「カイより始めよ」のカイって?
「カイより始めよ」は、こんなふうに使われる言葉です。
「隠し芸だ、隠し芸だ。やりましょう」
「賛成」
<略>
「それではまず一つ カイより始めよ。おめでたいところで一つ」内田百閒『百鬼園随筆』より
意味はのちほど確認するとして、さて、この「カイより始めよ」のカイに当たる漢字は、以下のどれが正解だと思いますか?
1)戒
2)甲斐
3)隗
4)解
5)櫂
正解は
3)隗
「カイより始めよ」の意味
「隗」は見慣れない漢字なので、字がわかったところで意味を類推するのは難しいですね。実は「隗」とは人の名前です。古代中国の戦国時代(紀元前5~3世紀)を生きた郭隗(かくかい)という人物を指しています。
郭隗が燕の昭王に賢者を用いる法を聞かれた時に、「いま王が真に賢人を求めるのなら、この私から始められるがいい。隗でさえあんなに厚遇されるのなら、と私より賢い者が千里の道も遠しとせずにやってくるでしょう」と答えたという「戦国策―燕策」にみえる故事によることば。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
上の故事から、「隗より始めよ」は、次のような意味として使われるようになりました。
賢者を招きたいならば、まず手近な者から優遇せよ。転じて、物事はまず言い出した者から実行せよ。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
この記事冒頭の隠し芸云々の会話中の「隗より始めよ」は、隠し芸をやろうと言い出した人から始めるとしよう、という意味で使われています。
実際に日常で使用される際にも、「まず手近な者から」とか「平凡な才の者から」といった原典の意味より、「言い出しっぺからやるべき」という意味で使われることが多いようです。
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よく聞くことわざも、由来を調べてみると本来の意味が意外だったりします。下記記事で取りあげた言葉についても、ぜひチェックしてみてください。
構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
イラスト/谷山彩子
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編/北村孝一 定価/1900円+税
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