「自分で片付けられる」子どもの心のメカニズムとは?【井桁容子先生の子育て相談】

遊んだおもちゃや脱いだパジャマ、子どもが生活の中で片付けをしないと、つい口うるさく「片付けない!」と言ったり、代わりに片付けてしまったり。子どもが片付けを自分でしてくれたら、そう思っているママ・パパも多いのではないでしょうか。子どもが自分で片付けをしようという気持ちになるためには、実は大人のちょっとした声かけや手助けが効果的だそうです。今回は、保育子育てアドバイザー井桁容子先生に、片付けと子どもの心の育ちについて教えてもらいました!

Q:3歳の息子は、親が言わないと片づけをしようとしません。自分から片づけをするようになってほしいのですが…。

A:片づけのベースとなるのはものを大切にする心です

子どもが片づけをしたがらないのは、「出したものを元の場所にもどす」ことの意味がわからないからです。自発的に取り組むようになるには、片づけの本当の意味に気づくことが大切。そのための第一歩が、「ものを大切にする心」が育つことです。

片づけをするのは大好きなものを守るため

ものを大切にする気持ちは、「愛着」から生まれます。たとえばお気に入りのおもちゃで遊んだとき、子どもは「楽しかった」「またこれで遊びたい」などと思うはずです。まずはそう思えるよう、満足するまで遊ぶことが大切です。

遊びに満足すると楽しかった気持ちからおもちゃに愛着が生まれてきます。そこで「片づけなさい」と言う前に、「ブロックで遊んで楽しかったね」などと子どもの思いを言葉にしてみましょう。そうすると子どもは満足感や達成感を自覚し、共感してくれた大人に信頼を寄せます。同時に、自分を楽しませてくれたものを大切にしたい、という気持ちが芽生えます。その上で、出しっぱなしにしておいたらこわれたりなくなったりするなど残念なことになる、と伝えると「それはいやだから片づけておこう」と思うようになるのです。

たとえば、「片づけ=出したものを元の場所にもどすこと」「叱られたくないから片付ける」と思っている子は、自分が使ったおもちゃだけを片づけ、それ以外のものは片づけようとしません。でも、ものを大切に思う気持ちが育っている子は、自分が使ったおもちゃ以外のものも気づいたら片づけるようになります。自分にとって大切なものができた子は、他人にも大切なものがある、と気づくことができるからです。

大人と一緒に片づけることで、子どもの心が育つ

大人は、子どもが出したものを自分で全部片づけさせるのが「しつけ」だと思いがちです。でも、子どもが自然に片づけられるようにするには、むしろ大人が一緒にしたほうがよいのです。「〇〇ちゃんの大切なぬいぐるみだもんね。汚れたらいやだから、しまっておこうね」というように、子どもの気持ちを言葉にしながら手伝いましょう。ひとりではやりたくない、自分だけでは上手にできない、などと思っているときに共感し、手助けしてもらえる経験は、やさしい心を育てます。そして、人が困っているときに手を差し伸べられる姿勢へとつながっていきます。

子どもが片づけをいやがる場合は、遊びにかえてしまうのもよい方法です。たとえばお店やさんごっこのような雰囲気で、「いらっしゃいませ」などと言いながら子どもにひとつずつおもちゃを渡してみましょう。こうすると楽しみながら片づけられるだけでなく、「いやなこともちょっとした工夫で楽しめる」という発見にもなるはずです。

片づけができたら、子どもには「これでまた楽しく遊べるね」というように、前向きな言葉をかけましょう。「片づけができてえらいね」などとほめたり、ごほうびをあげたりしないこと。片づけは親にほめられるためではなく、自分のためにすることです。「自分で上手に片づけられた」という達成感や満足感を一緒に味わうことを意識しましょう。でも、大人に言われる前に子どもが自分から片づけをしたときは、大いにほめてあげてください。

 

記事監修

井桁容子|乳幼児教育保育実践研究家

乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。


 

イラスト/小泉直子 構成/野口久美子

めばえ2018年10月号

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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