「蛇足」って何で「蛇の足」と書くの? 語源や意味、例文、書き下し文も紹介

「蛇足」は、「だそく」「じゃそく」と読みます。意味は、「余計なもの」「なくても必要のないもの」。付け加える必要のない言葉や、役に立たない無駄な行為に対しても使える言葉です。
意外と知らない「蛇足」の由来となったエピソード、書き下し文、例文、使い方を紹介します。

「蛇足」とは?

「蛇足」という言葉について正しい意味を知っていますか? 今回は、「蛇足」の意味や使い方を、小学生や中学生はもちろん、大人にもわかりやすよう解説します!

読み方と意味

「蛇足」は、一般的には「だそく」と読みますが、「じゃそく」と読むこともできます。

意味は、「余計なもの」「なくても必要のないもの」。付け加える必要のない言葉や、役に立たない無駄な行為に対しても使える言葉です。そのため、ひと言付け加える際に、「蛇足ですが」という言葉を用いると、謙遜のニュアンスがプラスされます。控えめに何か意見したい時に、役立つ表現です。

由来・語源

「蛇足」は、中国の故事に語源があるとされる故事成語の一つです。書き下し文や現代語訳をまじえながら、その由来を紹介しましょう。

その昔、中国の楚(そ)という国で、司祭者から使用人たちにお酒がふるまわれました。しかし、そのお酒は量が少なく、全員分はありません。そのため、蛇の絵を描き、早く描けた者がそのお酒を飲めるということにしました。スタートの合図で全員が絵を描き始めましたが、いちばん早く絵を描けた男は、余裕を見せ、蛇の足まで描き始めたのだそう。

その男が蛇の足を描いているうちに、2番手の男が絵を描き終えてしまいました。すると2番手の男は「蛇固より足無し。子安くんぞ能く之が足を為らんや」と言います。現代語訳すると、「蛇はもともと足がないのに、あなたはどうして足を描くことができるのか」という意味です。

こう述べると、2番手の男は1番手の男から杯を奪い、お酒を飲んでしまったのだとか。このエピソードがもとになって、「余計な行為」「付け加える必要のないもの」という意味で「蛇足」という言葉が使われるようになったのだそうです。

使い方を例文でチェック!

では、「蛇足」を使った例文を見ていきましょう。

「蛇足」はややかたい印象を与える言葉ですので、ビジネスシーンでも活用できますよ。簡単な短文や、メールでも使える例文をいくつか紹介します。

1:蛇足とはわかっているが、つい余計なひと言を言って雰囲気を壊してしまう。

「蛇足とはわかっているが」で、「必要のないことだとわかっているが」という意味になります。自分では余計なこととわかっているのにもかかわらず、その行為をしてしまう時に使える表現です。この例文からは、辞めたいのに辞められないというジレンマを抱えているようすがうかがえますね。

2:蛇足ですが、ひとつだけ付け加えさせていただきます。

「蛇足」は、「蛇足ですが」「蛇足とは思いますが」という表現でよく使われます。意味は、「必要ないかもしれませんが」「言うまでもないことですが」など。謙遜するニュアンスが含まれますので、角が立たないように、何か伝えたい時に役立つ言葉です。メールなどでも、何か情報やひと言付け加えたい場合に使えますよ。

3:あの人の話は蛇足が多くて、何が言いたいのかわからない。

この例文では、「余計な話が多いので、話の要点がわかりづらい」ということをあらわしています。

類語や言い換え表現は?

「蛇足」の類義語には何があるのでしょうか。ここでは、「蛇足」と意味が近いことわざや慣用句をいくつか紹介します。

1:無用の長物

「無用の長物」とは「むようのちょうぶつ」と読みます。「長物」は「ながもの」や「ながぶつ」とは読みませんので、ご注意を。

意味は、「あるとかえって邪魔なもの」です。「蛇足」は、単に「あっても無駄なもの」ですが、「無用の長物」は「あると邪魔になる」という、さらにネガティブなニュアンスを含みます。例えば、購入してもまったく使っていないものなどは、「無用の長物」といえるでしょう。

2:月夜に提灯

「月夜に提灯」の読み方は、「つきよにちょうちん」です。意味は、「不要なものや、無駄なことのたとえ」。

このことわざの「月夜」とは満月の夜のことをあらわします。満月の夜は明るいため、提灯は必要ありません。このことから、「役に立たないもの」をあらわす「月夜に提灯」ということわざが生まれました。

同じような成り立ちで「昼行灯(ひるあんどん)」という言葉もあるので一緒に紹介しましょう。これは、昼に灯す行灯が無駄なことから、「役に立たない人や物事」「ぼんやりしている人」を意味します。

3:夏炉冬扇

「夏炉冬扇」とは「かろとうせん」と読みます。聞き慣れない言葉ですが、漢字を一つひとつ見ていくと、意味が理解できますよ。

「夏炉冬扇」の「炉」とは囲炉裏のこと、「扇」とは扇子のことです。夏の囲炉裏と冬の扇子は、時期外れで、その季節にまったく必要ありません。つまり、「役に立たない物事のたとえ」として使われる四字熟語です。

対義語は?

次に、「蛇足」と反対の意味を持つ言葉をいくつかピックアップして紹介します。

1:画竜点睛

「画竜点睛」とは、「がりょうてんせい」です。「がりゅうてんせい」と間違って読んでいるケースもありますので、正しい読み方をしっかり覚えておきましょう。

意味は、「物事を完成させるための最後の仕上げ」。なお、「画竜点睛」を使った表現に「画竜点睛を欠く」があります。これは、「肝心のところが抜けていること」という意味。たいていネガティブな意味合いで使われます。

2:点睛開眼

「点睛開眼」は、聞き慣れない言葉ですね。読み方は「てんせいかいがん」で、意味は「物事の肝心なところ」「物事を完成させるための大切な仕上げ」。「画竜点睛」と同じ意味の言葉として考えていいでしょう。

3:肝

「肝」は、肝臓のこともさしますが、「物事の重要なところ」「急所」という意味もあります。「蛇足」は、なくてもいいもの。一方、「肝」は、物事の要の部分で、なくてはならないものですので、対義語に当てはまりますね。

英語表現は?

「蛇足」や「蛇足ですが」を英語で伝えたい場合に使える表現を見ていきましょう。

1:superfluous

「superfluous」とは、「余計な」「不必要な」という意味です。

例文:He made a superfluous remark.(彼は余計な発言をした)

2:unnecessary to add

「unnecessary to add」は、直訳すると「加える必要がない」。つまり、「不必要なもの」「なくてもいいもの」を意味する英語です。

例文:It is unnecessary to add.(それは蛇足だ)

3:It may be needless to add, but

「蛇足ながら」を言いたい場合には、「It may be needless to add, but」を使ってみましょう。直訳すると、「加える必要がないかもしれませんが」という意味。控えめなニュアンスが含まれますので、「蛇足ながら」の英語表現として適しています。

最後に

「蛇足」について解説しましたが、意味はしっかり理解できましたか? 「蛇足」という言葉自体はネガティブなニュアンスですが、「蛇足ながら」という表現にすると、謙遜の意味合いがプラスされます。角が立たないように何か伝えたい時に、ぜひ「蛇足ながら」を使ってみてくださいね。

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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)

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