや動画にまとめる仕事が増えています。
以前、直流給電の技術を扱う会社から、「自分たちは技術者なので、初めて知る人が何がわからないのかわからない」と相談をいただきました。そこで僕たちは、「そもそも直流って何?」「電気って、どういうものなんだっけ?」というところから考えていったんです。
僕たち自身も、最初からその技術に詳しかったわけではありません。わからないことを一つずつ質問し、自分たちでも学び、感動しながら、初めて聞く人に伝わる形にまとめていきました。

ポラムさん:企業のプレゼンテーション制作だけでなく、学校や教育委員会のイベントでお話しする機会も増えました。元素カルタを作ったきっかけや、なぜ会社を設立したのか、その途中で経験した挑戦や思いどおりにいかなかったことなどを、ひとつのプレゼンテーションにまとめています。
実際に元素カルタや漢字missionを体験してもらうこともあるのですが、楽しんでやってくれているのを見ると、本当に励みになります。
――仕事以外の時間は、どのように過ごしているのですか?
レウォンさん:通信制高校に通っています。家で課題に取り組み、必要なときにスクーリングへ行く形なので、会社の活動も続けられています。
個人的には「仕事」と「仕事以外」の時間で分けている認識ではなくて、常にそれについて考えていることが多いので、起こる全てのことがpolarewonの事業にもつながっている感覚です。
――通信制高校を選んだのは、活動と両立しやすかったからでしょうか?
ポラムさん:高校進学を考える時期になり、「これからどうしようか」と二人で話しました。
高校へ行かない選択肢もありましたが、周囲の方から「高校卒業の資格は取っておいたほうが、将来何かをしようと思ったときに選択肢が広がる」と教えていただき、それなら今の生活を大きく変えずに続けられる通信制高校を選択しました。
レウォンさん:今の自分に合う方法を選んだことで、活動を続けられています。通信制高校に行くという選択をして、よかったと思っています。
「ちょっとやってみよう」を膨らませる。カメラと自転車から広がった世界
――仕事以外で、今、純粋に好きで続けていることはありますか?
レウォンさん:カメラと自転車です。カメラを始めたのは、糸島に滞在していたとき。滞在先にあったカメラを「使っていいよ」と貸していただき、最後には譲ってもらいました。風景を撮ることが多いです。
落ち込んでいた時期にほとんど外へ出ず、体も動かさなかったので、かなり太ってしまって…。あるとき「これはまずい」と思って、自転車でどこかへ行ってみることにしました。

――最初は、近所を走るところからですか?
レウォンさん:それが、思い立った日に家からは結構距離のある場所まで(笑)。「ちょっと出てみようかな」という気持ちを、自分の中で膨らませて、「よし、行こう」と。
やってみると、だんだん楽しくなり、その後はどんどん距離をのばすようになりました。
ポラムさん:一度、都心まで走ったときには、両方のタイヤがパンクして、大変な目に遭ったこともあります。でも、ハプニングも含めて楽しめばいいのかなと。やってみると、思ってもいなかったことにつながる場合もありますし。
――ポラムさんは、何かを始めるきっかけについて、どう考えていますか?
ポラムさん:私は、少しの危機感も、行動に移すきっかけとして大事なのではないかと思っています。「このままでいいのかな」「何とかしたいな」と思うから、そのために何ができるか、どんなことをしたらよいかと考え続ける。アンテナを立てていなければ、せっかく機会があっても、なかなかキャッチできません。
株式会社polarewonも、今、安定して仕事の依頼があるわけではありません。「どうしたらもっと知ってもらえるだろう」と考えるから、発信してみよう、誰かに協力してもらえないか相談してみよう、という次の行動につながります。
「好き」だけでなく、「困った」「なんとかしたい」という気持ちも、何かを始めるきっかけになるのだと思います。
言ってみる、行ってみる、やってみる。「い・い・や」が行動の基本
――では、「やってみたい」で終わらせず、実際の行動に移すために大切にしていることはありますか?
レウォンさん:僕が行動の基本にしているのが、「い・い・や」です。「言ってみる」「行ってみる」「やってみる」の頭文字を取って作りました。
まず、やってみたいことを口に出してみる。次に、興味を持った場所へ実際に行ってみる。そして最後に、自分でやってみる。
口に出すことで、誰かが「それなら、こんな人がいるよ」と教えてくれるかもしれない。実際に足を運べば、新しい人や知らなかったことに出会えるかもしれない。そこから自分でやってみることで、また次につながっていくのだと思います。

――やりたいことがあっても、「自分には無理かもしれない」「続かなかったらどうしよう」と動けない子もいると思います。
レウォンさん:自転車の話と同じで、やりたいと思ったら、まずはやってみればいい。始めたからといって、ずっと続けなければいけないわけではないので、途中で飽きたらやめてもいいと思います。「続けられなかった自分はだめだ」と、落ち込む必要もありません。
好きになったことを、必ず仕事や何かすごい成果につなげる必要もない。趣味のままでも全然いいんです。
――親としては、子どもの「好き」を見つけ、伸ばしてあげなければと焦ることもあります。
ポラムさん:私は「レウォンの好きを伸ばそう」と考えていたわけではなく、レウォンが楽しんでいるものに興味が湧いて、私も一緒に面白がっていただけかもしれません(笑)。
一緒に楽しむこと。それから、子どもが何を「嫌だな」「変えたいな」と感じているのかに目を向けることも大切かと思います。親が答えを用意するのではなく、「だったら、どうする?」と一緒に考えてみる。そこから、何かが始まることもあるのではないでしょうか。
レウォンさん:好きなことは、ふとしたときに出合うかもしれないし、出合わないかもしれない。出合わなかったとしても、それはそれでいい。
ただ、「何もない」と思い詰めるのではなく、「もしかしたら何か起きるかも」「面白いことになるかも」って、少しわくわくしておく。そこで「やってみたい」ものに出合ったら、その気持ちを大きくして動いてみる。それがいちばんいいのかな、と思います。
レウォンさんが起業するまでの道のりを伺ったインタビュー【前編】は>>こちら
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お話を伺ったのは
レウォンさんの母。息子との対話を重ねながら、母親としてだけでなく、一人の人間、ビジネスパートナーとして株式会社polarewonの活動に携わる。親子でプレゼンテーションや動画制作、講演、イベントなどに取り組むほか、自身も親子関係や教育、学びをテーマに講演を行っている。
この記事を書いたのは
法学部卒業後、通信教育などを手がける教育業界の企業に勤務し、その後ライターとして、女性誌や複数のWeb媒体で、暮らしや子育てを中心としたライフスタイル分野で取材・執筆を行っている。2児の母で、子どもはすでに成人しており、中学受験や大学受験を経験。実体験をもとに、同世代の女性に寄り添えるような記事を心がけている。
写真提供/polarewon