「窮鼠、猫を噛む」は間違い? 噛んだ相手は猫じゃなく○○だった…!【びっくり故事成語】

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なにげなく使っていることわざも、その典故をひもとくと意外な事実が。今回は「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛む」について、驚きのウンチクをご紹介します。

「窮鼠、猫を噛む」の意味

まずは「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛(か)む」の意味について確認しておきましょう。

弱い者でも、追いつめられると、強い者に反撃を加えることのたとえ。

『小学館 故事成語を知る辞典』より

窮鼠は「窮した鼠(ねずみ)」ですから、追いつめられたネズミのこと。ふだんは天敵の猫に追いかけられて逃げ回っているイメージのネズミですが、逃げ場のないところまで追いつめられると、死に物狂いで猫に向かっていく…。そんな土壇場でのやぶれかぶれな反撃を言い表した言葉です。

ところがこのことわざ、もともとは、窮鼠が嚙みついた相手は猫じゃなかったようです。追いつめられたネズミが噛みついたのは、何だったと思いますか?

1)熊
2)タヌキ
3)ヘビ
4)武士

正解は
2)タヌキ

出典は、厳しい経済政策への反論だった!

原典は紀元前二世紀・前漢時代の経済政策に対する議論をまとめた「塩鉄論」という書です。

当時、北方騎馬民族の侵略に備えて軍事費を賄うため、塩や鉄といった生活必需品を国が買い占めて高く売るという専売制が提案されました。その施策に対する反対の立場から、窮乏する人民を「窮鼠」にたとえたのが初出です。

窮鼠も狸(り)を噛む(追いつめられた小さなネズミは、大きなタヌキにだって噛みつく)ということもあるので、人々の生活を脅かすと反乱が起きかねない、と厳しい経済統制に反対しています。

『小学館 故事成語を知る辞典』より

このように原典では「猫」ではなく「狸」という字が使われています。日本に入ってきてからも、鎌倉時代の文献では「狸」の字が当てられていますが、それがいつのまにか、ネズミと縁の深い猫に変わったようです。

もっとも、原典の「狸」は山猫の意味との説もありますので、あながち間違いではないのかもしれません。

「噛んだり噛まれたりは、猫とネズミでやってほしい…」

 

ほかにも、語源や由来に意外な事実が秘められたことわざはたくさんあります。この機会に下記記事についてもチェックしてみてください。

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構成/HugKum編集部
協力/小学館  辞書編集部
イラスト/もとき理川

小学館 故事成語を知る辞典

編/円満字二郎 定価/1900円+税

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