女子アナ絵本専門士がこっそり教える、子どもをめちゃくちゃひきつける読み聞かせのコツ

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絵本の読み聞かせタイムは、親子のおだやかな時間。絵本を通じてあたたかなふれあいが生まれると同時に、子どもの感性・感受性は磨かれ、とっても充実……のはずが、
「またこの本?」「全然聞いてないし!」「絵本が、おもちゃに……」
などなど、つっこみを入れたくなるほど、思い描いていたものとはかけ離れた光景に直面しているママやパパも多いのではないでしょうか。
今回はそんな「読み聞かせあるある」の解決策を、日本テレビのアナウンサーであり絵本専門士の資格を持つ杉上佐智枝さんにうかがいました。子どもたちに絵本をもっと楽しんでもらう、その秘訣とは?

困った「読み聞かせあるある」はどう解決?

まずは、ママやパパがひそかにしんどさを抱えがちな「読み聞かせあるある」の解決法を「あるある」別に指南。どんなコツがあるのでしょうか?

アナウンサーで絵本専門士の杉上佐智枝さん

「同じ本ばかりもってくる(ため息)」そんなときは…?

「読み聞かせあるある」としてよく耳にするのが、「子どもが何度も同じ本ばかり要求してきて困る」というもの。わかります、読むほうも飽きてしまいますよね。

でも、「好き」な絵本を繰り返して読むことは「好き」のさらにその先の、たとえば「慈しみ」や「喜び」「思いやり」といった感情の芽生えと育みにつながっているのかもしれません。それに、繰り返し読んだ絵本は大人になってからも「覚えている絵本」となって、家族との思い出にも直結するはず。これも大切な「感情の発達過程」、もしくは「愛の刷り込み作業」と考え直し、根気よく付き合ってみましょう。

「集中して聞いてくれない(涙)」そんなときは…?

せっかく絵本を読んでいるのに「子どもがぜんぜん聞いてない!」というのも「あるある」ですよね。けれども、読み聞かせ中にはおもちゃで遊んで絵本に一瞥もくれなかった子が、実は耳だけは傾けていた…なんてケースもあるようです。

子どもの絵本の楽しみ方は「見る」だけでなく、さまざま。同様に、絵本の楽しみ方にもルールはありません。
絵本をおもちゃにして遊んでしまう子も多いですが、大丈夫。まずは絵本の存在に親しむことが大切です。ときには「読むこともできるおもちゃ」「コミュニケーションのツール」として、絵のページについてしゃべりあったり、うしろから読んでみたり、絵本を使って新たなゲームを生み出したり……ママやパパからも形式にとらわれない絵本の遊び方を提案してみてはいかがでしょうか。

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読み聞かせの必殺技「めくり」の手法

絵本を楽しむにあたって、いちばんのカギとなるのが「めくり」。ページをめくるその時間は、自然な「間」となり、聞いている子どもたちが内容を理解するための大切な「余白」として機能します。さらに、子どものリアクションに合わせてめくり方を変えてみれば、いろいろな間や楽しみ方、印象のカスタマイズも可能に。

ここでは、特に子どもたちのツボにはまる3つの「めくり」をお伝えします。

1)待ち

たとえば子どもがまだ絵をみている様子のときなどは、めくるのを待ったり、ゆっくりと、そっとめくったりしてあげましょう。子どもの反応に合わせて「待ち」を入れてあげることで、自然な「間」を演出してあげられます。

2)じらし

ページをまたいで「気になる仕掛け」が成されている絵本なら、あえてめくりをじらしてみましょう。子どものドキドキを煽ることができます。ただし、絵本の内容によっては(怖い絵本など)泣いてしまう子もいるので要注意。

3)ずっこけ

めくるふりして「やっぱりやめた!」と、めくらない。すると、子どもたちはずっこけて、「ええ! 見るってば!」といった笑いと会話が生まれます。

めくりで遊べる絵本はたくさんあります。お子さんの反応や絵本の特徴に合わせて、めくりを楽しんでみてくださいね。

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この絵本をこう読んだら子どもがクギづけ!

絵本それぞれの特徴を最大限に活かした読み方をしてあげると、子どもはもっとクギづけに! ここでは、2冊の絵本とそのおすすめの読み方をご紹介します。

擬音語・擬態語を利用! 絵本をまわして動かして…

『おやさい とんとん』という低年齢向けの絵本には、ページごとにいろいろな野菜が登場。野菜たちが擬音語・擬態語とともに調理されていく様子がたのしい一冊です。

この絵本のおすすめの読み聞かせ方は、物語のなかの動きや音に合わせて、絵本自体を動かしたり、音を出してみること。ブロッコリーがころころ転がっていくくだりでは、実際に絵本をころころ回してみたり、「ずん!」という擬音が登場したら、絵本を上に「ずん!」と持ち上げてみたり。

『おやさいとんとん』

方言のリズムをおおいに取り入れて

また、絵本には方言が登場することも多いですよね。たとえば、『オニのきもだめし』にはたのしい関西弁のやりとりがいっぱい。

自分の出身地域の方言ではないと、「変なアクセントで間違った認識を子どもたちに植えつけてしまうのではないか」と心配になってしまうこともあるかもしれません。けれども、そんなに難しく考えなくても大丈夫。子どもにとっては、イントネーションがリアルかどうかよりも、大人が気持ちよく読んでくれているかが重要。あとで本場の読みを聞いて「あれ?」と思っても、ひとつの気づきになります。

『オニのきもだめし』では、方言のリズムをおおいに取り入れながら堂々とたのしく! 子どもたちもノリノリで聞いてくれるはずです。

『オニのきもだめし』

心強い味方「すべらない絵本」に頼る!

とりわけ緊張してしまうのが、わが子との一対一ではなく、そのお友達、もしくは大勢のお子さんの前で、ママやパパが絵本を読み聞かせするシチュエーション。そんなときは、ママパパが読み聞かせしやすく「これは絶対ウケる」と思える「すべらない絵本」に頼りましょう。

まだ自分にとっての「すべらない絵本」に出会えていないママパパ向けに、ここでは読み聞かせで子どもに「大ウケ!」なおすすめ絵本をご紹介します。

落語や講談の笑いの力を借りて

落語の絵本『いちはちじゅうのもぉくもく』は、小学校低・中学年の子どもたちのツボをつかみまくり! 軽妙なテンポとセリフまわしの面白さで、読んでいるママやパパもきっとたのしくなっちゃいます。日本文化や日本語の豊かさにも触れられる、すべり知らずの一冊です。

『いちはちじゅうのもぉくもく』

しかけ絵本の華やかさを味方に

困ったときは、華やかなしかけ絵本に甘えてみるのも◎。たとえば、『おおきなおおきな  きいろいひまわり』。特殊な形式のしかけ絵本で、子どもたちからも、ママやパパからも多大な人気を集めています。
通常の冊子の形式ではなく、円を描くようにひらかれていくページは1枚1枚が花びらになっていて、1ページ、2ページ、とひらいていくと、最後には大きな大きなひまわりが完成。子どもたちが目を輝かせて喜んでくれる一冊です。

『おおきなおおきなきいろいひまわり』

絵本を現実とリンクさせる

「これ実際にやってみる?」という流れで、絵本の中のできごとを現実で体験してみるのもおすすめの絵本の楽しみ方。「読んだらおしまい」ではなく、絵本のなかでのできごとは実際の体験と結びつけることで、思い出としてはもちろん、新たな学び、興味の芽として子どもの心に残ってくれるはず。

絵本と現実のリンク例をお伝えします。

絵本に出てきたものを描いてみる!

絵本『ほしじいたけ ほしばあたけ』の主役は、乾物、干しシイタケの夫婦。読み聞かせのあとは、干しシイタケを実際に見せてあげましょう。その軽さや手触り、水につけるところまでを体験してもらって、自分ならどんな干しシイタケのキャラクターを登場させるか、お絵かきをしてもらいます。

絵本をきっかけに、学び、発想が広がっていくのを楽しめるはず。使ったシイタケは夕飯に使うのを忘れずに!

『ほしじいたけ ほしばあたけ』

絵本に出てきたものを食べてみる!

絵本を参考にした食育体験は、夢の「絵本ワールド」を現実で味わわせてあげられるひとつの方法です。

たとえば、『ぼくのぱん わたしのぱん』を読んでから、自由にパンづくりをしてみるのはいかが? パンができていく過程を学べるだけでなく、絵本で見て現実で食べた食材に、子どもは特別な親しみを抱いてくれます。

つくっている間はあれこれ言いたくなっても大人はがまん。これはダメだな、と思う成形のものでも、焼きあがったらいい感じになることも多いのです。

『ぼくのぱん わたしのぱん』

杉上佐智枝さんからのメッセージ

以下はHugKumファミリーへの杉上さんからのメッセージです。

「今、先の見えない世の中――。ニューノーマルって?  来年はどうなる?  と誰もが不安やストレスを感じる時代だからこそ、古き良きもの、ずっと変わらないもの=「絵本」の出番だと思っています。手に取って、紙の匂いや感触を味わい、ページをめくるという、誰もが幼い時から行ってきた作業を繰り返すことによって、大人もこんなに癒されるんだという発見もありました。

オンラインの必要性・利便性は受け入れつつ、同時に絵本の温もりを子どもたちに渡していくことを、私たち大人が大切にしていきたいですね」

「こんな今だからこそ、子ども達の笑顔と健やかな心身は、守っていきたいもののひとつ」

 

「子どもが幸せでいるためには、周りの大人がまず幸せでいること、そのためには、大人が頑張りすぎないこと。読み方に優劣も正解もないし、絵本は「読めるおもちゃ」でいいんです。(読み方に正解もゴールもないところは、アナウンサーの仕事にも似ています。こちらは、日々精進あるのみ……笑)

絵本の力を信じて、伝わる心を信じて、ゆるりと楽しく、大人も絵本に癒されて過ごしていきましょう」

「読んで聞かせる」ことにこだわらず、コミュニケーションツールとして活用

絵本は、親子でおなじ時間、そして感動を共有できるメディア。時が経っても、絵本を通じてともに過ごした時間は、大切な思い出として親子の記憶に残りつづけるでしょう。ぜひ「読んで聞かせる」ことにとらわれず、子どもの成長過程やペースに合わせて、ひとつのコミュニケーションツールとして絵本を活用してみてくださいね。

また、さらなるアドバイスは『絵本専門士アナウンサーが教える 心をはぐくむ読み聞かせ』で詳しくご紹介しているので、こちらもあわせて参考にしてみてください。

杉上佐智枝さんプロフィール

日本テレビアナウンサー。早稲田大学第一文学部卒。「バゲッド」「スッキリ(ニュースコーナー)」などを担当する。2017年に2回目の育児休暇から復帰後、絵本専門士の資格を取得。「世界一受けたい授業」で絵本の紹介をしたり、日本テレビのイベントで読み聞かせを行ったりと、資格を生かしながら幅広く活動中。

著:杉上佐智枝|小学館|本体1,300円+税

聞いてくれなくても気にしない、「読まない」読み聞かせもできる、自分が好きな本を選ぶ…などなど、ママやパパにとっても読み聞かせが楽しくなる「読み聞かせのコツ」満載の一冊。指南するのは、日本テレビのアナウンサーでありながら「絵本専門士」の資格を有する杉上佐智枝さん。言葉を扱うプロの「アナウンサー」、「絵本専門士」、さらには2児の母という3つの顔をもつ著者ならではの視点で「読み方のコツ」や「絵本の選び方」についてくわしく語ります。

構成・文/羽吹理美  撮影/佐藤克秋

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