「老婆心」は目上の人には使えない? 意味や使うときの注意点、言い換え表現を解説

「老婆心」とは、「歳をとった人が、度を越してあれこれと気遣うこと」。日常会話ではどんなふうに使われるのでしょうか。今回は「老婆心」の意味や使い方、使う時の注意点、類語などについて確認しましょう。

老婆心とは?

「老婆心」と書いて、「ろうばしん」と読みます。意味は、「歳をとった人が、度を越してあれこれと気遣うこと」。年配の人が、子どもや孫に対して世話を焼いたり、アドバイスや忠告をすることをいいます。

また、必要以上に世話を焼こうとする自分の気持ちを、「老婆心ながら…」とへりくだっていう時に使われることが多いですね。

もともと「老婆心」は、仏語で「老婆心切」という言葉でした。老婆が子を慈しむように、師匠が弟子のことを慈しみ、導く心遣いを表した言葉だとされています。年配の人が、親切心から若者に世話を焼きたがるのは、今も昔も変わっていないようですね。

使い方を例文でチェック!

「老婆心」は、どのような場面で使われる言葉なのでしょうか? 例文を見ながら理解を深めていきましょう。

1:老婆心ながら、最近疲れた表情をしていることが多いから、仕事を控えたほうがいいよ。

相手の体調を心配している時にも「老婆心」は使われます。若い人が一生懸命頑張っている姿を見て、「もう少し休んだら?」と声をかけたいけれど、余計なお世話かなと感じることもあるでしょう。相手に対して、遠慮がちに自分の考えを伝える時に「老婆心」を使うといいですね。

2:老婆心から言わせてもらえば、もう少しプロジェクトの計画を練り直したほうがいいと思うよ。

経験を積んだ年配者の目線から見ると、部下の仕事ぶりに気になる点があることも多いでしょう。ただ、なんの前置きもなしに、「このプランは練り直したほうがいいよ」と言うと、印象がキツく見えてしまうこともあります。そんな時に、「老婆心ながら」と一言添えることで、「おせっかいかもしれないけれど」という謙遜の気持ちを伝えることができるでしょう。

3:彼の高圧的な態度は、老婆心ながら心配になる。

他人の言動を見て、あれでは周囲から反感を買ってしまうのではないかなどと心配になった事はありませんか? 本人にとっては余計なお世話かもしれないけれど、相手のことを考えて心配したり、助言したくなることも、「老婆心」に当てはまるでしょう。

「老婆心」を使うときの注意点

「老婆心」は、へりくだった表現ではありますが、使う時には気をつけるべきポイントがあります。ここでは2つの注意点をチェックしていきましょう。

1:目上の人に対して使えない

語源からも分かるように、「老婆心」は年配の人が目下の者に対して使う言葉です。そのため、上司や取引先の人に使うことはできません。

もし、目上の人に助言などをする場合には、「僭越ながら」「申し訳ありませんが」「恐縮ではございますが」などと言い換えるといいでしょう。

2:男性でも使える

「老婆」という言葉が使われていることから、男性は使えないのでは? と考える人もいるかもしれません。しかし、「老婆心」は、男性が使っても問題ありません。

ちなみに、歳をとった男性を表す「老爺(ろうや)」という言葉がありますが、「老爺心」という言葉は存在しません。間違って「老爺心ながら…」などと使わないように注意しましょう。

「老婆心ながら」と言われたときの返し方

年上の人と会話をしている最中に、相手から「老婆心ながら…」と言われたら、どのように返したらいいのでしょうか? 「老婆心ながら」の後に続く言葉は、忠告や助言、時に手厳しい意見かもしれません。

しかし、基本的に相手は「余計なお世話かもしれないけれど、相手のためを思って伝えておこう」と思って話しているはず。

そのため「老婆心ながら」と言われたら、「ありがとうございます」「感謝申し上げます」などと感謝の気持ちを伝えましょう。加えて「勉強になります」「参考にします」などと付け加えると印象が良くなるかもしれません。

類語や言い換え表現は?

「老婆心」は、必要以上に世話を焼いたり、親切にすること。同じような意味を持つ日本語がいくつかあるので、あわせて覚えておきましょう。

1:余計なお世話

「余計なお世話」とは、「不必要なおせっかい」のこと。相手の助言や手助けを拒絶する時に使います。「大きなお世話」とも言いますね。「老婆心」が基本的に親切心であるのに対して、「余計なお世話」は不必要なものとされています。よりネガティブな意味合いが強い表現といえるでしょう。

相手に何か助言したい場合、「老婆心ながら」の代わりに、「余計なお世話かもしれないけれど」などと言い換えることができます。

・余計なお世話かもしれないけれど、その家具は不良品かもしれないよ。
・今さら偉そうにアドバイスをしてくるなんて、余計なお世話だよ。

2:おせっかい

「おせっかい」とは、「でしゃばって、いらぬ世話を焼くこと」。不必要な親切心である点が先述した「余計なお世話」と共通していますね。あれこれと手を出したり、相手のプライベートに踏み込んだりするため、相手から迷惑がられているニュアンスが感じ取れます。

・彼女はおせっかいを焼いてばかりで、周囲から煙たがられている。
・おせっかいかもしれませんが、式典でその服装は相応しくないと思います。

3:差し出がましい

必要以上に他人のことに関与しようとすることを「差し出がましい」といいます。大抵は、相手に対して出過ぎたことを言う時に、枕詞として「差し出がましいことを言うようですが」と言ったりしますね。前置きをすることで、低姿勢で、控えめな印象を相手に与えることができます。

「老婆心ながら」は、目上が目下に対して使いますが、こちらは目下が目上の人に対して使うこともできます。

・差し出がましいことを言うようですが、Aのプランのほうが適切かと存じます。
・差し出がましいこととは存じますが、意見を申し上げてよろしいでしょうか?

「老婆心」は年上の人の親切心

今回は、「老婆心」の意味や使い方、言い換え表現などを紹介しました。

「老婆心」は、歳をとった人が必要以上に気遣うこと。家庭や育児のことなど、あれこれと口を出されるとつい鬱陶しく感じてしまうこともあるかもしれませんが、これも年配者の親切心や思いやりによるもの。いつも温かく見守ってくれている人がいることのありがたみを忘れずにいたいですね。

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構成・文/鈴木菜々絵(京都メディアライン)

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