フクロウが哺乳動物学者の今泉先生に突撃インタビュー!
フクロウと猫が仲良く子猫育てをしている姿に癒されると評判の写真集、『母親になった猫(マリモ)と子猫になりたいフクロウ(フク)』。フクロウのフクは、ママになった猫のマリモのこと、フクロウの自分のことなど、知りたいことがたくさんある様子。日本動物科学研究所所長でもある哺乳動物学者の今泉忠明先生にお悩み相談です。
フク:「先生、フクと申しますホ。本日はお時間頂戴し、ありがとうございますホ。何卒よろしくお願いしますホ」
先生:「はい。よろしくお願いしますね」
フク:「猫は成長すると親や兄弟のことは忘れるホ?」
先生:「猫は結構ドライなので、忘れます。ただ、ニオイを嗅ぐと思いだすので、あえて攻撃はしません。家猫の場合は、メス猫同士はニオイも近いし、母子同士でも姉妹のような感覚で一緒にいることがありますが、オス猫は、本来であれば嫌われるようなフェロモンが出ると考えられているんだよ」
フク:「ホー。キッズたちはどうして親猫がマリなんだってわかるのホ?」
先生:「母猫は赤ちゃん猫が生まれると、羊膜をなめ取り、赤ちゃん猫を育てるべきものと認識、母性が湧くんです。赤ちゃんのことはニオイと声で認識。一方、赤ちゃんは受け身で、近くに来るものが親だと思う。自分が鳴いて、やってきてくれるものが親だと認識するんです。たとえば正真正銘の親のことを親と認識する前になくしてしまえば、近くにいるものを親と思ってしまうんだよ」
フク:「ホー。マリのキッズたちもフクのことを親と思っているのかもホ。フクはやんちゃなキッズたちにもキレたりする気分に全然ならないのはなんでホ?」
先生:「猫もフクロウも急所以外だと気にしないかもね。フクロウの急所は『翼』と『耳』」
フク:「ホー。そういえば雑用係(人間)をついつい噛みたくなっちゃうのはフクの大事な翼に触った時だったホ。指の脂とかもついちゃうと、ちゃんと音を立てずに飛べなくなっちゃうかもしれないホでしょ? それにヘッドマッサージしてもらっている時も耳のあたりに指がくると急に噛んじゃってたように思うホ。フクのお耳はよく聞こえるように左右の位置がズレてるからどこにあるのかわかりにくいホ」
先生:「フクちゃんの仲間のコキンメフクロウは一般に神経質で臆病、そして、ちょっと攻撃的。一匹で生きる単独性の生きものなので、スキンシップもストレスを感じることがあるというからね」
フク:「ホー。フクはスキンシップは好きなタイプなのホ。なんていうか、マリや雑用係(人間)にどうしようもなく寄りかかりたくなる時があるホ。あれ何ホ?」
先生:「子供時代の名残で人や猫に寄りかかるのかな。猫は本来、単独性の生きものだけど、家猫は家畜化されているのでずっと幼児の感覚のままでいることが多い。フクロウも小さい頃は母フクロウを兄弟で待つ間、身体を寄せ合っているが、成長するとそうしなくなる単独性の生きもの。フクちゃんに関しては、幼児の時のまま、安心感とぬくもりを求めて寄り添っているのではないかな」
フク:「へ~ホ……。フクは大人になってから日本に来たけど子供の頃のことは覚えていないホ。先生、実はマリがお母さんになったホ。フクはなぜか、マリの子育てハウスに入りたくって仕方がなくなるのホ。その理由は何かわかりますかホ?」
先生:「フクちゃんはマリモちゃんのことを仲間だと思っているので、仲間の行動が気になるのでしょう。いつも一緒にいたのに、どうして一緒にいないのだろうと感じているのだと考えられるね。違うかな?」
フク:「はっ、恥ずかしくなってきたホ。先生、もうフクは大丈夫ですホ。本当にどうもありがとうございましたホ~」
フクが疑問に思っていたことに対して、丁寧に答えてくださった今泉先生。フクとマリモと子猫たちはこれからも仲よく暮らせそうですね。コキンメフクロウのフクは、身長も体重もスマホと同じぐらいのチビフクロウ。写真集『母親になった猫(マリモ)と子猫になりたいフクロウ(フク)。』では、最初はフクより小さかった子猫たちがだんだん成長していく姿が見られます。もちろんフクのいろんな表情も載っていますよ。
『母親になった猫(マリモ)と子猫になりたいフクロウ(フク)。』
コキンメフクロウのフクとスコティッシュフォールドのマリモは、とっても仲良し。本来なら獲物同士といえるフクロウと猫の仲良しぶりは、さまざまなメディアでも紹介されているほど。そんなある日、マリモが4匹の赤ちゃんを産んでママになりました。突然現れた子猫たちに戸惑いながらも、一緒に子育てに参加するフク。生まれたての子猫の愛らしい姿や、お世話するマリモとフクの様子に癒される写真集です。本文掲載の『マリモの子育て。』(一部書き足し)のブログは猫部門3位、鳥部門1位になった作品。
永原律子(ながはらりつこ)著
アートディレクター。カラープランナー。グラフィックデザイン非常勤講師。家電メーカーのプロダクトデザインのサポートを長く務める。写真集『ずっとともだち。』『フクマリ』では著者として、ミュージックCD『ニャンクラ~ニャンコが歌うクラシック~“GIFT”』では制作、撮影、フクロウ&猫の声の録音などで携わる。監修の写真集『フクとマリモ』と原案コミックス『フクとマリモのHUKULOU COFFEEへようこそ』は台湾版も好評発売中。大阪で猫カフェ『HUKULOU COFFEE』を営業中。
文/井上加織