1、2、3歳の食事はしつけより「楽しさ」優先で!発達心理学者がママのお悩みに回答

食事を用意する親は「きちんと」「たくさん」食べてほしいと願いますが、現実はスゴイありさまになりがち…。食事初心者の1、2、3歳の子供たちには、何をどう伝えていけばよいのでしょうか。家庭の育児に詳しい菅野幸恵先生から、一番大事なポイントをうかがいました。

乳児期は、スキルより「楽しい食事」が大事!

食事はコミュニケーション

食事は生き物としてエネルギーを得る場ですが、「栄養摂取ができればいいの?」と考えてみると、そうではないですよね。人間は、誰かと一緒に楽しく食べる“共食”を好む生き物です。幼稚園や保育園でも、お友だちと一緒に食べるからうれしくて笑顔がこぼれます。人は社会の中でコミュニケーションしながら生きていく動物です。食卓は栄養をとるだけではなく、人とコミュニケーションする場なのです。

1〜3歳の時期は食事を楽しむ感覚を

ですから1~3歳は「一緒に食べるとおいしい」「食事はうれしい場」という感覚を育てることが一番大事です。そのためには、ママやパパ自身が、食事を楽しむ気持ちをもってほしいですね。

 

しつけで罰はNO!まずは環境作りを

食事のしつけは必要ですが、よくないことをしたからといって罰を与えるのはしつけになりません。どうすればよいのかが伝わらないばかりか、食事が楽しくない場になってしまいます。

 

乳児期の親にありがちな食事にまつわる「思い込み」って!?

親が食べさせなくちゃ

毎回の食事を用意するのはもちろん大人の役目。でも、本人が自分で食べ物を口に運べるようになったら、基本的に親が口に入れて食べさせる必要はありません。自分で食べるのがおぼつかないときに、食事の後半で少し手伝えばOKです。

バランスよく栄養をとらせないと

メニュー作りでは、ある程度栄養バランスを考えておきますが、本人がまんべんなく食べなくても神経質にならないで。偏食を直すために工夫するのもよいのですが、努力はほどほどに。親が真剣になりすぎると、子どもにはプレッシャーです。

 

せっかく作ってあげたのに

食べる本人にもいろいろな都合があります。「食べてくれない」と相手を責めるのではなく、「今日は食べたくないんだな」とあっさり流して。忙しいときは調理を簡便にして、気力と体力を「楽しい食事」のために温存する方法も。

 

食事のしつけ、カギは「集中力」と「メリハリ」です

ベビブちゃんの食事準備といえば食べこぼし対策のエプロン、床にシート、お手ふきが定番ですね。その前に、心の準備をはかればもっと楽しい食事に近づきます。

 

乳児の集中力は5分!?

食べ物で遊んだり食事中に立ち歩いたりするのは、おなかが空いていない、あるいは集中力が途切れたから。子どもの集中力が続くのはせいぜい5分、長くても10分くらいです。たとえ空腹でテーブルに着いたとしても、少し食べて空腹感がまぎれれば、気が散り始めます。

大人はTVを見ながら食事ができますが、子どもはTVを見てしまうと、食べるほうがおろそかになってしまいます。「TVは消す」がおすすめです。気が散り始めたら、「これ、アンパンマンのほっぺみたいね」など料理や食材の話題で興味をひくのもいいでしょう。

ルーティンでメリハリをつけ、集中力を高めよう

保育園では遊びと食事の場面にメリハリをつけるように工夫しています。例えば、遊びに区切りをつけておもちゃを片づける→手を洗う→マットを敷く→自分のコップを出す→エプロンをつけてもらう→「いただきます」というように決まった一連の動き(ルーティン)があります。大人でも、ルーティンに乗って動くと心が整うもの。自分でテーブルマットを敷くだけでも、「これから食事」という切り替えに役立ちます。1歳半ごろになったら、わが家の食事のルーティンを決めましょう。

おうちルールを作ろう

食事のしつけは親の都合によって、ゆるくなったり厳しくなったりしやすいもの。これだけは子どもに教えたいという基本ルールは、おうちで話し合って決めておくと、あやふやになるのを防ぐことができます。「いただきます」「ごちそうさま」を言う、食事中は席を離れないなど、家族全員で意識するといいですね。ただし、ルールは家庭によってまちまち。他の家では他の家のルールに従うことも必要です。「うちではダメだけど、ここではいい」と教えましょう。ものごとは状況で変化するものがあると知るのも大事なことです。

 

年齢別 心得たいポイントはここ!

親は子どもをいつまでも赤ちゃん扱いしたり、逆に年齢よりも上に見て無茶な要求をしてしまったり…。年齢ごとのだいたいの発達を心得ておきましょう。

 

1歳

手づかみOK!主体的に「自分で」食べよう

手づかみでも自分で食べるのと、誰かに口に運んでもらう受け身の食事とでは、栄養は変わらなくても経験の中身は大違い。自分で食べるときは固さや温度も感触でわかります。自分で選んだ食べ物ですから、満足感がありおいしく食べられます。でも人に食べさせてもらうと、口に入るまでほとんど何もわかりません。遊びも学びも、主体的に参加すると豊かな経験になるのと同じです。スプーンやフォークはいつでも使えるように置いておきます。1歳半ごろまでは禁止はすくなめにして、自分で食べる楽しさを経験させて。

 

2歳

気分のムラが激しい反抗期。かむ力はまだまだ未熟

自分でやりたがるがうまくできない、大人が手を貸すと払いのける…そんな反抗期の時期です。食べ方にもムラが出ますが、「好き嫌い」と思い込まないで。単に食べ慣れない物への抵抗感や、奥歯が生えていないと繊維質がかみ切れないのが原因のことも。切り方を変えてみるなど、親の負担にならない範囲で工夫してみて。保育園など集団生活に入ると、友だちの影響で食べられることもあります。反抗期でも、食事中は立ち歩かないなどの基本的なルールは伝えていきましょう。親も余裕がなくなる時期ですが、ときには感情をぶつけあうのも親子だからできることです。

 

3歳

キッチンのお手伝いでいろいろな興味が広がります

言葉が増えて理屈がわかるようになってくるので、いろいろな面から食事にかかわれるようになります。料理に興味をもったら、できそうなことからスタート。子ども用の包丁で刃物の扱いを教える、野菜を洗う、野菜を育てて収穫するなどで、親子のコミュニケーションや食事への関心にもつながります。興味が少なそうなら「手伝ってね」とちょっとずつお願いしてみて。台所で料理の手順を眺めるだけでもおもしろいものです。幼稚園入園でお弁当が始まったら、食べきれるように好きなものを少なめにつめます。3歳の誕生日プレゼントはお弁当箱や食器セットもおすすめ。

 

食事の悩みは?『ベビーブック』読者1000人アンケート

子どもの食事で気になることランキング

1位 じっと座っていられない
2位 好き嫌いが多い
3位 遊びながら食べる
4位 食べる量が少ない
5位 食べ物をちらかす

年齢別では「ひとりで食べようとしない」が2歳で5位、3歳で4位に。自分で食べられるようになっても、おうちの人に相手をしてほしい、一緒に食べたいという気持ちが表れているようです。

子供の食事お悩み相談

食事を楽しくしたい、しつけもしたい。その両方をかなえる原則は前のページで紹介しましたが、具体的なお悩みに回答。おうちのルール作りに役立ててください。

食べ物を手で混ぜて遊ぶのがイヤです。(1歳2か月)

生活すべてが遊びの年齢とはいっても、見守れる範囲を超えているときは言い聞かせます。「だめよ~」のような遊びモードでは伝わらないので、毅然と。目を見て「食べ物で遊ばないの」と手を押さえます。もう空腹ではないので「ごちそうさまする?」と聞いて、片づけましょう。1回言われたら理解してやめるという年齢ではないので、そのつど注意を。

食事中に立ち歩きます。追いかけて食べさせるのが大変…。(1歳6か月)

追いかけて食べさせると、食卓で食べるという基本がくずれてしまうのでやめましょう。席を立ちそうになったら言い聞かせて。そろそろルーティンを作って、遊びと食事のけじめを教えていくといいですね。また親が席を立ってしまい、ひとりきりにされたら座っていられなくなります。大人もTVやスマホを見たり、席を立ったりしないで、よいお手本になってあげましょう。

おばあちゃんが甘いお菓子を与えすぎて困ります。(2歳8か月)

子どもにとっておやつは、三度の食事で足りない栄養を補う補助食としての役割があります。そのためお菓子よりもおにぎりなど食事に準じたものが向いています。おばあちゃんが来たら、おうちルールを説明しましょう。こちらから訪問した場合は、柔軟にその家に合わせて。もし毎日のことなら、保健所の指導で健康のためにこうしたい、などとお願いを。

ゆっくり1時間もかけて食べますが、本人のペースに合わせるべき?(2歳6か月)

第2乳臼歯が生えて乳歯がそろうのが3歳ごろなので、かむ力が弱いという事情はあるでしょう。とはいっても時間をかけすぎのようです。いつ終わるのかわからないという状態より、時間の目安があるほうが親子ともにけじめができてすっきりします。30分で区切ることを最終目標として、徐々に短くしていきましょう。だんだんそれに合わせて食べるようになるでしょう。

小食で、食べてもちょっぴり。作り甲斐がありません。(2歳10か月)

その子なりに成長していて、健診で注意されないなら、心配しなくてもいいでしょう。ただ糖分の多い飲み物やイオン飲料で満腹になっていることもあるので、飲み物を見直してみて。夜ふかしで生活が不規則な子は、規則正しい早寝早起きの生活で体内リズムが整うと、食欲が出るようになることがあります。

ごはんもおかずもたくさん食べすぎて心配です。(3歳)

大人並みによく食べる子がいますが、たいてい年とともに落ち着いていきます。健診で特に注意されていないなら心配いりません。お菓子や甘い飲み物をたくさん食べているなら親がやめさせる必要がありますが、食事なら栄養のバランスもとれているはず。肥満が心配なら、脂分を控えめにして、野菜メニューを増やしましょう。

お箸の使い方はいつから教えたらいい?(2歳4か月)

何ごとも本人が興味をもったときが教える好機なので、いつでも使えるようにスプーンやフォークと一緒に箸も置きましょう。親が正しい持ち方を見せることも大切です。好きな箸を選ばせると興味が出ることも。使い方は鉛筆持ちが基本になります。クレヨンで落書き遊び、ままごとでスプーンの鉛筆持ちをするなど、親子で楽しく遊びながら慣れる方法も。

 

教えてくれたのは

菅野幸恵 先生

青山学院女子短期大学子ども学科准教授。育児中の母親の心理を含め現代の育児事情に詳しい。共著に『エピソードで学ぶ乳幼児の発達心理学』(新曜社)他。

 

イラスト/三角亜紀子 構成/童夢

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