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おたふく風邪はどんな病気?症状は?
正式名称は「流行性耳下腺炎」。耳の下が腫れるのが特徴
おたふく風邪は、耳の下~あごのあたり(耳下腺や顎下腺)がぷっくり腫れるウイルス感染症です。子どもの頃にかかったと覚えている人も多いでしょう。正式には「流行性耳下腺炎」といい、腫れは両側の場合も、片側の場合もあります。
おたふく風邪の症状は痛みや発熱。症状が出ない人からもうつる
おたふく風邪の原因は、ムンプスウイルスです。接触感染や飛沫感染でうつり、2~3週間の潜伏期間の後、腫れや痛み、発熱などの症状が出ます。ただ、10人に3人は不顕性感染といって、症状が出ないことがあります(ただし感染源にはなるので、注意が必要です)。
子どものおたふく風邪に関するママパパの体験談
HugKumでは、3~12歳のお子さんがいるママパパに子どものおたふく風邪についてアンケート調査し、体験談を教えてもらいました。
おたふく風邪の治療法、対処法は?
痛みをやわらげる解熱鎮痛剤などで治療
おたふく風邪にかかったら、解熱鎮痛剤を使うなどの対症療法をしますが、多くは1~2週間のうちに自然によくなるので、軽い病気と思われているかもしれません。しかし、おたふく風邪から難聴になることがあるのです。それを、ムンプス難聴といいます。
おたふく風邪からなる、ムンプス難聴とは?
ムンプスウイルスが血液を通って内耳に入ると、内耳が障害されます。内耳は耳の一番奥にあり、音を感じ取ってその信号を聴神経から脳へと送る器官です。内耳が障害されると音を感じ取れなくなるため、高度の難聴になり、治りません。大部分は片耳に発症しますが、まれに両耳が聞こえなくなることもあります。
おたふく風邪が流行するのはいつの季節?
おたふく風邪は年間を通して流行しますが、特に冬~春が多く、4、5年ごとに大きな流行を繰り返します。
ムンプス難聴になりやすいのは、おたふく風邪にかかりやすい3歳~6歳の子供。以前は、感染した1万人に1人程度と、極めてまれな病気と考えられていましたが、最近の調査では、数百人~1000人に1人の発症率と、まれではないことがわかってきました。
おたふく風邪とムンプス難聴の、唯一の予防法は予防接種!
予防法は、予防接種を受けること。ワクチンを定期接種している国々では、おたふく風邪は撲滅しかかっており、従ってムンプス難聴もほとんど発症しません。日本は任意接種で有料のため、接種率は50%ほどで、流行を繰り返しています。
2回の予防接種の間隔は
1回接種では免疫のつかない子が10人に1人程度いるので、予防接種は2回行います。1歳過ぎたら早めに1回目を、3~4年ほど開けて2回目を接種し、免疫を確実なものにすることが大切です。1回目も2回目も接種率が95%以上あれば、流行はほぼ抑えられるといわれています。3歳~6歳の子供の場合、未接種で、なおかつ、おたふく風邪にかかったことがない子は、かかりつけ医に相談して、まず1回目を受けるといいと思います。
現在のおたふく風邪ワクチンは、この数十年間、重い副反応の報告がほとんどなく、最も安全なワクチンの一つといえます。また今後の定期接種化に向け、さらに安全性の高いワクチンが開発中です。
もしムンプス難聴になってしまったら?
おたふく風邪にかかったら、子供の耳の聞こえチェックを
子どもは無自覚なことが多く、片耳が難聴になっても痛みなどがないため、発症に気づかないことも珍しくありません。小学校の入学時健診で、発見されることが多いようです。おたふく風邪にかかったり、周囲で流行している時は、耳のそばで指をこすり、聞こえのチェックをしてみましょう。難聴の疑いがあるなら耳鼻科を受診し、聴力検査をしてください。
片耳の難聴は、日常生活には支障がないとされていますが、音の方向がわからないなど、不便を感じることもあります。親や周囲の大人が理解して支え、ストレスを軽くしてあげましょう。
おたふく風邪から発展する病気も。大人も注意が必要
睾丸炎、卵巣炎による不妊など、大人がかかった場合は重篤に
子どもはおたふく風邪から、無菌性髄膜炎や脳炎、膵(臓)炎になることもあります。無菌性髄膜炎は、感染した子の100人に1~2人発症しますが、たいていは軽くすみます。膵炎も病後の経過はよく、回復します。
大人は、睾丸炎や卵巣炎を起こして不妊の原因になったり、妊婦さんがかかると、流産の原因にも。大人でもムンプス難聴は起こります。免疫のない人は、予防接種を受けることを勧めます。
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健康担当
粂川好男(くめかわ よしお) 先生
杉並堀ノ内クリニック院長
立教大卒業後、出版社に勤務した後、信州大医学部入学。国立国際医療センター、愛和病院で小児科全般の臨床経験を積む。安心と笑顔を持ち帰れるクリニックを目指す。小児科専門医。
イラスト/松木祐子 出典/『めばえ』 再構成/HugKum編集部