四面楚歌の「楚歌」は敵国の歌じゃないって本当?【勘違いしやすい四字熟語】

知っているようで知らない四字熟語の由来を深堀りします。今回は「四面楚歌」について見ていきましょう。

四面楚歌(しめんそか)。まわりを敵に包囲され、孤立した状態をさす四字熟語です。

中国の故事にちなんだ言葉ということは知られていますが、この「四面楚歌」、言葉の由来を正しく認識している人が意外と少ないのです。

四面楚歌の意味は?

まずは「四面楚歌」の意味から確認しましょう。

敵の中に孤立して、助けのないこと。周囲が敵、反対者ばかりで味方のないことのたとえ。

『小学館 四字熟語を知る辞典』より

東西南北の四面を敵に囲まれ、その敵が歌う「楚歌(楚の国の歌)」が鳴り響いている様子を表しています。

が、この言葉は秦代末期、楚の項羽が漢の劉邦の軍に包囲された「垓下の戦い」にちなんでいるんです。

え?  それじゃあ、四面を囲んだのは漢軍で、囲まれたのが楚なの? 話が逆じゃない?

秦代末期の武将・項羽と劉邦の戦いは、歴史書「史記」に描かれています。項羽が劉邦に敗れる場面で出てくるのが「四面楚歌」のエピソードです。
項羽が率いる楚の軍隊は劣勢となり、垓下の地に追い詰められます。兵の数は少なく、食糧も尽きました。周囲は劉邦の漢軍に幾重にも囲まれています。
夜になって四面(周囲)の漢軍の中から楚の国の歌が流れてきました。

『小学館 四字熟語を知る辞典』より

でも、どうして?  この状況では、四面(周囲)から聞こえてくるのは楚の歌ではなく、漢の歌のはずでは。

なぜ聞こえてきたのは「楚の歌」?

なぜ、自分の国の歌が聞こえてきたのに、楚の項羽は敗北を悟ったのでしょう。理由は以下のどれだと思いますか?

1)
楚の民衆が寝返り、漢とともに楚を手に入れたという意味だと思った

2)
味方の援軍が来たとだまして、おびき出す作戦だと悟った

3)
楚に降伏を促す替え歌になっていた

4)
長い歴史の中で、漢と楚が入れ替わり、間違って伝わった

正解は、1)漢の人々が寝返り、楚を手に入れたという意味だと思った

どういうことか、『小学館 四字熟語を知る辞典』をもう少し詳しく見ていきましょう。

項羽は大いに驚き、敗北を覚悟します。
「漢はすでに楚を手に入れたということか。歌う楚人の何と多いことだろう」
味方の歌が聞こえたのだから、援軍が来た――わけではなく、楚の民衆が漢に寝返ってしまった、自分たちは完全に孤立化した、と項羽は悟りました。

四面から自国の歌が聞こえてきたのなら、心強くたのもしい状況と考えることもできそうですが、実際は自分たちの国の歌を歌っていたのは、楚軍から見た敵対者たちだったのですね。

敵国の歌ならまだ戦意を高揚することができたかもしれませんが、自国の歌を歌う大勢の敵に囲まれたときの楚軍・項羽の気持ちはいかばかりだったでしょうか。疲れきった心に故郷の歌がしみいるとともに、自分たちが逆賊とされてしまったかのような虚しさを感じたかもしれません。

使い慣れた四字熟語や故事成語も、調べてみると、意外な事実や由来が隠されていて興味深いですね。

 

構成/HugKum編集部
協力/小学館  辞書編集部
イラスト/小幡彩貴

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