まちがいやすい「七転び八起き」と「七転八倒」
さっそくチェック。次の用例で間違った使い方をしているものはどれでしょうか。
1)
人生は七転八倒だから、君の努力もいつか必ず報いられる。
2)
七転び八起きとばかりに浮き沈みを繰り返す彼の人生は…
3)
軽い気持ちで手を出したものの、七転八倒の苦しみを味わうに至った。
4)
七転び八起きの精神をもって、必ずや成し遂げると誓う。
正解(間違った使い方)は
1)人生は七転八倒だから、君の努力もいつか必ず報いられる。
七転八倒の意味
「七転八倒」は「七転び八起き」とまったく意味がちがいます。
苦痛のあまりころげまわってもだえ苦しむこと。また、混乱のはなはだしいことのたとえにいう。
『小学館 四字熟語を知る辞典』
「七転八倒」は「しちてんばっとう」あるいは「しちてんはっとう」とも読み、「転」と「倒」の字が使われているように、倒れて転げまわっている状況を表します。実際に転げまわっていなくても、そうしたくなるくらいの動揺・苦悩ぶりを言い表しているのですね。
「七転び八起き」の意味
いっぽう「七転び八起き」は、最後の漢字が「起きる」という字であることからわかるように、たとえ7回転んでも、その都度起き上がる、つまり不屈の精神や波乱万丈のほどを言っています。
何度失敗しても屈することなく立ち上がることのたとえ。また、人の世の浮き沈みの激しいことのたとえ。
『小学館 ことわざを知る辞典』
なぜ七と八なの?
「七転び八起き」と「七転八倒」、別々の場であらためて見れば間違えることもなさそうですが、並べて見るとつい混同してしまいます。それは両方に「七」と「八」が同じ順序で使われているからかもしれません。
また、「七転び八起き」について言えば、七回転んだのなら、同じ回数、つまり七回起き上がればいいわけで、なぜ「八」が用いられるのかも気になります。
「七」は、多いことだけでなく、さまざまなという響きがあり、不吉な影も含まれます。「八」は末広がりで、めでたい数とされ、このことわざも八によって、未来の希望につながっているのではないでしょうか。
『小学館 ことわざを知る辞典』
数字は、民俗的に固有の意味合い・象徴的なニュアンスをもっています。特にこういったことわざの中では、数は計量的な意味ではなく、象徴として使われます。
「七変化」「なくて七癖」の七も、7種類というより「さまざまな」というバリエーションの豊富さを強調したものですし、「八百万(やおよろず)」「口八丁(くちはっちょう)」の八も、数の多さや広がりの語感をそえていますね。
「七転び八起き」と「七転八倒」。使われている字は似ていますが、意味はまったくちがいますので、混同して使用しないようにしましょう。
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構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
イラスト/小幡彩貴
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