「猫に小判」「豚に真珠」「馬の耳に念仏」…。いずれも、価値がわからない人にいいものを与えても、そのありがたみが分からない、という意味の言葉です。
日常でもよく使われていることわざですが、この3つのことわざのうち、意外にも西洋由来のものがあるんです。
西洋に由来することわざは、どれ?
では、西洋に由来することわざは、次のどれでしょう。
1,猫に小判
2,豚に真珠
3,馬の耳に念仏
正解は
2,豚に真珠
由来は聖書だった!
「小判」も「念仏」も西洋にはないものですから、そこから正解がわかった人もいるかもしれませんね。
では、「豚に真珠」の由来について『小学館 ことわざを知る辞典』を見てみましょう。
新約聖書(マタイ伝七章六)の大正期の翻訳をみると、「聖なる物を犬に与うな。真珠を豚の前に投ぐな。おそらくは足にて踏みつけ、向き返りて汝らを噛みやぶらん」とあります。<中略>
明治後期から大正にかけての用例では、「豚に真珠を投ずる」や「~を撒く」など、動詞がついた形ですが、その後はたぶんに「猫に小判」の影響を受け、しだいに動詞が省略されるようになりました。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
いっぽう「猫に小判」は、江戸中期にはすでに用例が見られ、江戸後期には「いろはかるた」に採用されて、さらに広く知られるようになりました。
また、「馬の耳に念仏」は、古くは「馬に念仏」といわれていたものが、中国からわたってきた「馬耳東風」という語に由来する「馬の耳に風」と一体化して、次第に定着していったものと推定されています。
英語でなんていうの?
ちなみに聖書由来の「豚に真珠」は、英語では以下のように表現します。
Do not cast pearls before swine.
豚をpigというのは19世紀以降で、swineは豚を意味する古語ということですから、このことわざ、英語圏でも古くからあったことがうかがえますね。
ものの価値についてわからない人に対するガッカリ感は、いつの時代のどの国の人にも共通する感情なのですね。
構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
イラスト/谷山彩子
小学館 ことわざを知る辞典
編/北村孝一 定価/1900円+税
◆ことわざの奥深い世界に触れる!
日本だけでなく中国・西洋由来のことわざも含む約1500項目を収録。文学作品での用例とともにわかりやすく解説します。
◆充実した記述と楽しいコラム
編者が特に知ってもらいたいことわざ100選は、1ページの大項目として掲載。また「ことわざの誤解」「天気とことわざ」などのコラムも満載です。
◆便利な索引
「愛」「人生」などのキーワードからことわざを検索できる「分類索引」も。