キプロスってどんな国?
キプロス国内には、通称南キプロスと北キプロスという、2つの国家が存在します。2つの国家がある理由は、南北で独立をめぐり衝突が発生してきたため、国際連合によって「グリーンライン」と呼ばれる境界線が、国を分けるように引かれているからです。
ただし、北キプロスはトルコ以外の国から国家承認を受けていません。北キプロスは1983年にトルコの軍事的支援を得て南キプロス(キプロス共和国)からの独立宣言を発し、現在はキプロス共和国の実効支配が及んでいない状況です。南北の境界線を越えるときにはパスポートが必要で、2つの国では使われる通貨や言葉が異なるという非常に複雑な形となっています。
そんなキプロスは、トルコなどの影響を色濃く受けたエキゾチックな国でもあります。キプロスについて、詳しく学んでいきましょう。
キプロス基本情報
まずはキプロスの基本情報からご紹介します。
国名
キプロス共和国(南キプロス)
北キプロス・トルコ共和国(北キプロス)
首都
ニコシア(南キプロスの首都、北キプロスにとっても政庁所在地)
場所
両キプロスがあるのは、地中海の東側。四国の半分程度しかない小さな島でできた国です。島の北部にはトルコが、東部にはシリア、南東にはレバノンがあります。
日本との時差
7時間(日本の方が7時間進んでいる)
面積
9,251平方km(四国の約半分)
※北キプロスを含む
日本の総面積は378,000平方kmで、キプロスの面積は約41分の1です。
エリア
キプロス島全体は6つの地区に分けられています。首都ニコシアがあるのは、ニコシア地区です。
・ファマグスタ地区(北キプロス)
・キレニア地区(北キプロス)
・リマソール地区
・ラルナカ地区(一部が北キプロス)
・ニコシア地区(一部が北キプロス)
・パフォス地区
人口
約121万人(2020年時点)
上記は「北キプロス・トルコ共和国+南部キプロス」の合計人数。北気キプロス・トルコ共和国は推定約40万人程度。
東京都の人口がおよそ1400万人(2023年2月時点)で約12分の1にあたります。
言語・公用語
公用語はギリシャ語とトルコ語。
南キプロスでは主にギリシャ語が、北キプロスでは主にトルコ語がつかわれています。またこの他、英語も広く用いられています。
通貨
ユーロ
1ユーロ=約144.75円(2023年3月10日時点)
ただし北キプロスではトルコリラが使われています。
宗教
ギリシャ正教、回教、その他(マロン派、アルメニア教会等)
歴史
1960年8月16日 英国からの独立を宣言
1974年7月15日 ギリシャ軍部指導によるクーデター
1974年7月20日 トルコ軍キプロス侵攻
1983年11月15日 トルコ占領地域、一方的に「北キプロス・トルコ共和国」独立を宣言
2004年5月1日 EU加盟
2008年1月1日 ユーロ加盟
天気・気候
キプロス島は、トルコ南部の地中海に浮かぶ島で、夏は雨が少なく乾燥して冬は雨が多くなる地中海性気候にあたります。7~8月の夏は暑くなり、1~2月の冬は寒くなります。
東京の気温と比べると、キプロスの気温は年間を通してやや高め。夏は35℃近くまで暑くなり、冬は氷点下を下回るほど冷え込むことはほとんどありません。また、10月~3月頃は雨が多くなり、4月~9月頃は乾燥する日が多くなります。
キプロスの治安・住みやすさ
海外となると気になるのが、治安や住みやすさです。キプロスの治安はどうなっているでしょうか?
治安は良好 しかし北キプロスには注意
外務省「海外安全ホームページ」によると、2023年3月19日時点で、危険情報は発出されていません。キプロスは、ヨーロッパ諸国でも治安の良好な国のひとつです。しかし都市部ではスリ、ひったくりのほか、飲食店やバーなどで法外な料金を請求する被害事例も発生しているため、そのような犯罪に巻き込まれないよう気を付ける必要があります。
また、北キプロスではトルコ軍が占領し、「北キプロス・トルコ共和国」が一方的に独立を宣言しており、キプロス政府の実効的な支配が及んでいません。そのため、日本人も含め観光客は北キプロスへの入域が認められていますが、万が一北キプロス領域でなんらかのトラブルに巻き込まれても、日本人を保護する活動が困難と言われています。北キプロス地域への滞在などは、十分な注意が必要です。
住みやすさは良好
治安が比較的良好なキプロスでは、住みやすさも良好と言えるでしょう。しかしスリ、ひったくりなどの犯罪にも注意するなど、日本とは違い、常に警戒心を持っていくことが大切です。
キプロスの見どころ・観光
キプロスの観光スポットをご紹介します。
リマソール塩湖、ラルナカ塩湖
冬になると数万羽にも及ぶ野生のフラミンゴが訪れるという、リマソール塩湖。フラミンゴの生息地として知られる人気観光スポットです。鮮やかなピンク色のフラミンゴが数多く集まる様子は、圧巻です。
またリマソール塩湖に続いて大きいラルナカ塩湖も人気スポットです。冬季は、塩湖に水が張り渡り鳥がやってきます。塩湖の周りに沿って約4キロメートルの散歩道があり、歴史的建造物カマーレス水道橋へと繋がっています。
ライキイトニア
ライキイトニアは、首都ニコシアの旧市街地の一画。石畳が敷き詰められ、19世紀や20世紀初頭の街並みが残されていて、独特の古い街並みを楽しめます。通りには土産物屋や露店などが並び、地元の買い物客や観光客でにぎわっています。おしゃれな街並みを眺めながら、おみやげ選びを楽しむのにおすすめ。
ニッシビーチ
透明度がとても高く、美しいビーチとして知られるニッシビーチ。パラセーリング、ジェットスキーなどのマリンスポーツが盛んで、優雅なビーチタイムを楽しめるスポットです。
アカマス半島
キプロス北西部にあるアマカス半島は、国立公園になっている自然あふれる場所。海も森もあり、豊かな自然に囲まれたエリアです。
聖ラザロ教会
9~10世紀にかけて建てられた聖ラザロ教会。ラザロはイエス・キリストの友人であるユダヤ人男性で、死から蘇ったラザロがこの町で再び主教を務め、再び埋葬されたという言い伝えがあります。教会の地下にはラザロの棺もおさめられているのだとか。厳かな雰囲気を感じられる場所です。
キプロスの特徴・有名なもの
キプロスで有名なものに南北を分断する「グリーンライン」や、リゾートホテルなどにあるカジノの存在が挙げられます。
南北を分断する「グリーンライン」
キプロスは、ギリシャ系住民が支配する南部と、トルコ系住民が支配し独立を求める北部で衝突が起きてきました。そこで国際連合は1974年に緩衝地帯(停戦ライン)となる「グリーンライン」を設けたのです。首都ニコシアはグリーンライン上にあり、それぞれの国の首都となっている、世界でも珍しい場所です。
ちなみに「北キプロス・トルコ共和国」は1983年に一方的に独立を宣言しました。しかし、日本を含めてトルコ以外の世界各国は現在も「北キプロス・トルコ共和国」の独立を承認していません。
カジノ
キプロスにあるリゾートホテルや高級ホテルの多くには、カジノが併設されていることでも有名です。18歳以上なら、カジノを楽しむことができます。入口などで年齢確認が行われるので、観光客ならパスポートを持参していくといいでしょう。
ドレスコードは、だいたいスマートカジュアル。サンダル、短パンなどはNGですので、注意しましょう。
地中海に浮かぶ国・キプロス
東地中海に浮かぶ小さな島国、キプロス。古くからトルコと密接な関係があり、トルコ系住民も多く住んでいる国です。比較的治安が良い国で、多くの観光スポットもあります。南北で分断された歴史を知った上でこの国を眺めてみると、グリーンランドの意味や背景にも関心がわくことでしょう。
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文・構成/HugKum編集部