「ミイラ取りがミイラになる」の意味とは?
「ミイラ取りがミイラになる」という表現を聞いたことはありますか? なんとなく意味はわかっていても、正しい意味は知らないという方も多いはず。まずは、「ミイラ取りがミイラになる」の意味から由来まで解説していきます!
意味
「ミイラ取りがミイラになる」とは、「人探しに行った者が戻らなくなること」と、「説得しようとしたのに、結果的には相手側になってしまうこと」という意味です。
どちらも、最初に意図していたことと反対の状況・結果になってしまうようすをあらわしています。ちなみに昔、「ミイラ」は漢字で「木乃伊」と書かれていました。そのため、「木乃伊取りが木乃伊になる」という表記で使われることがあります。
語源
続いて、「ミイラ取りがミイラになる」の由来を見ていきましょう。昔、エジプトやアラビアでは、死体が腐らないよう、「ミイラ」と呼ばれる防腐剤を塗ってから、布でくるみ、棺におさめていました。この「ミイラ」という防腐剤は、当時、万能薬として重宝されていたそうです。そのため、この「ミイラ」を取りに行く者が多かったのだとか。しかし、「ミイラ」にたどり着くまでに、砂漠などで息絶えることもあったそうです。
「ミイラ」という薬を探しに行ったのに、自分自身が「ミイラ」となって死んでしまうというエピソードから、「ミイラ取りがミイラになる」という言葉が生まれました。その後、もとの意味が転じて、「人探しに行った者が帰ってこなくなること」「説得しようとしたのに、結果的に説き伏せられてしまう」という意味になったようです。
使い方を例文でチェック!
すでに説明したとおり、「ミイラ取りがミイラになる」の意味は2つ。「人探しに行った者が戻らなくなること」と、「説得しようとしたのに、結果的には相手側になってしまうこと」です。ここでは、2パターンの例文を紹介します。
1:「夫は娘を説得しようとしたのに、数分後一緒になってゲームをしていた。ミイラ取りがミイラになるとはこのことだ」
「ミイラ取りがミイラになる」は2つの意味を持ちますが、日常的に使うのは「説得しようとしたのに、相手側になってしまう」のほうが多いですね。
この例文では、娘にゲームを中断するようにと伝えに行ったのに、結果的に娘と一緒にゲームをしている夫のことをあらわしています。その光景を見て、奥さんがあきれているようすがうかがえますね。
2:「最初は反対だったのに先輩に言いくるめられてしまった。まさにミイラ取りがミイラになるといった状況だ」
「ミイラ取りがミイラになる」は、自分自身についても使える表現です。説得しようとしたのに、結局相手に言いくるめられてしまったり、説き伏せられてしまったりと、納得のいかない結果になってしまったときに使うといいでしょう。
3:「ミイラ取りがミイラになったと言われないよう、絶対に帰ってくるからね」
この文での「ミイラ取りがミイラになる」は、「人を探しに行った者が帰ってこなくなる」という意味です。例文のように、「ミイラ取りがミイラになった」という過去形でも使えます。
類語や言い換え表現とは?
「ミイラ取りがミイラになる」と似た言葉には何があるのでしょうか。
まず、「人を探しに行った者が戻らなくなる」の類義語には、「行ったきり雀」があげられます。「説得しようとしたのに相手側になってしまう」の類義語には、「説き伏せられる」「懐柔される」などがあります。例文も一緒に紹介しますので、参考にしてください。
1:行ったきり雀
「行ったきり雀」とは「いったきりすずめ」と読みます。意味は、「出て行ったきり、帰ってこなくなること」。この言葉は、おとぎ話『舌切り雀』をもじってできたのだとか。「ミイラ取りがミイラになる」は、「人を探しに行った者が戻らなくなる」という意味ですので、まったく同じ意味ではありませんが、「戻ってこなくなる」という点においては、類語といえるでしょう。
例文:学生の頃に家出をして、行ったきり雀状態だったが、先日10年ぶりに実家に帰った。
2:説き伏せられる
「説き伏せる(ときふせる)」は、「自分の意見や考えに同意させる」という意味。自分と反対の意見を持つ人に対して、説明を重ね、自分の意見に従わせるときに使います。強制的な意味合いを含むので、ネガティブな表現として使われることが多いです。
例文:自分は嫌だといったのに、父親に説き伏せられた。
3:懐柔される
「懐柔」とは、「かいじゅう」と読み、「自分の思い通りに相手を従わせること」という意味。「懐柔される」という表現で、「相手の思惑通りにさせられること」という意味になります。無理やり説き伏せるというよりは、言葉を巧みに使い、上手に手なずけるというニュアンスを含んでいる言葉です。
例文:先輩の上手な話術で、同僚は結果的に懐柔されていた。
英語表現とは?
「ミイラ取りがミイラになる」の英語表現には、「go for wool and come home shorn」「The biter is bit.」があります。それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
1:go for wool and come home shorn
「go for」は「取りに行く」、「wool」は「毛糸」という意味です。「shorn」は、「刈り取る」という意味の「shear」の過去分詞。「go for wool and come home shorn」で、「毛糸を取りに行った者が、逆に毛を刈られて戻ってくる」という意味になります。「ミイラ取りがミイラになる」の「ミイラ」を「毛糸」に置き換えた表現といえますね。「Many go for wool and come home shorn」という表現で使われることもあります。
2:The biter is bit.
「biter」は「かみつく人」、「bit」は「かむ」の過去分詞。「The biter is bit.」を直訳すると「かみつく人は、かまれる」という意味になりますが、主に「騙そうとして騙される」という意味で使われる表現です。ちなみに、「sometimes」を入れて、「The biter is sometimes bit.」という表現にすると、「自業自得」という意味になります。
最後に
「人探しに行った者が戻らなくなること」と、「説得しようとしたのに、結果的には相手側になってしまうこと」という意味の「ミイラ取りがミイラになる」。前者は日常で使うシーンは少ないですが、後者の意味なら、当てはまる場面が多くありますよね。普段の生活でも、「ミイラ取りがミイラになる」を使って、語彙力をアップしていきましょう!
構成・文/阿部雅美(京都メディアライン)