油性ペンは子どもの洋服や学用品の名前付けなど、子育て世代には欠かせないアイテムの一つです。子どもの手の届く場所に置き忘れて、落書きされることもあるのではないでしょうか。油性ペンのインク汚れの落とし方や、注意点を解説します。
油性ペンの汚れが落ちにくい理由
油性ペンで描いた絵や文字は、普通に洗っただけでは落ちません。なぜ落ちにくいのか、主な理由を見ていきましょう。
インクに含まれる油分
油性ペンのインクには、油分が含まれています。着色剤を油分でできた揮発性有機溶剤で溶かして作るため、水に溶けにくく洗濯しても落ちないのです。
逆に、水性ペンのインクは水が溶剤なので、水に濡れるとすぐに溶け、簡単に落とせます。
耐久性を高めるための樹脂や定着剤
油性ペンのインクは耐久性が高く、乾いてから時間が経ってもあまり薄くなりません。
インクの耐久性が高いのは、樹脂が含まれているためです。樹脂にはインクの成分を安定させる働きがあり、乾いたあとのインクを長く保護します。
また、プラスチックやビニールなど表面がツルツルした素材に書きやすくするため、定着剤も使われています。耐久性を高め、使い勝手を向上させるための成分が、油性ペンの汚れをさらに落としにくくしているのです。
素材に染み込む染料
インクの種類には素材に染み込んでいく「染料」と、表面だけに色が付く「顔料」があります。着色剤を溶剤で溶かしたものが染料、溶けずに混ざっただけのものが顔料です。
油性ペンのインクは染料ですから、時間が経つと素材に染みていきます。揮発性が高い有機溶剤を使っているため乾きやすく、水性ペンに比べて染み込むまでの時間が短いのも特徴です。
素材別のインクの落とし方
肌や洋服、子どものおもちゃなどに油性ペンのインクを付けてしまったら、どうすればよいのでしょうか。素材別の落とし方を見ていきましょう。
手や顔などの肌に付いた場合
肌に付いたインク汚れは、石けんで何度か洗えばそのうちきれいになります。一気に落とそうとすると肌に負担がかかるため、いつもの手洗いや洗顔と同じ感覚で、少しずつ落としていきましょう。
顔や手の甲などの目立つ部分に付いてしまい、急いで落としたいときは、日焼け止めクリームやハンドクリームなどの、油分の多い化粧品を使います。
インクの油分が浮くように多めに塗ってから、ティッシュやコットンで優しく拭き取りましょう。
プラスチックやガラスの場合
プラスチックやガラス製品に付いた汚れは、意外と簡単に落とせます。まずは、普通のプラスチック消しゴムで軽くこすってみましょう。特に、ガラス製品はインクが染み込まないため、窓ガラスのような表面の平らなものなら、これだけでほぼ落とせるでしょう。
プラスチック消しゴムで落ちないときや、すりガラスの溝など、消しゴムが届かない部分のインク汚れを落としたいときは、消毒用エタノールを使います。
汚れた部分に消毒用エタノールをスプレーし、布などを使って拭き取りましょう。そのままではニオイが気になるため、汚れが取れたら水拭きして仕上げます。消毒用エタノールがなければ、除光液でも代用可能です。
服などの布に付いた場合
洋服などの布製品に付いたインクを落とすときにも、消毒用エタノールや除光液が活躍します。
ただし、色落ちの可能性があるため、目立たない部分でテストしてから始めましょう。水洗いできない素材や、シルクなどのデリケートな素材は使用NGです。
ビニールの上に当て布を敷き、インク汚れが下になるように衣類を置きます。当て布は浮いたインクを吸い取るためのものなので、汚れても構わない布を用意します。
汚れに消毒用エタノールを少量たらし、古い歯ブラシや丸めた布でトントンと叩きましょう。汚れが当て布に移ったら、石けんで残ったアルコール成分を洗い流し、いつものように洗濯します。
油性ペン汚れが落ちにくい素材と対処法
木や紙、革に付いた油性ペンのインクは、基本的に落とせません。コーティングされたものや、合成素材のものならある程度は落とせますが、完全にきれいにするのは難しいでしょう。
油性ペンが落ちにくい素材と、それぞれの対処法を紹介します。
机や床などの木
一般的な木製家具やフローリング材のように、ニスなどでコーティングされている木の場合は、以下の方法を試してみましょう。
- プラスチック消しゴムやメラミンスポンジでこする
- バターやマーガリンの油分をなじませる
- かんきつ類の皮を絞り、インクの油分を分解する
バターやかんきつ類の皮などを使ったあとは、中性洗剤を付けた布で拭き取ってから水拭き・乾拭きをして仕上げます。消しゴムやメラミンスポンジはこすり過ぎないように注意しましょう。
コーティングされていない木は、インクがそのまま染み込んでしまうため、汚れたらできるだけ早く対処する必要があります。消毒用エタノールや除光液を布に付けて、そっと拭き取っていきましょう。
なお、消毒用エタノールや除光液はニスやワックスを溶かしてしまう恐れがあるため、コーティングされた木には使えません。
壁紙・クロス
壁紙は素材によって、汚れの落ちやすさが異なります。
一般的な壁紙として普及しているビニールクロスには、消毒用エタノールや除光液が効果的です。コットンやティッシュに含ませ、汚れた部分に数秒間押し当てましょう。
インクが浮いてきたら、メラミンスポンジや布を当てて汚れを移し取ります。凹凸のあるクロスの場合は、綿棒を使うと楽です。
紙や布製の壁紙は、インクが染み込みやすい上に、濡らしたりこすったりすると破れる可能性があります。完全にきれいにするのは難しく、作業も慎重に行わなくてはなりません。汚れた直後なら、メラミンスポンジに少しだけ水を付けてこすれば落ちることもあります。
時間が経った汚れは、除光液を染み込ませたコットンを貼り付けて様子を見ましょう。うまく汚れが浮き上がったら、布などでそっと拭き取ります。
革製品
ソファーやバッグなど革製品のインク汚れも、消毒用のエタノールや除光液で落とせる場合があります。ただし、革はアルコールによる変質や色落ちの可能性が非常に高い素材です。
インク汚れは落ちても、見た目が悪くなって使えなくなることも十分あり得ます。本革製品はもちろん、合成皮革であっても、必ず目立たない場所で試してから作業しましょう。
油性ペンの汚れを落とすときの注意点
油性ペンのインク汚れは、水や一般的な洗剤では落ちないだけでなく、素材によってはすぐに浸透してしまいます。このため、やり方を間違えると手遅れになってしまうでしょう。
油性ペンの汚れ落としの注意点を解説します。
時間が経つと落ちにくくなる
油性ペンのインクは、時間が経過するほど落ちにくくなります。特に紙や布、木などの素材は繊維自体が染まってしまうため、とてもやっかいです。
しかし、完全にインクが染み込む前なら、落とせるチャンスは十分にあります。汚れが付いたら放置せず、速やかに対処しましょう。
色落ちする場合も
油性ペンの汚れ落としには、消毒用エタノールや除光液が活躍します。しかし、どちらも油分を溶かす働きが強いため、コーティングの剥がれや変色、色落ちなどの可能性が常につきまといます。
必ず目立たない場所に付けてみて、問題ないかどうかを事前にチェックしてから使いましょう。
汚れが落ちるかどうかは素材による
油性ペンのインク汚れの落ちやすさは、素材によって異なります。ガラスやプラスチックなどは消しゴムで簡単に落とせることが多いですし、衣類も早めに対処すればきれいになります。
子どもが大事にしているおもちゃや洋服がインクで汚れても、落ち着いて処理してあげましょう。一方で、白木の家具や本革のバッグなどは、元通りにするのはほぼ不可能です。
子どもが小さいうちは収納場所を工夫して、大切なものに油性ペンのインクが付かないよう、注意しながら暮らしましょう。
文・構成/HugKum編集部