イヤイヤは自立心が育っている証拠
子どもは1歳半を過ぎると、運動機能が発達して自分でできることが増え、「自分でやってみたい」という意識も高まります。
でも、この年代の子どもは身の回りのことをひとりでやり遂げられるほどには心身が発達しておらず、自分の感情をうまく言葉にすることができません。そのため、泣く、かんしゃくを起こすといったイヤイヤが多くみられますが、これは自立心が育っている証拠なので、子どもの成長の過程としては喜ばしいことなのです。
困ったときほど命令ではなく「お願い」を
「○○しなさい!」と命令すると「イヤ!」と返されがちなので、困ったときは「○○してもらえると、ママ(パパ)は助かるな」とお願いしてみましょう。言い方を変えてみると、コミュニケーションがとりやすくなります。
子ども自身が感情を出し切り、それを周囲の大人に受け止めてもらう体験を重ねれば、3歳を過ぎるとイヤイヤは消えていくことがほとんどです。おうちの方はイライラしてしまう自分を責めずに、この時期を乗り切っていきましょう。
イヤイヤ期に心がけたいポイント
①子どもの気持ちに共感する
子どもが「イヤ」と言い出したとき、「イヤなんだね」「○○がしたかったんだね」と共感すると、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じて安心できます。子どもの主張を受け入れられない場面でも、いきなり否定せずに、まずは子どもの気持ちに寄り添いましょう。
②子どもを待つ
行動するスピードを電車にたとえると、大人は新幹線、子どもは各駅停車。声をかけられてから、どうするかを考える時間も子どもには必要なので、大人と同じスピードでは動けません。すぐに動くことを期待せず、10秒待って再び声をかけるくらいの余裕をもって待つことが大切です。
③イヤイヤ感情につられずに対応する
子どものイヤイヤが激しいと、おうちの方もつられてイライラしてしまいがち。そんなときは、一旦、深呼吸をしてから淡々とした対応を心がけましょう。「○○をしたくて泣いているのね」と子どもの気持ちを言葉にしてみると、冷静になるきっかけをつかみやすくなります。
みんな悩んでる!シーン別イヤイヤ対応法
おうちの方は、特にどんなシーンでのイヤイヤに頭を悩ませているのでしょうか? 月刊誌『ベビーブック』読者の保護者アンケート結果(2021年4月号で実施)をもとに、困ることの多いイヤイヤへの対応法を中田先生にうかがいました。
8位 自分で歩こうとしない
子どもは10秒だけでも抱っこしてもらえると満たされるので、「あの信号まで」など目印を決め、まずは抱っこしましょう。その先は「どれだけひざを高く上げて歩けるかな?」など、楽しく歩くことに意識を向けるのがおすすめです。
できるだけ避けたい対応
・ 「後で抱っこするね」と言い、忘れてしまう
・ 「自分で歩きなさい」と命令する
7位 おもちゃを人にゆずれない
「今はこれで遊んでるんだよね」と子どもの気持ちに共感してから、相手の子には「今、楽しく遊んでいるから、少し待ってね」と伝えましょう。無理強いは不要ですが、その遊びに満足したタイミングで「遊び終わったら貸してあげようか?」と提案すると聞き入れられることもあります。
できるだけ避けたい対応
・ 「意地悪な子ね!」と決めつける
・ 「貸してあげなさい!」とおもちゃを勝手に渡す
6位 欲しいものを「買って」とねだる
前もって「今日は買わないよ」と約束し、ねだられたら「これが欲しいんだね」と共感して抱きしめてから、「でも今日は買わない日だよ」と毅然とした対応を。人の迷惑にならない安全な場所に移動して落ち着くのを待てると理想的ですが、難しければ抱き上げて去るのでかまいません。
できるだけ避けたい対応
・根負けして買ってしまう
・ 「ダメ!」とだけ言って、その場から無理やり連れ去る
5位 おもちゃを片づけない
まずは「いっぱい遊んだね!」と楽しく遊べたことを認める声かけをしましょう。それから「片づけようね」と声をかけて、何かひとつでも片づけることができたら、「お片づけできたね」と認めるようにします。後で続けて遊ぶ場合は、部屋の片隅に寄せておくだけでも問題ありません。
できるだけ避けたい対応
・ 「おもちゃを捨てるよ!」と言う
・ 子どもが作ったものを無断で片づけたり解体したりする
4位 外出先から帰りたがらない
「○時になったら帰るよ」ということを前もって子どもに伝えておきましょう。その時刻の10分前に「そろそろ帰るよ」、5分前に「もうすぐ帰るから片づけ始めようね」、伝えた時刻になったら「さあ、帰るよ」と、5分おきに声をかけると子どもは気持ちの準備ができます。
できるだけ避けたい対応
・ 「言うことを聞かないと、もうここに遊びに来ないよ」と言う
・ 約束の時刻になった途端に「帰るよ!」と言う
3位 ごはんを食べない
食卓のときは「どれなら食べられる?」と子どもに聞き、食べられそうなものだけを器に取り分けましょう。それを食べることができたら、「全部食べられたね。おいしかったね」と声をかけ、プラスの印象で食事を終えられるようにしてください。食べることを楽しく感じられるようになると、食べる意欲につながっていきます。
できるだけ避けたい対応
・無理やり口に入れようとする
・ 「これを食べたらチョコレートをあげる」などの交換条件を出す
2位 歯みがきを嫌がる
むし歯になるリスクを強調して怖がらせると、子どもは歯みがきにマイナスのイメージを持ってしまうことがあります。「歯をみがいてピッカピカにしよう!」など、プラスのイメージの声かけを心がけましょう。仕上げみがきでは、子どもが手鏡を持てるようであれば、口の中を見せながらみがくと何をしているのかがわかるので、子どもは安心できます。
できるだけ避けたい対応
・ 「バイキンがいっぱいで、むし歯になるよ!」と怖がらせる
・無理やり押さえつけてみがく
1位 食事中に遊び始める
遊び食べは食べものへの興味の表れなので、3分くらいは見守ってみましょう。その後、「食べもので遊ぶなら、ごはんはおしまいにするよ」と伝え、それでも遊び続けるようなら食事を切り上げます。歩き食べは転ぶと危険なので、黙認してはいけません。歩き出そうとしたら「座って食べるよ」とイスに座らせることを淡々とくり返しましょう。
できるだけ避けたい対応
・いきなり食事を下げる
・ 子どもを追いかけて食べさせる
・ 食卓に戻ってきたら食べさせることをくり返す
こんなとき、どうする?
お友だちをたたいてしまったとき
それ以上たたかないように体を張って止め、目を見て「たたいたら痛いんだよ!」と叱ります。相手がケガをしていたら、まずはケガの対処を。ケガがなければ、相手の親子に「少し待ってください」と伝え、「○○をされたのがイヤだったんだね」と子どもの気持ちに共感してから、「たたいてしまったから一緒に謝ろう」とうながしましょう。
身の危険があるとき
命にかかわるときは「危ない!」と抱き留めます。それ以外の場面では「そこから下りて」「手をつないで歩いて」など、してほしい行動をお願いしましょう。
教えてくれたのは
中田 馨先生
0~2歳児対象の中田家庭保育所の施設長。保育士歴23年。2児の母。著書に『イヤイヤ期専門保育士が答
える 子どものイヤイヤ こんなときどうする? 100のヒント』(実務教育出版)など。
『ベビーブック』2021年9月号別冊 イラスト/オブチミホ 文/安永美穂 構成/童夢
小学館の知育雑誌『ベビーブック』は、毎月1日発売。遊び・しつけ・知育が1冊にぎっしりとつまっています! アンパンマン、きかんしゃトーマス、いないいないばあっ!など人気キャラクターがお子さんの笑顔を引き出します。はってはがせるシール遊びや、しかけ遊びでお子さんも夢中になることまちがいなしです。