「他山の石」ってどういう意味?
さっそくですが、「他山の石」の意味を確認しましょう。正しい意味は以下のどれでしょうか。
1)
他の人の持ち物はよく見えることのたとえ
2)
他人と自分を比べても意味がない
3)
他人の良い言行は自分の行いの手本となる
4)
他人の誤った言行は自分の行いの参考となる
正解は
4)他人の誤った言行は自分の行いの参考となる
「他山の石」の意味と由来
もう少し詳しく「他山の石」の意味について見ていきましょう。
他人のつまらない行動や、自分とは直接の関係がないものごとも、自分の行動の参考にできることのたとえ。
『小学館 ことわざを知る辞典』
由来は古代中国の「詩経」の一節から。「他山の石、以って玉を攻くべし(たざんのいし、もってたまをみがくべし)」が原文で、「宝石が取れるわけではない、別の山から取ってきたありふれた石でも、宝石を磨くことはできる」という意味で使われました。
かつては、主として小人の言行を見て徳を高めるという文脈で用いられていました。しかし、今日では、「他山の石とする」という形で、直接かかわりのない者や遠く離れたところで起きた事例から学ぶ意で用いられます。
『小学館 ことわざを知る辞典』
誤用が広まってきている
冒頭のクイズの3番「他人の良い言行は自分の行いの手本となる」を不正解とし、4番の「他人の誤った言行は自分の行いの参考となる」のみを正解としたのは、他人の「よい行動から学ぶ」は、本来は誤用だからです。
正しくは他人の「愚かな行動・つまらない行動から学ぶ」という意味です。しかし、最近では誤用のほうもよく見られる使い方になってきました。
平成25年度の文化庁による「国語に関する世論調査」では、正しい意味で回答できた人は全体の約30%にとどまり、誤用とされている「よい行動から学ぶ」や、「どちらの意味でも使える」と答えた人が約27%という結果が出ています。
参考;平成25年度「国語に関する世論調査」の結果の概要|文化庁
こんな使い方は要注意!
間違った意味で覚えていると、ときに失礼な印象を与えてしまうこともあります。
たとえば、謙虚に相手から学ばせてもらう、という気持ちで「他山の石とさせていただきます」と言ってしまった場合はどうでしょうか。
相手には、「あなたと同じ失敗をしないように気をつけます」と伝わってしまいます。こんな残念な行き違いは避けたいですね。
「他山の石」の類語
「他山の石」に似た言い回しは、他にもこんなものがあります。
人の振り見て我が振り直せ
反面教師
殷鑑(いんかん)遠からず
前車の覆るは後車の戒め
いずれも、他人の失敗や負の面から学ぶという意味合いのことわざです。その失敗をした本人の前で使う場合には、相手との関係性や状況を見極めて使う必要がありますね。
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構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
イラスト/谷山彩子
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