コロナ禍の今年、初詣はどうすべき?開運につながるお正月の祝い方を行事研究家・広田千悦子さんに学ぶ

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2020年は、世界中の人々にとって未曾有なことが起き、なんだかあっという間に年の瀬、そしてお正月を迎えることになってしまった…という方も多いのではないでしょうか。そんな慌ただしく、また大きな変動のただ中にある年末年始だからこそ、少し立ち止まって、お正月の在り方、過ごし方、本来の意味を見直し、子供と一緒にかけがえのないこの期間を楽しく過ごしたいですね。

日本の行事・歳時記研究家の広田千悦子さんに、本来のお正月支度に込められた意味や、縁起のいい迎え方をうかがいました。

初詣は時期をずらしても大丈夫。今年はおうちで年神様を迎えましょう

 

コロナ禍で迎えた2021年のお正月。

テレビからは、感染対策として分散参拝(三が日だけでなく期間を広げる)を勧めるニュースが流れています。そんな中、「今年の初詣は、どうしたらいいの?」と、お悩みの方もいらっしゃるかもしれません。

現在のように、少し遠くの有名な神社へお参りに行く初詣のスタイルは、近年に始まったことです。一説には、電車が走り始めた頃、社寺や電鉄会社などの宣伝により盛んになったとも言われています。

なので、それ以前は、歩いて行ける近所の神社へお参りに行ったり、家の代表者が神社にお籠りをしたり、年神様をお迎えするためのお供え料理である「年取りの御膳」を囲んで皆で家に籠って一夜を明かして新年を迎えていました。

お正月の期間は、三が日、松の内(7日間)、小正月(1月15日)までというところが多いでしょう。けれども、昔は、1213日頃からお正月の支度を始め、2月の上旬くらいまでの、約2ヶ月がお正月の期間。今よりも、長く緩やかに続いていました。

昔の在り方を見直せば、今年は、松の内である7日までに初詣に行かずとも、ご自分のタイミングでお参りをするのが、いいのではないかと思います。

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お正月を迎える支度の一つ一つに意味があります

そもそも、お正月はどんな行事なのか──。家でゆっくり過ごしながら、子供と一緒にお正月本来の意味や過ごし方を見直してみるのもおすすめです。

お正月は、一年の始まり。新しい年を神さまと共にお祝いする行事です。この期間に、年神さま、正月さま、若年さん、などと呼ばれる農耕の神さまや、「みたま」と呼ばれるご先祖さまが、それぞれの家を訪ねてくださると考えられてきました。

「門松」は年神様が宿る場所。「しめ飾り」は家に悪いものが入らないためのもの

門松は、年神さまが訪れるための依り代(神さまが宿る場所)です。

しめ飾りは、玄関などの入り口に下げ、お正月を祝い、悪いものが入らないようにします。

鏡餅をいただく「鏡開き」には神様の力を授かる意味が

鏡餅は、神さまへのお供えのひとつ。一般的に11日に下げるとされていますが、地域や各家によって異なります。下げたお餅は、お汁粉や雑煮に入れたり、かき餅にしていただきます。これを「鏡開きの直会(なおらい)」といい、神さまと一緒にいただいて、その力を授かるという意味があります。

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おせち料理、お年玉、お正月遊び 神さまと一緒に過ごして幸せな一年を

お正月の様々な習わしは、今風に言葉を変えると、家に滞在している神さまとのコミュニケーションツールと言えます。

おせち料理をいただく祝い箸に込められた意味

たとえば、おせち料理。神さまと一緒に縁起のいいごちそうをいただくことで、幸を招きます。おせち料理をいただくときに使う祝箸は、両サイドが細くなっていますが、これは、一膳の箸を神さまと一緒に使うという意味が込められています。

 

「お年玉」の「玉」は、神様が分け与えてくれる「魂」の意味が

子供たちが楽しみにしているお年玉は、昔は、その家の中心の者が、子供だけではなく一緒に暮らしている人などに配っていました。中身は、お金ではなく、お餅や薬、扇などが多かったそうです。もともと、お年玉の「玉」はたましいの「魂」であり、この一年を無事に幸せに暮らすために、神さまが分け与えてくれる「活力」だと考えられていて、それは目に見えないので、形のあるものに託したのが始まりとされています。

 

今では目にすることも少なくなりましたが、お正月の風物詩である凧あげや羽根つき、こま回しなども、神さまと一緒に楽しく過ごすための行いが、遊びとして継承されてきました。

 

厄災に見舞われた年から改まった今年のお正月こそ、本来の祝い方の意味をお子さんと共有しつつ、神様に近づいて福を呼び込むことを念じて過ごしていただきたいですね。

 

『にほんの行事と四季のしつらい ビジュアル版・くらし歳時記12か月』

著:広田千悦子 写真:広田行正 発行:世界文化社 1,800円+税

正月、節分、七夕、お盆、月見など、四季折々の節句や行事に込められた祈りのかたちである「しつらい」を、美しい写真とともに紹介。伝統的な飾り方だけでなく、暮らしの中に取り入れやすい、シンプルな今流のスタイルを提案。一年を通してめぐり来る節目の行事に、花を刺し、季節を寿ぐ。そんな、古くて新しい和の暮らしのエッセンスを日々に取り入れながら、丁寧に生きることの美しさと大切さを教えてくれる一冊。12のコラム「五節供以外の節供」なども読み応えあり。

教えてくれたのは

広田千悦子(ひろたちえこ)

日本の行事・歳時記研究家。古きを踏まえつつ「ものがたりのあるしつらい」をお題に、季節や行事にちなむしつらえのデモンストレーションや講演、季節の中井などを企画開催。東京新聞の連載「くらし歳時記」は、2021年に15年目を迎える。著書は『おうちで楽しむにほんの行事』(技術評論社)など多数。神奈川県横須賀市に築80年の日本家屋スタジオ秋谷四季を構え、「季節のしつらい教室」を主宰。オンラインでも参加できる稽古も開催予定。

http://www.hirotachieko.com

 

構成・文/神﨑典子 写真/広田行正(『にほんの行事と四季のしつらい』より)

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