おまたせしました!スタジオジブリ初のフル3DCGアニメーション映画『劇場版 アーヤと魔女』がようやく8月27日より公開されました。企画が数多くの名作を生み出してきたジブリのレジェンド・宮崎駿、監督が『ゲド戦記』(06)や『コクリコ坂から』(11)の宮崎吾朗と、宮崎親子のタッグ作としても注目されています。
実は『アーヤと魔女』という作品は、映画公開に先行して、昨年12月30日にNHK総合テレビで一度放送されたほか、三鷹の森ジブリ美術館でも公開されていたので、すでに観賞済みだというファミリーも多いのでは。でも、劇場版にはその名のとおり、映画館でこそ観るべき要素がたくさんあります。
新たなカットが追加されているだけではなく、もともと映像・音響を気合十分の映画的フォーマットで制作された作品なので、スクリーンで観れば、3DCGアニメならではの醍醐味が味わえると思います。個人的には、コロナ禍の憂鬱感を吹き飛ばすような、ノリノリにアップテンポな主題歌「Don’t disturb me」をはじめ、音楽もエッジが効いているし、物語も非常にポジティブなので、観れば晴れやかな気分になれそうです。
原作は『ハウルの動く城』のダイアナ・ウィン・ジョーンズ
原作は、宮崎駿監督作『ハウルの動く城』(04)の原作者で知られるイギリスの作家、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童書。主人公は「子どもの家」で育った10歳の少女・アーヤことアヤツルで、ある日、魔女のベラ・ヤーガにお手伝いとして引き取られます。
勝ち気で頭のいいアーヤはベラ・ヤーガに「私に魔法を教えてくれるなら、おばさんの助手になってあげる」と交換条件を出しますが、一向に聞き入れてもらえません。そこでアーヤは知恵をしぼり、魔法使いの秘密を知る黒猫・トーマスの力を借りて、反撃を始めます!
声優を務めるのが、ベラ・ヤーガ役に寺島しのぶ、怪しい長身の男マンドレーク役に豊川悦司、トーマス役に濱田岳と、適材適所なキャスティングが素晴らしいですが、特筆すべきはオーディションで選ばれたアーヤ役の平澤宏々路(こころ)です。負けん気の強いアーヤを等身大の声で生き生きと好演しています。
宮崎駿も太鼓判を押した今の時代に必要なたくましいヒロイン像
魔女や黒猫というモチーフを聞くと、宮崎駿監督作『魔女の宅急便』(89)を思い浮かべる方も多いと思いますが、今回身寄りのないアーヤが、幸せな家庭の養女となるのではなく、お手伝いとしてこきつかわれるという過酷な設定は、まさに「シンデレラ」を彷彿させます。
でも、アーヤはそんな自らの境遇を憂うことなく、機転を利かせて、自らの運命を切り開いていこうと大奮闘していきます。よく動く眉毛やくるくると動く大きな瞳は、まさにエネルギーの塊のよう。宮崎駿監督は、そんなアーヤの“したたかさ”が大いに気に入った様子です。
まさに、たくましいアーヤは、コロナ禍を生きる私たちに元気や勇気を与えてくれそう。これまでにないジブリ映画のアグレッシブなヒロイン、アーヤに会いに、ぜひ親子で映画館を訪れてみてください。
監督:宮崎吾朗 原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 田中薫子 訳 佐竹美保 絵/徳間書店刊 原案:宮崎駿 脚本:宮崎吾朗、丹羽圭子
声の出演:寺島しのぶ、豊川悦司、濱田岳、 平澤宏々路、シェリナ・ムナフ…ほか
公式HP: https://www.aya-and-the-witch.jp
文/山崎伸子
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