小栗旬が水もしたたるダメ男に！『人間失格 太宰治と３人の女たち』【ママが観たい映画】

日本が誇る文豪・太宰治は、優れた才能に恵まれながらも、どうやら“人間失格”を地でいくクズ男だったらしいです。9月13日に公開された小栗旬主演の映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』では、とことんダメ男ながらも実にセクシーだったという太宰治の知られざる素顔が描かれています。

恋多き男だった太宰は、妻子のある身でありながら、浮気を繰り返し、何度も自殺未遂を繰り返すというスキャンダルまみれの人生を歩みました。そんな太宰の正妻、津島美知子役に宮沢りえ、作家志望の愛人で弟子の太田静子役に沢尻エリカ、同じく愛人で太宰にとって最後の女となる山崎富栄役に二階堂ふみと、人気実力ともに兼ね備える3女優がキャスティングされ、演技合戦を繰り広げています。

とにかくこの3人の女性たちが実にたくましく、ママたちの共感ポイントも散りばめられています。本作では、太宰の人生を通し、男の弱さと女の強さを、蜷川実花監督ならではの視点から浮き彫りにしていきます。

三者三様の女たちが体現するたくましき女の性

本作で綴られるのは、太宰が死の直前に完成させた傑作小説「人間失格」の誕生秘話です。映画を観ると、太宰と交わる3人の女性は、太宰の作家人生においても、大きな影響を及ぼしていたことが、わかります。

正妻の津島美知子は、「ヴィヨンの妻」、愛人で弟子の太田静子は「斜陽」のモデルだと言われており、そしておそらく「人間失格」を描く上でも影響を与えたであろう太宰の最後の愛人が、山崎富栄です。

夫の不貞を知りながらも、しっかりと子どもを育てていくしっかり者の美知子、太宰とは「物語を紡げる」という才能を共有する弟子で、彼との間に念願の子宝も得てご満悦となる静子、同じように太宰との子どもを熱望し、最終的には死を持って永遠に結ばれることを願った富栄。まさに女の性をえぐり出したような愛や激しい葛藤は、きっと同じ女性なら、少なからずシンパシーを覚えるでしょう。

男、夫、父親としても“失格”なのに愛さずにはいられない太宰治

男、夫、父親としても“失格”間違い無しの太宰は、なぜ3人の魅惑的な女性から愛されたのか？　そこに説得力を与えているのが、太宰役を熱演した小栗旬です。

本作は、蜷川実花監督が構想7年を掛けた作品ですが、企画が立ち上がった当初から小栗さんにラブコールをしていて、映画が完成後も「小栗くんじゃなかったらこの映画は無理だった」と断言しています。

実際に、小栗さんが演じたセクシーでデカダンス漂う太宰を見たら、きっと女性陣はイチコロです。なんともはかなくて切ない。どんなにダメ男でも、あのうるんだ瞳に見つめられたら、落ちてしまう。おそらく小栗さんのフィルモグラフィーにおいても、きっと代表作になること、間違いなしです。

ということで、ぜひママたちに観ていただきたい『人間失格 太宰治と3人の女たち』。色鮮やかで、例によって花や水が散りばめられた蜷川実花ワールドは、大きなスクリーンに映えるので、映像美も含めて堪能してみてください。

文／山崎伸子