破天荒、破天候、どっちが正しい? 本来の意味も要チェック!

PR

日常的に使っている言葉も、字を間違えて覚えていたりします。意味と字のイメージが合わないときは、故事にもとづく言葉であることも。今回は「はてんこう」について見ていきましょう。

「伝記は、彼の<はてんこう>な生き様がよく描かれている」
「あの人の<はてんこう>なところが、むしろ人々に愛された」

型破りで豪胆な様子について用いられる「はてんこう」。正しい字や本来の意味をご存じですか?

「はてんこう」はどう書くのが正解?

「はてんこう」を正しく表記しているのは、次のどれでしょう。

1)破天荒
2)破天候
3)破天功

正解は
1)破天荒

「はてんこう」の意味は?

正しい表記は「破天荒」。「天荒」を「破る」と書きます。

それでは「天荒」とはいったい何を指すのでしょうか。

唐王朝の時代には、全国の各地で官吏を採用するための予備試験が行われ、その合格者が、都で行われる本試験へと送り込まれていました。ところが、荊州(現在の湖北省・湖南省)から送り込まれる受験者たちは、なかなか本試験に合格しません。そのため、「天荒(作物の実らない土地)」からの受験者だと呼ばれていました。しかし、850年、劉蛻(りゅうぜい)という人が初めて合格。荊州の長官は大いに喜び、「天荒を破る」という偉業を果たした劉蛻に、70 万銭もの大金を与えたということです。

『小学館 故事成語を知る辞典』より

「天荒」とは、もともと作物の実らない荒れ地を意味していたのですね。

古代中国の管理採用試験は「科挙(かきょ)」と呼ばれ、たいへん難しい試験だったと言われています。その合格者を出すことができない土地を「作物の実らない土地」に見立てて、自虐的に「天荒」と称していたのでしょう。合格者・劉蛻が出たときの荊州の人々の喜びが推し量れます。

この故事(エピソード)から生まれたのが「破天荒」なので、本来の意味は以下のようになります。

作物の実らない土地を切り開くこと。それまでだれもできなかったことを成し遂げることのたとえ。

『小学館 故事成語を知る辞典』より

現在では少し変化して、「豪快で大胆なことをする」という意味で用いられることが多くなっているようですが、上の故事と本来の意味もしっかりおさえておきたいですね。

本来は「だれにもできないことを成し遂げた」人に対して使うことば

 

ほかにも、語源や由来に意外な事実が秘められたことばはたくさんあります。この機会に下記記事についてもチェックしてみてください。

そういえば「カイより始めよ」のカイって何?【意外と知らないことわざクイズ】
「カイより始めよ」のカイって? 「カイより始めよ」は、こんなふうに使われる言葉です。 「隠し芸だ、隠し芸だ。やりましょう」 「賛成」 ...
「窮鼠、猫を噛む」は間違い? 噛んだ相手は猫じゃなく○○だった…!【びっくり故事成語】
「窮鼠、猫を噛む」の意味 まずは「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛(か)む」の意味について確認しておきましょう。 弱い者でも、追いつめられると、...
「天高く馬肥ゆる秋」は不吉な言葉!? 意外と知らないことわざの真実
「天高く  馬肥ゆる  秋」の意味 爽やかな秋晴れの日、空を見上げて「天高く 馬肥ゆる秋」と思わずつぶやいたことがある人もいるでしょう。秋...

構成/HugKum編集部
協力/小学館  辞書編集部
イラスト/もとき理川

小学館 故事成語を知る辞典

編/円満字二郎 定価/1900円+税

◆日常語の由来がわかる!
「圧巻」「完璧」「杞憂」「登竜門」……日常的なことばにも奥深い語源があります。中国の故事由来から西洋・日本に起源を持つことばまで、870語を収録。

◆編者推しの詳細解説やコラムも
編者が特に知ってもらいたい100項目については1ページ大のスペースで解説、「夫婦と結婚にまつわる故事成語」「酔っ払いたちの故事成語」など、さまざまなテーマのコラムも収載。

◆役立つ巻末資料
故事成語の「出典解説」と、「愛」「人生」などのキーワードから検索できる「分類索引」も。

編集部おすすめ

関連記事