子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴47年、常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。
「ケンカをやめて」と仲裁したら殴られた。暴力的な前の席の男子にどうしたら?
小2の息子のことで相談です。席替えをしたら、Hくんが息子の前の席になりました。私は知らなかったのですが、Hくんはかなり暴力的な子です。個人面談のとき担任の先生から「Hくんと仲良しじゃない子で回りを固めたら、Hくんも大人しくなると思ったのですが…」と言われました。
しかし先生の思惑ははずれ、Hくんは授業中、ずっと後ろを向いて息子に話しかけてきます。息子が注意すると、息子の鉛筆を奪って床に投げつけたり、消しゴムを2つにちぎったりして「返して!」と言うと投げてくるそうです。持ち物が少し体に当たっただけで、頭を殴ってくるとも言っています。
ある日、HくんとYくんが殴り合いのけんかをして、Yくんがバランスを崩して息子にぶつかってきたので「ケンカはやめて!」と言ったら、Hくんが息子の顔面を殴ってきました。息子が「なんでそんなことするの?」と叫んだら、もう一発殴られたそうです。
私は普段から、息子に「思ったことはハッキリ伝えようね。嫌なことは嫌だと言えばいいし、痛いことは痛いとハッキリ言おうね」と伝えてきました。Hくんに殴られたことは息子も納得がいかないようで、親子共々、Hくんには参っています。
息子は、毎日、遊ぶ友だちがたくさんいます。クラスの友だちとも楽しく過ごしています。担任は23歳の女の先生で、相談しても「息子さんがトラブルに巻き込まれやすいタイプなので、心配なら見に来てください」と言われました。トラブルに巻き込まれやすいタイプなんて、初めて言われました! 私ができることは、「つらかったね」と息子の話を聞いてあげることだけでしょうか。(小2の男の子のママ)
お母さんにできることは、傷付いた子どもの気持ちに寄り添うことです
Hくんとの関係はつらいと思いますが、お母さんにできることは、お子さんの話を聞いて共感してあげることしかないと思います。「参っています」とも書かれていますが、お母さんだけでなく、お子さんもひどく参っていますか?
「嫌なことがあっても学校に行ける!」「Hくんに手を焼きながらも、ほかに遊べる友だちがいる!」「顔を殴られても、言いたいことが言える!」-立派な子ですよね。
まさに身をもって、いろんな子がいることを受け止めているのです。お宅のお子さんは言葉での表現が得意ですが、Hくんは今のところ感情を態度や暴力的なことでしか表現できないのかもしれません。「Hくんが、どうしてそうなってしまうのか!?」と彼の内面に気づく日が来るかも知れませんし、もしかしたらこの先、かけがえのない友だちになるかも知れません。また息子さんは、乱暴な子から身を引く術を学んでいるとも考えられます。
登校を渋るなどのSOSサインが出たときには、腰を上げましょう!
お子さんには「いろいろな子がいるね。でも、ほんとはいい子なんだと思うよ。でもあなたのいやだという気持ちをどうしたらわかってもらえるんだろう」と一緒に考えてあげてください。あくまでも、考え合うだけで「こうしなさい」という強要はやめましょう。息子さん本人の問題ですからね。わが子が本当に参っているときは、顔色が悪い、熱が出る、食欲がない、笑顔が消える、睡眠が足りてないなど何らかのサインが出ます。そんなときは腰を上げましょう!「先生に席を変えてもらうように頼んであげようか?」という提案もあっていいでしょう。2年生くらいで、ひとりの子がいやでここまでになってしまうことはまれだとは思います。
教えてくれたのは
保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて半世紀。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。親向けの最新刊に『保育歴50年!愛子さんの子育てお悩み相談室』(小学館)がある。
イラスト/海谷泰水