大人がかかるイメージが強い帯状疱疹(たいじょうほうしん)。「水ぼうそうにかかったり、ワクチンを打っていれば、帯状疱疹にはならない」などといわれますが、本当でしょうか?
この記事では、帯状疱疹の概要や症状、後遺症などをはじめ、治療法や薬などを解説します。また、帯状疱疹になった場合の保育園・幼稚園・学校への対応、さらに、かかったときの注意点やうつさない・うつらないための対策をご紹介します。
目次
帯状疱疹って子どももなる? 大人から子どもにうつることは?
帯状疱疹には「大人がかかる病気」というイメージがあります。しかし実際は、大人だけでなく、子どももかかる病気です。では、大人から子どもにうつる可能性はあるのでしょうか?
子どもを帯状疱疹から守るため、概要や症状、感染経路、治療法や注意点などを知っておきましょう。
帯状疱疹ってどんな病気?
そもそも帯状疱疹とは、どのような病気なのでしょうか? まずは、帯状疱疹の原因や水ぼうそうとの違いを解説していきます。
原因
帯状疱疹の原因は「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」です。日本の成人の約90%がこのウイルスを持っているといわれます。
加齢やストレス、疲労などから体の免疫力が下がると体内に潜んでいたウイルスが活動をはじめ、帯状疱疹として発症します。50歳を超えると発症率が上がり、80歳までに約1/3がかかるといわれている病気です。
水ぼうそうと帯状疱疹の違い
水ぼうそうと帯状疱疹は、どちらも同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因となります。
このウイルスに初めて感染したときは、「水ぼうそう」として発症します。水ぼうそうが治っても、ウイルスは消えたわけではなく、体内の神経節に潜んでいます。同じウイルスなのですが2回目以降は発症すると、帯状疱疹となります。
水ぼうそうと帯状疱疹の違いをくわしく知りたい人は、下記をご覧ください。
帯状疱疹の症状と後遺症
帯状疱疹の具体的な症状を見ていきましょう。また、後遺症の可能性についても解説します。
チクチクした痛み
はじめは体の左右どちらか一方の皮膚に痛みを感じます。痛みの程度は、人によって異なりますが、チクチクと刺すような痛みやピリピリと焼けるような痛みです。
稀に激痛となり、夜も眠れないほどの痛みを感じるケースもあります。
水ぶくれや斑点
痛みだけではなく、小さな水ぶくれや赤い斑点が細長い帯のようにあらわれます。この症状から帯状疱疹と名付けられました。
痛み・水ぶくれ・斑点といった症状は、体の左右どちらかだけにあらわれることが多いのですが、免疫力が低下している場合、全身に出ることもあります。
かゆみ
初期症状として、かゆみが出ることがあります。ただし、帯状疱疹の治療では、なおりかけの時期にもかゆみを感じるケースがあるため、かゆみの有無だけで重症度などを判断することはできません。
熱や頭痛
発熱や頭痛、倦怠感やリンパ節の腫れといった風邪に似た症状が出ることもあります。
後遺症が残ることも
帯状疱疹の後遺症として、水ぶくれや斑点の痕が皮膚に残ることもあります。また、帯状疱疹後神経痛(PHN)を引き起こしたり、視力障害や難聴、顔面神経まひなどを引き起こす可能性もあります。
帯状疱疹はうつるの?
帯状疱疹は、他の人に帯状疱疹としてうつすことはありません。しかし、帯状疱疹の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスに免疫を持たない人は感染リスクが高くなります。
免疫がない人とは、これまで水ぼうそうにかかっておらず、かつワクチンを打っていない人のことです。特に生まれてから間もない乳幼児や子どもの場合、大人から子ども、子どもから子どもに水ぼうそうとしてうつる可能性が高くなります。
帯状疱疹の治療法や薬
子どもが水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した場合、何科を受診すればいいのでしょうか?治療法や薬もあわせて解説します。
何科を受診すればいい?
症状から帯状疱疹が疑わしい場合は皮膚科を受診してください。はっきりとわからないときは、小児科でも構いません。
抗ウィルス薬
抗ウィルス薬は、水痘・帯状疱疹ウイルスの活動を抑える薬です。症状が出てから3日以内に飲み始め、症状が治まっても処方された薬はすべて飲むようにします。薬の効果が表れるまでに2~3日かかることがあります。
消炎鎮痛薬(内服薬)
帯状疱疹の痛みの種類や程度にあわせて、消炎鎮痛薬が処方されます。基本的に飲み薬になりますが、重症の場合、注射による投薬で痛みを抑えることもあります。
塗り薬(外用薬)
塗り薬は、皮膚に出た水ぶくれや痛みを改善するために処方されます。また、皮膚の患部を覆う効果もあるため、水ぶくれの中にいるウイルスを他の人にうつさない役目もあります。
入院治療
重症の場合や医師の判断によっては、入院治療が必要になります。主に抗ウイルス薬の点滴をはじめ、消炎鎮痛薬の投与や塗り薬、抗菌薬などを用いた治療がおこなわれます。
帯状疱疹になったら保育園・幼稚園・学校はどうする?
文部科学省では、帯状疱疹での出席停止期間の基準を設けていません。しかし、学校保健安全法において『学校感染症出席停止の基準』が定められています。
その基準で見た場合、帯状疱疹は、接触感染の可能性が高いため、すべての発疹(水ぶくれや斑点など)が痂皮(かひ)化し、かさぶたになるまでは、出席停止となることが一般的です。ただし、病変部を適切に被覆すれば接触感染が防げるため、登校が可能になります。
学校によっては、指定の「学校感染症の登校連絡票」などの提出を義務づけているところもあるようです。
帯状疱疹になったときに気をつけること
帯状疱疹になったとき、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか? 注意点をご紹介します。
食事や睡眠をしっかりとる
低下した免疫力を回復させるために、栄養バランスのよい食事や十分な睡眠・休憩をとるようにします。また治療中に入浴する際は、患部を冷やさないよう注意してください。痛みが強い場合、しっかりと体を温めれば、痛みが緩和されます。
水ぶくれを破らない
帯状疱疹は、基本的に接触感染です。周囲の人間に、患部である水ぶくれ部分を直接触れさせてはいけません。
また、ウイルスが飛び散ることを防ぐため、水ぶくれを破らないように注意してください。
※ただし、帯状疱疹にかかった人の唾液にもウイルスが存在し、空気感染や飛沫感染の可能性もあります。
運動はお休み
帯状疱疹に感染した場合、免疫力が下がっていることが多いため、できるだけ体を動かさず、安静を保つようにしてください。
特に治療期間中は、運動を控え、体力の回復を待ちながら、リラックスすることを心がけてください。
帯状疱疹をうつさない、うつらないための対策
帯状疱疹をうつさない対策とうつらないための対策を紹介します。特に、妊婦さんや赤ちゃん、幼児、高齢者には、感染させないよう、十分な配慮が必要です。
手洗い、手指消毒
周囲に感染者が出た場合、手洗や手指の消毒を徹底してください。アルコールの使用が有効です。
また、家族に感染者がいるときは、洗濯物やタオル、スリッパなどは分けたほうがよいでしょう。
マスク
帯状疱疹のウィルスは主に接触感染によって移ります。ただ、空気感染の可能性もゼロではないので心配であればマスクの着用をしましょう。
お風呂でうつる可能性を減らす
お風呂での感染も考えられるため、患者と家族が一緒に入浴してはいけません。患者は、最後に入浴し、湯舟につかることを避け、シャワーのみを使うようにしましょう。
発疹を触らないために覆う
患者の発疹に触れないようにするために覆うことも大切です。皮膚にあらわれた水ぶくれの破れを防止することにもつながり、感染のリスクを軽減することができます。
ワクチンを接種
水ぼうそうのワクチンを接種することで、帯状疱疹を予防することもできます。
日本では、すべての子どもに水ぼうそうの予防接種を打つことが勧められており、予防接種によって、水ぼうそうの感染を高確率で防ぐことができます。
なお50歳以上には、2020年1月に登場した「帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチン)」での予防が効果的です。
帯状疱疹はうつさない、うつらない行動を徹底
水ぼうそうにかかった子どもは、体に水痘・帯状疱疹ウイルスが潜んでいるため、帯状疱疹を発症する可能性があります。うつさない、うつさないための対策としては、手洗いや手指消毒の徹底をはじめ、マスクの着用、患部に触れないこと、ワクチン接種などです。
帯状疱疹が疑われるときは、早目に皮膚科や小児科で医師の診察を受けてください。帯状疱疹にかかったときは、処方された薬をしっかりと飲み切り、十分な食事と睡眠をとって、完治させるようにしてください。
記事監修
西郡 克之
2001年日本医科大学卒業 亀田総合病院研修医 東京医科歯科大学附属病院皮膚科・形成外科及び関連病院勤務 上野皮フ科・婦人科クリニック開設 日本皮膚科学会専門医
http://www.uenoderma.jp
文・構成/HugKum編集部