発達心理学からひもとく「イヤイヤ期」の役割。子どもの心に寄り添う対処法とは

おうちの人を悩ませるイヤイヤ期。しかし、イヤイヤ期は赤ちゃんから子どもへと成長する過程において、とても大切な時期です。イヤイヤ期が心の発達でどんな役割をもっているのか、そして、健全な発達のためにはどんなふうに対処すればいいのかについて、発達心理学の先生にうかがいました。

世界中の2歳児が「イヤ!」「NO!」

朝から夜まで「イヤイヤ!」ばかり、こんなのはうちの子だけ?と悩んでしまうかもしれませんが、心配は無用です。実は世界中の子どもが2歳から3歳ごろにかけて「イヤ!」と言うことがわかっています。アメリカでは「NO(ノー)!」、中国では「不(ブゥ)!」と言うのです。
日本では一般的に「イヤイヤ期」と呼ばれているこの時期のことを、発達心理学の世界では「第一次反抗期」と言います。しかし、これはおうちの人に不満があって反抗しているわけではありません。

イヤイヤは反抗ではなく自立への第一歩

2歳ごろになると、心の発達に伴って「自分でチャレンジしたい」という探求心が芽生えてきます。しかし、なかなかうまくできずイライラしてしまいます。そのもどかしい気持ちをうまく伝えられず、「イヤ!」と癇癪を起こしてしまうのです。
「自分でやりたい!」という欲求がどんどん出てくるというのは、発達においてとても重要であり、自立へと向かう第一歩です。この時期を大切にすることで、チャレンジ精神旺盛で意欲的な人に育っていくのです。

子どもの「イヤイヤ!」にこんな対応していませんか?

激しい「イヤイヤ!」

本気で叱ってしまう

子どもが自分に対して反抗しているのかと感じてしまい、本気で叱っていると互いにヒートアップして泥沼に。

 

何でも「自分で!」

「どうせできないんだから」

子どもに芽生えた自主性を否定し続けると、子どもの意欲を削いでしまうことも。

 

「ほしい!買って!」とだだをこねる

要求に応じてしまう

子どもの要求を何でも聞くのは甘やかしになり、過保護や過干渉につながって自立心の芽生えを阻害することに。

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イヤイヤは成長の証。子どもの心の発達プロセスを知ろう

誕生から3歳ごろまでの間に、子どもの心がどのように発達するかを解説します。発達には個人差がありますが、
目安として、イヤイヤ期がどんなふうに始まってどう卒業していくのかを見ていきましょう。

【誕生】泣くことで欲求を伝える

生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ周りの人たちの区別がつきません。また、自分の空腹や不快感などの欲求を、「泣く」という行為を通して伝えています。
この欲求に応えることの積み重ねで、赤ちゃんとおうちの人との愛着(※発達心理学上の概念で、親子間の心の奥底で深く築かれる情緒的な絆や信頼関係のこと。)が形成されていきます。

【6~7か月ごろ】人見知りが始まる

日ごろから自分のお世話をしてくれている人と知らない人の区別がつくようになり、見知らぬ人に対して警戒心を抱くようになります。これは、いつもお世話をしてくれる人との間に愛着が築かれている証です。

【1歳ごろ~】いろんなものに興味をもつ

愛着が形成されている人の存在を心の安全基地にしながら、「外の世界を見てみたい」という好奇心が湧いてきます。いろんなものに興味をもつようになり、少しずつ世界を広げる探索行動ができるようになります。

【1歳半ごろ~】「自分」というものがわかるようになる

心の発達に伴って、他の人とは違う「自分」というものがはっきりとわかるようになってきます。
例えば、鏡に映った自分の顔に何かついているのを見たときに、自分の顔を触る子は、「鏡に映っているのは自分だ」と認識していることになります。これを、「自己意識の芽生え」と言います。

【2歳ごろ~】イヤイヤ期

自発性が生まれる

自己意識が育つにつれ、「自分でやりたい」という自発性が強くなっていきます。この時期の自発性は、直感的な欲求であるため、やりたいという気持ちが強いわりに自分ではうまくできず、癇癪を起こしてしまうことがよくあります。

自己主張が強まる

自己意識が発達するに伴って「やりたい」「やりたくない」「ほしい」「こっちがいい」などの自分の意思がはっきりしてきて、それを主張したい!という気持ちが強くなります。
何が何でも自分の主張を通したいという強靭なこだわりも見える時期です。

気持ちをうまく言葉で表せない

自発性が芽生え、自分の意思もはっきりしてきたものの、言語発達はまだ不十分な状態で、気持ちや欲求をうまく言葉で表すことができません。
そのため、「イヤ!」という言葉を使って自分の意思を主張しようとするのです。

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【3歳ごろ~】イヤイヤ期卒業

自分の気持ちを言葉で表現できる

徐々に自分の気持ちを言葉で表現できるようになってくると、「いちいち癇癪を起こすよりも言葉で伝えたほうが効率がいい」ということがわかるようになります。これにより、イヤイヤ期を卒業していくのです。

子どもの心に寄り添う「イヤイヤ!」対処法

一段上に立って眺めよう

おうちの人のイライラは、子どもにも伝わります。子どもと同じレベルでバトルするのではなく、一段上に立って冷静でいられるよう意識してみましょう。子どもに「イヤ!」と言われると、まるで自分が否定されたと感じるかもしれませんが、決してそうではありません。

イヤイヤ!の癇癪が始まったら……

安全な場所であれば「これも成長の証!」と余裕をもって見守るといいでしょう。深呼吸したり、「寝癖がついてる」「顔真っ赤だな」などと子どもの一部分だけを観察してみると、ほほえましく思えるなど、一段上に立ちやす
くなります。

子どもの思いに対して肯定的に答えよう

子どもが自分でやりたいという意欲を出したら、「どうせできない」と頭から否定するのではなく、やらせるようにしましょう。やり終えたら、多少手伝ってあげたとしても「できたね!」と喜びながら肯定的に応えましょう。おうちの人が喜んでくれると、子どもの自発性や探求心がますます育っていきます。

できないのに、「自分で靴下をはく!」と主張したら……

かかとを入れるところは一緒に手伝ってあげて、上に伸ばすところは自分でトライ。
成功体験の積み重ねが意欲を育てます。

子どもの気持ちを言葉にして伝えよう

自分の気持ちや欲求を言葉で表すことがイヤイヤ期卒業への近道ですが、言葉というものは脳の中から勝手に生まれるものではなく、経験から獲得していくものです。周りの大人が子どもの気持ちを推測しながら代弁してあげることで、「自分は今こういう気持ちなんだ」と気持ちと言葉がリンクするようになり、気持ちや欲求を言葉で表現できるようになっていきます。
自分の気持ちを言葉にする能力は、子どものころだけでなく大人になってからもとても大切なので、この時期からいろんな言葉をかけてあげるといいでしょう。

紙パックジュースを前にイヤイヤが始まったら……

「自分でストローをさしたかったのかな? 悔しかったね」「りんご味のほうがよかったから悲しいのかな?」など、イヤイヤの理由とその気持ちをいろいろと想像しながら声をかけてみましょう。

できたときにこそ言葉にしてほめよう

おうちの人はダメなときばかり注意がいき、できているときは見ていないことが多いのですが、できているときこそきちんと見てあげて、「すごいね、ちゃんとできているね!」とほめてあげましょう。おうちの人が認めてくれたこと、喜んでくれたことに対してもっとやりたいという欲求が育ちます。

約束を守れたときは……

「ママとの約束、覚えていてくれたんだね!」「約束守れて、すごいね!」「ママ、うれしいな」などと、言葉にしてほめましょう。

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お話をうかがったのは

渡辺弥生先生

法政大学文学部心理学科教授。専門は発達心理学、発達臨床心理学。著書に『まんがでわかる 発達心理学』(講談社)、『絵で見てわかる「しぐさ」で子どもの心がわかる本』(PHP研究所)など多数。

 

 

 

イラスト/石塚ワカメ デザイン/平野 晶 文/洪 愛舜 構成/童夢

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