心温まる子育て小説
【1】 『大きくなる日』
家族に起こるありふれたできごとを子どもの目線で綴った9つの短編集。
両親と姉弟という家族で、弟の保育園卒園から高校卒業までを軸にいくつかの家族の姿が描かれています。
さまざまなエピソードが身近に感じられることばかりで、子どもに関わる人たちはすべて互いに育て合っているということを感じさせてくれる心温まる作品です。
【2】 『しずかな日々』
母と2人で友達もなく、いつも1人で過ごしてきた主人公の枝野光輝。
小5になってふとしたきっかけで友達ができ、さらにおじいさんと生活を始めることで、安心で孤独でない毎日が始まります。
そんな数々の経験を通して、少しずつ大人になってゆく少年の姿をやさしく描いた感動作。
野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞しています。
安心して暮らせる家庭があり、仲の良い友達や理解してくれる先生がいて…。
そんな静かな日々が人生の基盤であると教えてくれます。
【3】 『ファミリーデイズ』
40歳を目前に出産して母となり、やんちゃな娘さんの育児に奮闘する瀬尾さんの毎日を描いた家族と育児のエッセイです。
子どもを育てるうえでの葛藤や悩みなども綴られていて、子育て中のママなら共感できること必至。
微笑ましく心癒されるストーリーで、育児の合間の息抜きにもぴったりです。
子育て中の親の悩みもリアル描いた小説
【1】 『水やりはいつも深夜だけど』
同じ幼稚園に子どもを通わせている5つの家族の日常を描いた短編集。
ブログで優雅な暮らしを更新しつつも周囲の評価に怯える主婦や、仕事で子育てを手伝えず妻から責められる夫、出産を経て変わった妻に違和感を覚え若い女に走ってしまう夫など…。
どんな家庭にも多少は存在するような問題がリアルに描かれていてドキリとしますが、どれも希望を感じさせる結末で爽やかな読後感に浸れます。
【2】 『不自由な絆』
仕事に励んできた洋美と専業主婦のリラ。
かつて同級生だった2人が、同じ年の子どもを産み再会します。
頼もしいママ友ができたと喜んでいた2人ですが、子ども同士の問題をきっかけにさまざまな問題が起こり…。
赤ちゃんがなかなか泣き止まなかったり、愛したいのにわが子を憎らしく思ってしまったり。
ママ友関係も含め、子育て中に誰もが直面するであろうさまざまな悩みとその希望が描かれています。
赤ちゃんだった子どもが中学生になるまでが描かれているので、新米ママの参考にもなるはずです。
家族や周囲の大人と子どもの絆を考えさせられる
【1】 『さくら』
ヒーローで人気者の兄、美しい妹、愛し合う父と母、そして平凡な「僕」。
楽しくにぎやかに暮らしていた家族5人と飼い犬のさくら。
そんなどこにでもいそうな家族でしたが、兄が20歳で自殺したことをきっかけに崩壊していき…。
その傍らで変わらずに生きるさくらの姿を通して、家族それぞれの光と影を描き、幸せや家族について考えさせられる作品です。
【2】 『とんび』
瀬戸内海の小さな町の運送会社に勤めるヤスに息子のアキラが誕生。
家族に恵まれた幸せな日々でしたが、突然の悲劇によりそれが奪われ…。
わが子の幸せだけを願い続けた不器用な父親が、さまざまな経験と思いを抱えて子どもを育てていく物語。
父と子の愛情と絆に思わず涙が溢れます。
【3】 『きみはいい子』
夕方5時までは帰ってくるなと言われる生徒と新任教師との触れ合いを描いた物語や娘に手を上げてしまう母親とママ友との物語、ひとり暮らしの老女と、家を訪ねてきたある男の子との物語などの5作品が収録。
子どもをめぐる現代日本が抱える問題が詰まっていて、胸が痛みますが「子どもはは褒められたり認められることで、人間を信じることができるようになる」ということを改めて感じさせられます。
【4】 『子育てはもう卒業します』
息子を憧れの学校に入学させることに必死なお受験ママの淳子、娘に一生続けられる仕事についてほしいと就活に口を出す明美、親の反対を押し切り結婚したことを後悔する紫。
10代で出会って以来、就職、結婚、出産、子どもの進路など、さまざまな問題に直面しつつ悩みを語り合い、常に前向きに生きてきた3人の女性たち。
「母親として頑張ってきたけれど、私の人生はこの先どうなるの?」という、母親が漠然と感じる悩みや子離れを等身大で描いています。
【5】 『窓ぎわのトットちゃん』
戦後最大のベストセラーとも言われている『窓ぎわのトットちゃん』。
個性豊かな子ども・トットちゃんこと黒柳徹子さんが、ユニークな教育のトモエ学園で愛情深い先生たちに囲まれてのびのびと成長していく姿を描いた自伝的物語です。
40年近く前の本ですが、深い愛情で子どもの個性を愛し、伸ばしていった先生や親たちの姿勢は、今なお子育てに多くのメッセージを与えてくれそうです。
おわりに
子育ては楽しいけれど悩みもつきません。子育てや家族をテーマにした小説は、そんな悩みを解決するヒントを与えてくれそう。気軽に読めるものばかりですので、ぜひ手に取ってみてください。
文・構成/HugKum編集部