「百日ぜき」という病気をご存知ですか?子どもの感染症の原因や対処法、予防法などを小児科医の金井正樹先生にお聞きしました。
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Q:「百日ぜき」が流行しているというニュースを見ました。予防法や、かかったときの対処法を教えてください。
A:予防にはワクチンが確実。大人も追加接種の検討を
「百日ぜき」は百日ぜき菌に感染することによって起こる病気です。初期症状はかぜに似ていますが、特有のせきの発作が長く続くのが特徴です。
どんな症状?
くしゃみや鼻水、軽いせきといったかぜのような症状から始まります。百日ぜきは、症状の進行によって大きく3つの時期に分けられます。
❶症状が出始める時期(約2週間)
かぜに似た症状が現れ、少しずつせきが激しくなっていく。
❷発作が見られる時期(2〜3週間)
激しいせきの発作が見られます。コンコンと十数回せきが続き、その後息を吸い込むときに「ヒュー」と高い音がするのが特徴です。熱は出ないことがほとんどで、発作時以外は元気です。
❸発作が治まっていく時期(2〜3週間)
少しずつ発作が軽くなり、回数も減っていきます。ただしその後も、時おり発作的なせきが出ることがあり、完全に症状が消えるまでに2〜3カ月かかることもあります。
病院ではどんな治療をする?
早い段階ではかぜと見分けるのが難しいのですが、せきが続くときは病院へ。
百日ぜきの治療には、抗生物質による治療が必要なためです。きちんと除菌するには、決められた量の薬を全て飲みきる必要があります。症状がおさまっても自己判断で薬をやめたりせず、医師の指示通りに服用を続けましょう。
家庭で気をつけることは?
空気が乾燥していると気管が刺激され、発作を誘発します。
加湿器などで室内の湿度を高めに保つとよいでしょう。せきをするとたんが出ますが、幼児はたんをうまく出せず、一時的に呼吸が苦しくなったり、発作後に嘔吐したりすることもあります。水分が不足するとたんがからみやすいので、こまめな水分補給も大切です。原則として、5日間の治療(処方された薬の服用)が終わるまで、または特有のせきが出なくなるまでは出席停止です。
予防するためにできることは?
百日ぜきはワクチンで予防することができます。
接種する時期の目安は、次の通りです。
❶生後3〜12カ月の間に、20〜56日の間隔で3回接種。
❷3回めの接種から6カ月以上(標準的な時期は12〜18カ月の間)あけて、もう1回接種。
百日ぜきを含む「四種混合ワクチン」は「定期接種」として無料または低額(自治体によって異なる)で受けることができます。また、1〜2の時期に受けそこねても、7歳6カ月になる前日までは定期接種として受けられます。
大人もワクチンを受けられる?
幼児期にワクチンを接種しても、百日ぜきの免疫は4〜12年で低下するといわれています。
そのためWHOでは、小学校入学前(5〜7歳)に「三種混合ワクチン」の追加接種を推奨しています。成人が追加接種を希望する場合も、三種混合ワクチンが使われます(海外では成人用のワクチンが使われるが、日本では未承認)。大人の場合、感染しても軽症ですむことが多いのですが、症状は軽くても感染力はあります。子どもへの感染を防ぐためには追加接種を受けておくとよいでしょう。
記事監修
東京都八王子市・金井内科医院院長。「国立小児病院」、米国の小児病院などで小児外科の臨床・研究を行い、2008 年より現職。診療科目は内科、小児科、小児外科、外科。保育園の園医、小・中学校の校医も務める。
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