今回は、「兄弟で読んでほしい絵本が違って、怒鳴り合いのケンカに」と悩む3児のママからのお悩み相談です。「頑張り過ぎない読み聞かせ研究室」室長の筆者が考える解決方法をご紹介します。
目次
Q. 兄弟で興味のある本がちがいます
子どもは7歳、5歳、2歳です。7歳向けに物語の本を読んでいると、2歳の子が幼児向け絵本を持ってきて
「おかあさん、読んで!」
と言い出します。そして最後は、兄弟みんなで怒鳴り合いのケンカになるんです(涙)。(女性)
A. 年齢差のある読み聞かせには3つのステップがあります
お悩み、非常によく分かります!
筆者も2歳差育児をしているので、上の子の読み聞かせをしているときには、下の子はちんぷんかんぷんで騒ぎまくる日々の繰り返しでした。
3ステップの読み聞かせ方法が効果的!
絵本の読み聞かせで悩ましいのは、その絵本の「対象年齢」ですよね。上の子向けの文章長めの絵本は下の子は聞いてるうちに飽きてしまいますし、下の子向けの絵本は上の子にはすぐつまらなくなってしまいます。
そして子どもですから、つまらなくなれば騒ぐ、またはよそに行ってしまう。結局読み聞かせの時間は流れてしまう……ということに。
そんなときは、正直、兄弟全員を常に納得させるのは難しいと思います。
しかし、せっかくの読み聞かせの時間は兄弟みんなで楽しく過ごしたいですよね。ということで、今回は、兄弟への読み聞かせ3ステップをご紹介いたします。
①とにかく、最初の1冊で兄弟全員の気持ちをひきつけよう。
②2冊目は、ちょっと下の子にシフトした絵本を読む。
③最後は、上の子が好きな絵本を自由に(このとき、下の子は退場していてもOK)。
①とにかく、最初の1冊で兄弟全員の気持ちを惹きつける!
まずは、ここが一番難しいところなのですが、兄弟全員の気持ちを“つかむ”絵本をまず最初に読みましょう。
では、兄弟全員の気持ちを惹きつける絵本とはどんなものなのでしょうか? おすすめの絵本を紹介します。
小さな子でも楽しめる参加型絵本
子どもの気持ちのつかみ方にも方向性はいくつかありますが、まずは参加型絵本で、兄弟全員を読み聞かせに参加させてしまえそうなものをご紹介します。
「コんガらガっちの絵本」シリーズ(著:ユーフラテス 小学館)
いるかともぐらが、こんがらがってできた動物“いぐら”や仲間たちといっしょに、絵本の中の選択肢を読者が選ぶことで、オリジナルのお話ができあがっていきます。子どもたちが自分で選んで参加する形なので、そこでまず「なになに?」と興味がひかれますし、選んだものによって一人ひとり違うストーリーが作り上げられるので、1冊の絵本で兄弟同時に楽しむことできる、ありがたい1冊です!
『おならまんざい』(作・絵 長谷川義史 小学館)
こちらは、“ボケ”と“ツッコミ”に分かれて兄弟でお笑いができる絵本です。おならをしたら、出てきたおならと漫才を始めてしまうという、「そんなあほな!」と突っ込んでしまう愉快なお話で、「おならまんざい」というだけあって、次々繰り出される“おなら”ネタを、特に男子はノリノリで演じてくれます。おかあさんはニヤニヤしながら見てるだけでもよい、読み聞かせ楽ちん絵本です。
しかけ絵本で、兄弟どちらも楽しい!
続いて、下の子がまだ0,1歳くらいで、上記でご紹介した絵本でも参加は厳しいかも……という場合は、動きがあって見ているだけで楽しい「しかけ絵本」がぴったりです。
『しろくまのパンツ』(tuperatupera 作・絵 ブロンズ新社)
この絵本は表紙から面白く、絵本がパンツを履いているんです。そこからして小さい子でもテンションが上がりますし、ページにはパンツ型の穴があいていて、しろくまくんが無くしたパンツを探していくという流れが絵を見ただけで分かりやすく、赤ちゃんからいくつになっても楽しめる構成となっています。
『ぼうしとったら』(tuperatupera 作・絵 Gakken)
野球帽の男の子、おしゃれな帽子の奥様、カウボーイハットの男性などなど、いろいろな帽子をかぶった人が出てきます。帽子の部分がめくれるしかけとなっていて、めくってみたら、思ってもみなかったものが出てきてびっくり! という絵本です。めくってびっくりの内容が年齢問わず楽しめ、びっくり続きで兄弟そろって思い切り笑えますよ!
②2冊目は、ちょっと下の子にシフトした絵本を
1冊目に満足したその次は、まだ大人しく座っていられない下の子向けの絵本を読んであげましょう。
赤ちゃん向けの内容の絵本でも、上の子の興味にもつながりそうなものを
このとき、赤ちゃん向けの内容の絵本であっても、上の子の興味につながりそうなものがあればベターですよね。ここでは、そうした絵本をご紹介します。
『やさいのおなか』(きうちかつ 作・絵 福音館書店)
やさいのおなか=やさいの断面の形がわかる絵本です。野菜の断面図を見せて「これ、なあに?」とクイズが繰り返されます。野菜の断面といっても意外と知らなかったりしますよね。そのふしぎな形に、赤ちゃんだけでなく年が大きい子も興味津々です。
『100』(名久井直子・作 井上佐由紀・しゃしん 福音館書店)
「100」という数はどのようなものか、金魚百匹、わごむ百個など、写真によって実際に数の大きさを見ることのできる絵本です。ただ、「100」と言葉で聞いても、実際に100ってどのくらいか、数の概念をつかむのは、意外と難しいものですよね。ですので、赤ちゃんよりちょっと上のお兄さんお姉さんが読んでも、とっても有意義な絵本となっています。
③最後は、上の子が好きな絵本を自由に(このとき、下の子は退場していてもOK)
最後は(べつに3冊で終わらせなくてもいいんですけどね)、自分の番を待ってくれていた上の子にゆっくり読み聞かせしてあげましょう!
この時には、もう下の子はゴロンゴロンして読み聞かせから退場していても問題ありません。
穏やかに物語を味わうもの
おすすめは、穏やかに物語を味わうのにぴったりなこんな絵本。いかがでしょうか?
『ねむれないおうさま』(ベンジャミン・エルキン 原作 ザ・キャビンカンパニー 絵 こみやゆう 訳 瑞雲舎)
ちっとも眠れない、カール王という王さまを眠らせるために、国中のうるさい音を片っ端から消していくという、ハチャメチャですが最後に親子でほっこりする結末のお話です。読んだ後、優しい結末について、親子でゆっくりお話しし合える内容です。
兄弟で同時の読み聞かせの醍醐味は?
兄弟読み聞かせの、一番の肝はやはり「最初の1冊」です。
兄弟読み聞かせでは、最初の“つかみ”に集中しましょう! ここで兄弟の興味をなんとか掴んでしまい、そして1冊でも「面白い絵本を読んでもらった」と思えば満足度も上がります。それが繰り返されれば自然と読み聞かせの習慣ができあがります。
そのためにも、最初の1冊は、ぜひパパママが目を通して「これは面白い!」と思う厳選の一冊を用意してみてください。
もちろん、お子さんの性格や興味関心によって選ぶ絵本もいろいろ変わってくると思います。兄弟の性格もそれぞれ違って見当がつかないなどという場合には、先述した
・参加できる絵本
・しかけで遊べる絵本
などを参考にしてみてください。
絵本のチョイスが違うからこそお互い影響を受け合える
そうして絵本に触れ合う習慣ができれば、だんだんとさまざまな種類の絵本への興味につながっていきます。また、兄弟それぞれ興味のある絵本をチョイスすることによって互いの興味に影響を受けることも、兄弟読み聞かせの醍醐味です。
せっかく読み聞かせしているのに兄弟同士でけんかになるのはげんなりしますが、上の子からだんだんと、読み聞かせ卒業を迎えていきます。
うちも上の子がそろそろ卒業シーズンでして、気づいたら膝の間には下の子しかいない……という時も増えました。ですので、ご紹介した方法をご参考に、限りある兄弟読み聞かせの時間をぜひ楽しみながらお過ごしください!