アンチョビとは
アンチョビはカタクチイワシを塩蔵(えんぞう)油漬けにしたものです。塩蔵とは、濃度の高い塩の作用によって微生物の繁殖を抑え、腐りやすい食材を貯蔵する保存方法です。古くから塩が豊富な地域では、魚介類の保存に使われてきました。
渦状に巻いたものをロール・アンチョビ、長いままのものをフィレ・アンチョビと呼び、オイルに漬けられています。また、チューブに詰めたペースト状の商品もあります。
カタクチイワシの発酵食品
カタクチイワシを10時間前後、浸漬して身を締め、頭と内臓を除きます。そして食塩、香辛料などと共に漬け、半年以上熟成させます。さらに皮と中骨を取り除いた後、缶や瓶でオイル漬けにします。たくさんの手間がかけられた食品なんですね。
日本では魚醤(ぎょしょう)という発酵食品がありますが、それのヨーロッパ風といったところですね。
よく似た加工食品として「オイルサーディン」があります。こちらは加熱したオイル漬けで、そのままでも食べることができます。アンチョビは塩漬けなのでかなり塩辛く、調味料のように使うことが多いです。
発祥は
主な生産地はイタリア、スペイン、モロッコです。
ペースト状にしてサンドイッチやカナッペに付けて食べるほか、ピザやパスタはもちろん、サラダの味付けにも使われます。アヒージョ、バーニャカウダなどの調理にも欠かせず、古代より人々の暮らしになくてはならない、イワシの加工品として受け継がれてきました。
アンチョビの人気おすすめ商品
輸入食材を扱う人気のお店、「カルディ」で人気の商品をご紹介します。
GIA アンチョビペースト
ペーストされたアンチョビが、歯磨き粉のようにチューブ入りになっている商品です。生姜やにんにくのチューブと同じ感覚で使うことができ、ほぐす必要もありません。
スカーリアさんのアンチョビフィレ瓶
イタリア、シチリア島のSCALIA(スカーリア)社の商品です。長年にわたり日本へ輸入されており、比較的臭みが少ないアンチョビです。缶入り、チューブタイプ、大容量など、種類が豊富に揃います。
アンチョビ保存の基礎知識
缶詰、瓶詰めは開封前の保存にはあまり気を使う必要はありませんが、おさらいをかねて確認します。
開封前は常温で
缶詰、瓶詰めのアンチョビは、直射日光と高温多湿を避けて、常温で保存します。0℃を下回ると中身が凍ってしまい、逆に高すぎると腐敗してしまうこともあります。湿度の高い場所での保存は、缶の劣化につながるので避けてください。缶や瓶詰めは非常食にも用いられますが、保存に限界はあるので気をつけて。
賞味期限
缶の底面を見ると、記号や数字を含む文字列の中に6桁の数字が含まれていますが、これが賞味期限です。例えば、「22.06.17」。これは、西暦の下二桁、月、日を意味しており、2022年06月17日ですね。ただし、賞味期限が長い食品は、日付を記載しなくても良いとされているため、4桁の場合もあります。
傷むとどうなるのか
中身が発酵、腐敗している場合は、ガスの発生により容器や蓋が膨らんできます。また、金属の劣化によって穴が開き、液漏れやサビが発生することもあります。その場合は残念ですが破棄してください。
また、アンチョビの劣化を見極めるには、イワシの身やオイルの異臭、変色がないか、乾燥していないか、カビの発生がないかを確認してください。なにか異変がある場合は、食べるのは控えてください。
冷蔵して保存
開封した後の保存方法をみていきます。
冷蔵
缶詰の開封後は、中身を別容器に移し替えてください。缶は空気に触れると内側が劣化する場合もあります。瓶詰めならそのままでかまいません。冷蔵保存、または冷暗所に保存してください。
オイルは冷やすと固まりますが、温度が上がれば戻ります。イワシの身にカビが生えやすいので、身がオイルから出ないように、オイルにしっかり浸すことが大切です。
賞味期限は
開封後の賞味期限は明確にされていません。もともと保存食のアンチョビですが、開封後のように保存環境に大きな変化があった後は、注意が必要です。
目安としては、2週間程度で食べきれば安心です。塩蔵、オイル漬けでも腐敗しないわけではないので、くれぐれも食材の変化には気をつけてくださいね。
冷凍して保存
開封後のアンチョビを、長く保存したい場合は冷凍すると良いですよ。
冷凍
オイルを凍結してしまうと風味が劣化する恐れがあるので、オイルからイワシの身を取り出し、ラップで包んでから冷凍用保存袋に入れて保存します。使いやすい量に小分けしておくと便利です。
解凍方法は
しばらく置いておくと柔らかくなってくるので、そのまま使うことができます。加熱調理なら凍ったままで加えることもできます。
保存期限は
冷凍したアンチョビの保存期限も明確にはありませんが、長く冷凍すると風味は落ちてきます。1か月程度を目安に保存してください。他の食材の臭い移りや、霜の発生など、どうしても劣化することは避けられないようです。
最後まで使いきれるレシピ
少量残ったアンチョビを使い切りたい時にも使えるレシピを、3品ご紹介します。どれも、わずかな手間でおしゃれな1品に仕上がるんですよ。
アンチョビポテト
にんにくとアンチョビを加えるだけで、いつものポテトがバル風に。シンプルなフライドポテトもおいしいですが、ひとひねり加えた1品として、覚えておくと便利です。
◆材料
じゃがいも 3個
にんにく 1/2片
アンチョビ 2枚
片栗粉 小さじ2
塩 ひとつまみ
黒胡椒 少々
オリーブオイル 大さじ2
ローズマリー 1本(お好みで)
◆作り方
【1】くし切りにしたじゃがいもを蒸します。電子レンジを使うほか、茹で、蒸しでも良いので、やりやすい方法を選んでください。この後、さらに加熱するので、少し固めでもOKです。
【2】蒸したじゃがいもに片栗粉をまぶします。
【3】オリーブオイルをフライパンに温め、みじん切りにしたにんにくを炒めます。香りがしてきたらじゃがいもを入れて、香ばしい焼き色がつくまで加熱します。
【4】刻んだアンチョビを加え、塩、黒胡椒で味を整えます。お好みでローズマリーも加えてください。
アンチョビパスタ
こちらもシンプルなペペロンチーノにアンチョビを加えました。アンチョビはメーカーによって塩辛さが違います。最後に加える塩を増減することで調節してください。
◆材料
スパゲッティ 100g
アンチョビ 3〜4枚
オイル 大さじ2
にんにく 1片
鷹の爪 1/2〜1本
塩、こしょう 適量
イタリアンパセリ 適量
◆作り方
【1】パスタは頃合いを見ながら茹ではじめ、少し固めに茹であげます。
【2】にんにくをみじん切り、鷹の爪を小口切りにして、アンチョビを刻みます。
【3】フライパンにオリーブオイルを温め、にんにくと鷹の爪を炒めて香りを移します。
【4】フライパンに、スパゲッティの茹で汁をお玉に1杯加え、しっかりと沸騰させてください。沸騰の泡によって乳化が進みます。
【5】オイルと茹で汁が乳化して白っぽい液体になったら、アンチョビを加えて炒め、茹で上げたパスタを加えます。
【6】ソースとパスタをよくかき混ぜてなじませ、塩と黒胡椒で味を整えます。器に盛り付けてイタリアンパセリを散らせば完成です。
たっぷり野菜ピザ
ナスやズッキーニ、トマトと夏野菜のオンパレード。カジュアルなピザランチも野菜づくめで。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
【A】生地
強力粉 150g
薄力粉 50g
ベーキングパウダー 小さじ1/2
塩 小さじ1/2
オリーブオイル 小さじ2
砂糖 小さじ1
水 90ml
※市販のピザ生地を使用してもよい。
【B】ソース
トマトペースト 20g
アンチョビペースト 5g
ケーパー(みじん切り) 5g(なくても可)
おろしにんにく 小さじ1/2
オレガノ(ドライ) 小さじ1/2(バジル、ローズマリー、タイムなどでも可)
オリーブオイル 大さじ1
【C】具材
ズッキーニ 1/2本
ナス 1本
ミニトマト 6個
ピーマン 1個
とうもろこし 1/4本
とろけるチーズ 120g
◆作り方
【1】【A】をボウルに入れて手で混ぜる。ひとまとめにして台の上に出し、まんべんなく混ざるように軽くこねる。
【2】【B】はよく混ぜる。
【3】【C】のズッキーニ、ナス、トマト、ピーマン(種を取る)は、すべて輪切りにする。とうもろこしは実と芯の間に包丁を入れ、芯から実を取りはずす。
【4】【1】を2等分に切って丸め、5分ほど休ませ、直径20cmの円形になるように薄くのばす。
【5】【4】に【2】を塗り、【3】とチーズをのせて焼く。
オーブン:予熱後、250度で5~10分、軽くこげ目がつくまで。
フライパン:予熱後、弱めの中火で10~20分。チーズがとけて具に火が通るまで。
オーブントースター:900Wの場合、予熱後、6分~12分。
魚焼きグリル:(両面焼きタイプのみ)いったん丸めて広げたホイルにのせ、中火で5~10分。
※時間は目安。材料の大きさや調理器具によって、様子を見ながら加減してください。
教えてくれたのは
小山有希さん
料理研究家。元日本料理屋の両親、蕎麦屋の祖父母、元和菓子屋経営の義祖父母を持つ、食業界のサラブレッド。おいしく食べて健康に近づける「医食同源」をモットーとしたレシピに定評がある。1男1女の母。
『めばえ』2016年7月号
保存したアンチョビで、新しいメニューにも挑戦!
アンチョビは塩辛いので、大量に消費することは少ないものですが、丁寧に保存しておくと、早めに食べきる意識も高まります。そして、オリーブオイルとにんにくをベースに、食材を選ぶと味がまとまりやすいので、試してみてください。案外シンプルな工程で、お店で食べる味と同じに仕上がりますよ。新しいメニューにもチャレンジしながら、残さずに味わいたいですね。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)