この記事シリーズでは、子育て中のママやパパが思わず口にしてしまう口グセを、もっと子どもに伝わる声かけに言い換えるヒントについて、長年、保育の現場を見つめてこられた井桁容子先生からアドバイスをいただきます。
子どもへの声かけは、何げないことのように見えて、その積み重ねは子どものなかで堆積物となり、人格形成にまでつながっていきます。荒く、否定的な言葉ばかり浴びていると、その子はおのずと荒っぽい子に育ちます。逆にいつも丁寧で、肯定的な言葉をたくさんもらっていると、人の話を丁寧に聞いて、物事を本質から理解する子に育ちます。子どもは、親の価値観が込められた言葉を聞いて、心を育てていくのです。
「育て急ぎ」が、声かけにも表れています
現代のようなスピード社会では、子どもも「育て急ぎ」を強いられています。大人にとって効率がいいように、早く「聞き分けのいい、失敗をしない子」になることを求められているのです。そのため、大人から子どもへの声かけも、結果や出来栄えばかり急かすような言葉が増えているのが気になります。
「早く!」「ダメ!」「ムリ!」「何やってるの!」……。ママたちがいいがちなこれらの口グセは、子どもをスピーディーにコントロールしようとする気持ちの表れです。でも幼児期は、成果を求められた子よりも、発達の途中にある心の動きに共感してもらえた子のほうが、よく伸びていくのです。
今、多くのパパ・ママたちが、「説明不足の子育て」になってしまっていると感じます。「早く行動してほしい」というときも、「早く!」だけでは伝わりません。なぜ今急がなければならないのか、その子の状況や気持ちを汲んで、子どもにもわかるような言い方で説明する必要があります。「お友達の◯◯ちゃんを待たせたらかわいそうだから、急ごうね」など、幼い子どもでもストンと納得できる理由を、そのつど丁寧に、言葉にして添えてあげることが大切です。手間ひまはかかりますが、そこを面倒がって省いてしまうと、子どもの心は丁寧に育ってくれません。
言い換えのコツは、「子どもを尊重する」こと
「頭ではわかっても、実際はなかなか、そんな丁寧な言葉は出ません」という声も多そうですね。では、子どもへの声かけを丁寧にするために、「小さいから、いってもまだわからない」という、ママの考えから、まず改めてみませんか。言葉は、人の思いから出てくるもの。世間体を気にして叱る言葉、自分のイライラをぶつける小言……子どもは、それらをすべて見抜く力をもっています。「どうせわからない」という考えを取り払うと、子どもを尊重する気持ちがわいてきて、丁寧で謙虚な言い方や、言葉が自然と出てくるようになるはずです。
子どもがゆっくりと心を育てているこの時期、どうかママたちは育て急ぎをしないでください。わが子が日々、どんなことに心を動かし、感じているのかを引き出すような声かけをしていく。そうするとあなたの子育ての毎日はもっとおもしろく、幸せなものになっていくと信じています。
それでは具体的なシチュエーション別に、NG口グセの言い換えレッスンをしていきましょう。
朝、園に行く準備をさせたいとき、つい言ってしまう口グセ
「早く、早く!」
「まだ〜できないの?」
では、どう言い換えたらいいのでしょう?
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