赤ちゃんから2歳のイヤイヤ期まで、発達に関するお悩みに小児科医が回答

体も心もぐんぐん成長する、1歳、2歳、3歳の子どもたち。
この時期の発達をサポートするには、親子のコミュニケーションを楽しみながら、さまざまな体験を通じて好奇心を育んでいくことが大切です。

1歳、2歳、3歳、それぞれの時期に必要な働きかけを

生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、生きるために必要最低限の機能だけが備わっている状態で、「運動する」「共感する」「聞く・話す」といった機能は、生後さまざまな刺激を受ける中で発達していきます。これらの機能がめざましい発達をとげる1~3歳では、それぞれの時期に子どもが必要としている働きかけをすることが大切です。

周りの子と比べたり、できないことをやらせようとしないで

歩けるようになってから階段の上り下りにも挑戦するというように、子どもは段階を踏みながら、できることを増やしていきます。発達には個人差があるため、まわりの子と比べたり、できないことを先取りしてやらせようとしたりせずに、その子が今やりたいことに取り組めるようにサポートしていきましょう。

 

2歳ごろのイヤイヤ期の特徴は?

おうちの方との共感やアイコンタクトを求める

2歳頃までの子どもは、初めてのことに直面するとおうちの方を振り返り、どうすればよいかを確かめようとします。また、何かをやりとげたときもおうちの方を振り返るので、そのときに子どもの喜びに共感しながらほめてあげると、自信につながります。おうちの方が目を合わせてコミュニケーションをとることで、子どもは「何がよくて何がいけないのか」という基準や社会性を身につけていくことができるのです。

必要なタイミングでの共感が心の成長に不可欠

心の発達には、子どもがおうちの方を必要としたタイミングで、自分を見守るまなざしを感じ取れるかが大きな影響を与えます。親子の時間はできるだけスマホなどから目を離し、子どもにやさしいまなざしを注ぎましょう。

1歳、2歳、3歳児のからだの発達を知ろう

全身を動かすことが脳の発達をうながす

体を動かすことは、心肺機能を高めたり、筋力をつけたりするだけでなく、脳の発達もうながします。ハイハイのように左右の手足を交互に動かす動作をくり返すと、“感じる脳”である右脳と“考える脳”である左脳をつなぐ「脳梁」が発達し、右脳と左脳の情報のやり取りがスムーズに。外遊びで体をたくさん動かしたり、さまざまな刺激を受けたりすると、集中力や感情をコントロールする「前頭前野」が活発に動くようになります。 1~3歳の子育てで大切なのは、思い切り全身を動かせるように外遊びをさせてあげること。動物園などに出かけ、さまざまな音、匂い、感触などを五感で感じ取ることも、脳の発達をうながすには効果的です。

手指を使う遊びもたっぷりと

「握る」「つまむ」「持つ」といった手指の動きも、成長につれて少しずつ器用になっていきます。ただし、子どもはいきなりスプーンなどの道具を上手に使えるようになるわけではないので、遊びの中で手指を動かす練習をする必要があります。 「スプーンですくって食べる」という動きをサポートするのであれば、おうちの方がゆっくりとした動きでお手本を見せてあげるとともに、砂遊びや水遊びでスコップやお玉を使って「すくう」動きに挑戦するというように、その動きにつながる遊びをたくさん経験させることが大切です。粘土・ぬり絵・のりやはさみを使う工作などにも取り組み、親子で手指を使う遊びを楽しめるといいですね。

ハイハイやひざをつかない四つんばい歩きなど、両手両足を交互に動かす動きは、筋力をつけるとともに脳の情報処理力も高めます。

1歳,2歳,3歳児のからだの発達に関するお悩み!「うちの子、成長が遅い?」

立てるようになったのに、ハイハイばかりで歩こうとしません。 (1歳0か月)

ハイハイは脳の発達をうながす動きなので、無理にやめさせる必要はありません。「ハイハイをして脳をきたえているのね」と、あたたかく見守りましょう。足の力がついてくれば立って歩くようになるので、危険なものがなく歩きやすい環境を整えて。

家の中では歩けても、外で靴をはかせると歩きません。(1歳3か月)

慎重なタイプの子の場合、靴をはいて歩く感覚や外の環境に慣れるまでに少し時間がかかることもあります。靴はかかとをしっかり支えて足首まで包むタイプのものを選び、つま先に5㎜程度の余裕があるサイズを用意すると歩きやすくなります。

小食で好き嫌いも多く、体重があまり増えなくて心配です。(1歳11か月)

元気よく過ごせていれば、基本的には心配ありません。残さず食べるよう厳しく注意すると、プレッシャーを感じて食べる量が減ることもあるため、食事のときは楽しい雰囲気づくりを。苦手な食材は細かく刻んで調理すると食べやすくなります。

足がX脚のせいか、転びやすいのが気がかりです。(2歳2か月)

この年齢の子どもがX脚なのは生理的なもので、成長とともになおり、 小学校に入る頃には気にならなくなることがほとんどです。ただし、歩行が不安定な状態が続いたり、足の痛みを訴えたりする場合は、小児科に相談するとよいでしょう。

スプーンをグーの手で握ってしまい、正しく持てません。(2歳4か月)

おはじきのような小さなものを指でつまめれば、手指の発達としては問題ありません。2歳代は、グーの手で握る持ち方から、親指・人さし指・中指で支える持ち方に移行していく時期なので、おうちの方が実際にやってみせながら教えていきましょう。

ボタンを留めるなど、指先を使った細かい動作が苦手です。(3歳5か月)

指先を器用に動かすには、「つまむ」動作をたくさん経験することが大切です。折り紙をしたり、積み木を積み上げたりして、遊びの中で楽しみながら指先を使う機会を増やしていきましょう。洗濯ばさみで洗濯物をとめるお手伝いもおすすめです。

赤ちゃん期に心の発達の基礎が築かれる

生後3か月から1歳半頃までに気持ちを通わせる経験を

生まれたばかりの赤ちゃんには、「心地よくなりたい」「甘えたい」といった欲求があります。おうちの方が赤ちゃんの泣き声に応じてお世話をすることで、これらの欲求が満たされると、赤ちゃんはその人との間に信頼関係(愛着)を築くことができます。「何かあればこの人に守ってもらえるから大丈夫」という安心感を抱くことで、子どもは外の世界へと関心を広げ、他の人ともかかわりを持てるようになるのです。 生きる基礎になるこの信頼関係が築かれるのは、生後3か月から1歳半頃までといわれています。他者の気持ちに共感するといった心の発達をうながすには、この時期におうちの方と気持ちを通わせる経験を重ねておきましょう。

イヤイヤ期は脳の回路が増えている証拠。接し方のポイントは?

叱らずに抱きしめて安心させ、深呼吸を

1歳半から3歳頃の子どもの脳は、大人の7倍も激しく活動しています。2歳前後の子どもがイヤイヤをくり返し、かんしゃくを起こしやすくなるのは、脳の神経回路が一気に増えて常に興奮しているような状態になるため。子どもが「イヤ!」と感情的になったときは叱らずに抱きしめて安心させ、深呼吸をさせて興奮をしずめましょう。そして落ち着いてから、教えるべきことを短い言葉で伝えることが大切です。

2歳前後から始まるイヤイヤ期。いつまで続く?

3歳を過ぎると自分以外の世界が広がる

3歳を過ぎると、自分中心の世界から、友だちや周囲のことにも関心を広げられるようになります。がまんもできるようになるので、「周りの人の迷惑になるから静かにしようね」と理由を説明しながら社会のルールを教えていきましょう。

社会のルールを教えるときは、「ダメ!」と頭ごなしに叱らずに、子どもと目線を合わせてから静かに短い言葉でさとすことを心がけて。

1歳,2歳,3歳児ママたちのお悩み!うちの子、イヤイヤがひどいんです…

以下『ベビーブック』読者ママたちのお悩みに、渋井先生が答えてくれました。ママやパパにとっては「イヤイヤ」「わがまま」と思える行動も、発達に照らし合わせると普通のこと、という場合も。

思い通りにならないと大泣きしたり暴れたりして困ります。(1歳9か月)

脳の神経回路が急激に増える2歳前後の時期は、脳が興奮状態なのでイライラしやすくなります。そのことを理解して、「こうしたかったのね」と気持ちを受け止めて安心させてから、「でもこれはダメだから、こうしようね」と伝えていきましょう。

お友だちをたたくなど、乱暴な行動が多くて気になります。(2歳3か月)

2歳はお友だちと一緒に遊ぶのはまだ難しい年齢ですが、「イヤなときはたたかずに言葉で伝えようね」ということは教える必要があります。子どもは大人のまねをするので、乱暴な行動を止めるときは、子どもをたたかずにやさしく抱きとめましょう。

二歳児、三歳児にはどこまで「しつけ」をするべき?

幼児教室で先生が話していても、落ち着いて座っていられません。(2歳8か月)

この年齢の子どもが長時間落ち着いて座っていられないというのは、よくあることです。時と場合によっては座っていられることもあるなら、心配ありません。「今はお話を聞く時間だから静かにしようね」と、その都度、声をかけてあげてください。

人見知りでママから離れず、公園でも他の子と遊ぼうとしません。(2歳10か月)

「ママがいるから大丈夫」と安心できると、他の子ともかかわりを持てるようになります。日頃からスキンシップやアイコンタクトで気持ちを受け止め、外出時は子どもがその場に慣れるまではそばにいて、少しずつ距離を離していきましょう。

お友だちにおもちゃを貸すことができず、ひとり占めしたがります。(3歳3か月)

3歳では自然なことなので、貸すように無理強いする必要はありません。ただ、3歳を過ぎると多少はがまんもできるようになるので、「貸してもらえなかったら、どんな気持ちがするかな?」と相手の気持ちを考えさせる声かけもできるといいですね。

数や文字の認識が、まわりの子より遅れていて心配です。(3歳6か月)

子どもは実体験の中で興味を持つようになるので、ワークで教えるのではなく、おもちゃなどを見せて「いくつかな?」と数える体験を。大きなひらがなで書かれた絵本をくり返し一緒に読むと、音と文字が結びつき、ひらがなにも興味がわくはずです。

 

0歳から3歳までのことばの発達

五感を刺激して言葉のシャワーを

脳の中で言語機能を司る部分が最も多くのことを吸収するのは、生後6か月から3歳半頃までといわれています。人間は「自分はどう思うか」「次にどう行動するか」を考えるときに、言葉によって思考や感情を整理します。そのため、言葉はコミュニケーションの手段としてだけではなく、物事を考えたり、感情や行動をコントロールしたりする手段としても重要です。

言葉を発するには、おうちの人との会話や絵本の読み聞かせなどを通じて、さまざまな言葉にふれ、その意味を理解していくというステップを踏む必要があります。日頃から、たくさんの言葉のシャワーを浴びせることで「言葉を発する」段階への基礎をつくりましょう。

子どもの意思表示を待ちましょう

自分と他人の区別がつく1歳半頃からは、子どもに自分の気持ちや要求を伝えさせる機会を増やしていきましょう。それまでは右脳で怒りを感じたらすぐに泣いていたところを、言葉で自分の思いを表現する訓練を重ねることで、「右脳で感じた怒りを一旦おさえてから左脳で言葉にして伝える」という新しい行動パターンを習得できます。 言葉を話すことは、自分の気持ちを表現するだけではなく、相手への理解を深めるためにも重要なことです。子ども自身の「伝えたい」という意欲を尊重するため、おうちの方は「こうしたいのね」と先回りして言うのをやめ、子どもが話そうとしているときは待つことを心がけましょう。

絵本を読み聞かせたり、絵を見ながら「クマさんだね」「ねんねしているね」とお話をしたりして、たくさんの言葉のシャワーを。

1歳,2歳,3歳児のことばの発達に関するお悩み!

動くものはすべて「ワンワン」と言うのですが、直すべき?(1歳6か月)

その都度、言い方を直そうとするよりも、普段から日常生活の中でたくさんの言葉にふれさせることを心がけましょう。実物や絵を見たときに「〇〇だね」と話しかけていくうちに、自然と正しい言い方ができるようになりますよ。

欲しいものがあっても手でさし示すだけで言葉で伝えようとしません。(1歳11か月)

「あれが欲しいのね」と察するのをやめ、「言葉で言わないとわからないよ。どうしたいの?」と声かけを。1歳半を過ぎて自分と他人の区別がつくようになったら、「自分の気持ちを伝えないと相手にはわかってもらえない」と教えることも大切です。

使う言葉の種類があまり増えていないようで気になります。(2歳5か月)

絵を見て言われたものを指さしたり、おうちの方の話を理解したりできていれば基本的には心配ありません。子どもに質問したときは、すぐに答えが返ってこなくても本人の発言を待ち、自分の意思を言葉で伝えるようにうながしていきましょう。

言葉を話すときに最初の音がつかえてしまいます。(3歳4か月)

言いたいことがたくさんあり、どれから言葉にするか迷うとつかえてしまうことも。多くの場合は話すことに慣れれば直ります。緊張が強い場合もつかえやすくなるので、間違いを注意したり急かしたりせずに、本人のペースで話せるよう配慮を。

実際には食べていないのに「昨日ケーキを食べたよ」と話していました。うそつきなの?(3歳5か月)

おしゃべりが上手になるこの年齢では、現実と空想が入り交じるのはよくあること。うそをつくつもりで言っているわけではないので、「あれ? 昨日は食べてないよね」とサラリと受け流す程度で問題ありません。

 

 

気になることがあれば検診で相談を

発達に関して不安な点は、1歳6か月児健診や3歳児健診で相談を。相談することで適切なサポートが受けられます。健診のない時期に気になることが生じた場合は、小児科を受診してみるのもよいでしょう。

渋井展子先生

しぶいこどもクリニック院長。小児科専門医・小児神経専門医。発達障害診療医。著書『乳児期の親と子の絆をめぐって』(彩流社)では、最新の医学的知識に基づき子育てで大切なことを解説。1男1女の母でもある。

 

イラスト/seesaw.
出典:『ベビーブック』2018年5月号

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